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柘榴とAI

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#没入感フィクション
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柘榴とAI

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その後、ボリューム満点のご飯を皆で頂き。
男女時間を分けて、やけに広いお風呂まで堪能させて頂いた後。
子供達、見事に爆睡。
彼等彼女等を寝室に皆で運んだ後、我等が教官は急に。
「それでは、始めましょうか皆様。このまま庭まで行きましょう」
彼の発言に戸惑いを覚えながらも、私達は寝間着として貸して頂いた浴衣姿のまま、外へ。
そして、お庭で横一線に並ばされたかと思えば。
「5分間、目の前の光景に集中しましょう。その後、今度は振り返って5分。立っているのが辛ければ、座っても構いませんよ? 椅子も用意しましたので。不思議に思うかもしれませんが、とにかくやってみましょう」
よく分からない事を言われてしまい、全員揃って困惑してしまったけど。
元々私達はこの人の技術を習いに来たんだ、ならやるしかない。
という事で用意された椅子に腰掛けながらも……とても静かなお庭を見つめ続ける。
「そのまま、正面を見つめたまま耳だけ少し貸して下さいね? 皆様は、ガンサバイブオンラインのプレイヤー。今回習得できるかもしれない技術を、ゲームで生かそうとしている。それは間違いありませんね?」
この質問に対して、私達は視線を真っすぐ前に向けたまま肯定の声を返した。
どうやら私達の後ろをゆっくりと移動しているらしく、声はあっちにいったりこっちに行ったり。
けど、ここで違和感が一つ。
足音が、本当にしないのだ。
流石に一切無いという事ではない、筈なんだけど。
こんな静かに歩ける人って居るの? と言うくらいに、物凄く静か。
「これらの技術は、現代では不要とされる古い“技”です。しかし活かせる現場があるのなら、是非そこで使ってやってください。私もそれで、この歳でもゲームに夢中になってしまいましたから」
「おぉっ! つまり師匠もガンサバプレイヤーという事――」
「こら、集中」
「すみません!」
出っ歯さんが声を上げたが、ピシャリと怒られてしまう。
とても静かで、怒っている感じなんか全然しない声。
だというのに、絶対的に“従わないと不味い”という雰囲気を持ち合わせている。
そして何より……やっぱり、移動はしているよね?
なのに、相手の位置が掴めない。
声のする場所は分かるけど、足音が掴めないから自信が持てない。
なんか、変だ。
「もうそろそろ、気にし始めた人も居るかもしれませんね。今私がどこに居るのか、気になって集中出来ていませんね? 良いですよ。視線を向けないまま、私の事を探してみて下さい。ただし、目の前の景色はしっかりと記憶する事」
「っ!」
思わず、息を飲んでしまった。
まるで此方の思考を読まれた様な焦燥感、そして後ろから感じる筈の気配が無い異常事態。
そうか、足音だけじゃない。
私の感覚じゃ当てにならないけど、相手の“気配”が無い気がするのだ。
だからこそ聞こえて来る“声”を頼りに、無意識に相手を探そうとしている。
何だコレ、何だコレ。
相手が此方に危害を加える事など無いと分かっているのに、凄く不安になって来る。
でもその不安な感覚を、私はどこかで知っている気がした。
暗闇の中、相手がどこに居るのか分からないという感覚。
必死で視線を動かそうと、どうしても見つけられない。
何かが見えたとしても、まず思考が疑ってしまい、いつもみたいな反応が出来ない。
そっか、コレ……timelimit:10と対戦している時に、ずっと感じている恐怖と一緒なんだ。
「人は一つの感覚だけでは自信が持てない生物なんです。だからこそ、より確かな情報を探そうとする。視覚で、嗅覚で、聴覚で。様々な情報が無いと、“確信”出来ないんですよ。だからこそ確かに感じる筈の一つがあっても、他が不鮮明だと……見えている物さえも疑ってしまう。この疑問は思考に余分な工程を踏ませ、更には身体が動くのはもっと先だ。その間に攻撃を受けたら……皆様は、反応出来ますか?」
並んでいる皆が、揃って息を飲んだのが分かった。
僅かな身震いの仕草、身体を動かす音。
その他にも色々と把握出来る“情報”があるからこそ、真っすぐソコへ視線を向けなくとも分かる。
けど私達の後ろに居る筈の10には、ソレが無い。
