私達は5人揃ったところで「ホテル リベルテ 東京」のロビーに入った。
「うわぁ~」
目の前に広がる光景に、全員が一瞬で圧倒された。
ヨーロッパの宮殿をイメージしたような一面大理石が敷き詰められた床、一部分にステンドグラスをはめ込んだ神秘的な壁、様々な花達が繊細かつ大胆に生けられた大きな花瓶にも視線が注がれる。
それらは全て気品に満ちていて、見るものの心を優雅な気分にさせてくれる。こんな素敵な場所は初めてで、異国に迷い込んだような錯覚に陥った。
でも、私には……場違いかも知れない。
「みんな、よく来てくれたな」
声の方に目をやると、そこには龍聖君がいて、私達を出迎えてくれた。豪華な風景の中に溶け込み、何の違和感も抱かせない龍聖君。その姿は、まるでお城に住む王子様のようだった。
スーツの上着を脱いだグレー系のシャツと黒のパンツスタイル、ノーネクタイで胸元が少し開いている。この前とは違ってラフな感じだけれど、すごく大人っぽくて、体全体から溢れ出す色気と美しさに思わず息を呑んだ。
行き交うホテルマン達は、みんな軽く龍聖君に頭を下げて通り過ぎていく。それを見たら、本当に「ホテル リベルテ」の御曹司なんだと改めて認識させられる。
龍聖君はとんでもなくすごい人。
こんなに近くにいても、私なんかには絶対に手の届かない人だ。
「おかえり、龍聖!」
「碧、ただいま。みんなもよく来てくれた」
「龍聖、会えて嬉しいよ」
バスケ部の仲間達で再会を喜び合う。
「俺も久しぶりにみんなに会えて嬉しい。わざわざありがとう。早速だけど、部屋に行こうか」
「うん、楽しみだな」
碧、すごくはしゃいでる。
龍聖君と碧はバスケ部でも特に仲の良かった2人だから当然だろう。
またこうして龍聖君を交えてみんなで集まれる日が来るなんて……
今でもまだ信じられない。
この3年の間、みんなそれぞれに成長した。
そんな姿を見て、龍聖君はどう思っているのだろう。
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