意図的に情報が絞られ、勝手に思考が“疑念”を強くしてしまっているんだ。
「明かり一つ無い場所で、それでは通用しません。間違い無く先手を相手に渡してしまう。皆様も経験があるのではありませんか? ゲーム内だとしても、数々の現場を経験した筈です。明かりの無い暗闇、例え踏み込んで確認したとしても。疑いを抱いたままでは、ちゃんとした“確認”など出来ないモノです。クリアリングのミス、見落として背後から強襲を受けてしまう事態」
疑ってばかりの思考は段々と混乱の方が勝り、聴覚では捉えている筈の彼の居場所さえも更に不鮮明になって来る。
間違い無く、“焦り”。
この余分な感情が、五感さえも狂わせているのが分かる。
これが、彼の戦法。
人間に必要な情報を、一つでも多く欠く。
それが実現できれば、相手が勝手に混乱し始めるから。
「今、どれくらい時間が経ったと思いますか? 私は皆様に5分と言いましたが、体感としてはどれくらいでしょうか?」
彼の一言に、ゾッと全身が冷えた気がした。
だって、全然“分からない”のだ。
それなりに経った気がするし、話を聞いていただけだからずっと短く感じる気もする。
私は目に見えていない相手にばかり集中して、自分の事が完全に疎かになっていたんだ。
それこそ料理をしている間だったら、キッチンタイマーなんか使わなくても大体把握出来るのに。
普段と違って全く“余裕”が無いからこそ、本当に分からなかった。
もしもコレがガンサバの世界だったら……自らを疎かにした者から、“死ぬ”。
「も、もう五分くらい経ったんじゃ……やべっ、全然分かんねぇ」
「ホントに? わ、私まだ一分くらいしか経ってない気がするんだけど……」
「お、俺はアレだ! 間を取って三分くらいだと予想する!」
皆それぞれ声を上げるが、私は答える事が出来なかった。
もしもコレで、平気で10分や20分経っていたとしたら……この認識の誤差を引き起こしている間。
私達は……いったい“何度殺された”のだろうか?
そしてコレがリトライの無い、現実だったら?
これ等のミスで、全てが終わる事を意味するのだ。
この答えに辿り着き、それこそ身体がガタガタ言いそうなくらい震え上がったのだが。
「4分26秒……経過中。そろそろ5分です」
隣に座っていた黒沢君だけは、真っすぐ前を見ながら静かにそう答えた。
「本当に? 間違いありませんか?」
「はい、それなりに……ですけど、自信はあります。体内時計、月明かりの角度。そこから想像するに、これくらいかなって。俺一応、ゲームではスナイパーなんで」
黒沢君の発言に、皆揃って彼の方を向いてしまった。
真っすぐ前だけ見ろと言われていたから、やってしまったって気はするけど。
「素晴らしいですね……黒沢君、でしたよね。もしかしたら君、物凄く“向いている”かもしれません。ちなみに、今私がどこに居るのか。分かりますか?」
「正確には分かりません。けど振り返って銃を構えるのなら、俺から見て四時の方向です。最初に把握出来た感覚を元に行動パターンを予想するなら、多分そこら辺に行くかなって」
「では実際、振り返って此方を指さしてみて下さい」
彼の一言に、黒沢君だけが立ち上がり。
スッと振り返ってから、指で作ったピストルを相手に向けてみると。
「……まだまだですね、すみません。少しズレました」
「いいえ、これだけ出来れば素晴らしいと言う他ないでしょう。これは明日からが、もっと楽しみになって来ましたね。ちなみに、時間も正解です。素晴らしい」
相手の声を聞いた私達も、急いで後ろを振り返って見ると。
そこには、黒沢君が指を向けた先とは少しだけズレた位置に居るtimelimit:10。
え、いや、すごっ!?
時間も位置も、本当に正確に言い当てたんじゃ――
「納得いきませんか?」
「はい……俺は、狙撃手なので。こんなにズレたら、弾は当たりません」
「では、もっと強くなりましょうか。たくさん教えますので」
なんだかお二人だけ、物凄くハイレベルな会話をしていらっしゃるのですが。
待って待って。
私達、というか特に私。
この訓練にちゃんと付いて行けるのだろうか?
コメント
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第150話、めっちゃ良かったです……! 教官の“気配を消す”訓練、本当にゾクッと来ました。 主人公が「これ、timelimit:10と対戦してる時の恐怖と同じだ」って気付くシーン、自分のゲーム体験とリンクして鳥肌立ちました。 黒沢君、時間も位置も正確なの凄すぎる…!「まだまだ」って言う謙虚さも含めてカッコよかったです。 でも主人公の「付いて行けるのかな…」って不安に、めっちゃ共感しちゃいました(笑) 続き、すごく気になります!