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転校してきた殺し屋君第1章:偽物の日常
第6話(最終話):因果の爆炎
屋上の扉を蹴破ると、そこには春の嵐のような風が吹き荒れていた。 一年前、親友が空へと消えたその場所で、指谷は狂ったように笑いながらアンプルを自身の首に突き刺した。二本目――それは致死量を遥かに超える、禁断のブーストだった。
「アハハハ! 終わりだ、黒咲ィ!!」 指谷の姿が視界から消える。肉眼では追えない。 ドゴォッ!! と重い衝撃が浩一の脇腹を襲い、彼の体はフェンスまで吹き飛んだ。鉄格子がひしゃげ、浩一の意識が混濁する。 「死ね、死ね、死ねぇ!!」 一方的な蹂躙。追い詰められた浩一が死を覚悟したその時、指谷の動きがピタリと止まった。
「……ぁ、あああぁぁぁ……っ!?」
強化薬の真の副作用。それは、肉体への負荷だけではなかった。薬が脳の防壁を破壊し、これまで殺してきた被害者たちの「罪悪感」を強制的にフラッシュバックさせたのだ。 指谷の目には、この場所で散った親友の凄惨な姿が見えていた。親友の怨念が指谷の影を縛り付ける。 「来るな……! 悪かった、俺が、俺が悪かったんだ……!!」
最大の隙。 「これが、お前の犯した罪の重さだ!!」 浩一は渾身の力で床を蹴り、無防備な指谷の胸元へ渾身の掌打を叩き込んだ。 衝撃で浮き上がった指谷を掴み、そのまま屋上の外へと投げ飛ばす。 「地獄へ落ちろ」
指谷の体は放物線を描き、校門前の路上へと叩きつけられた。全身の骨が砕ける音が屋上まで響く。だが、薬の影響か、彼はまだ微かに息をしていた。 運命はそこで止まらなかった。
猛スピードで突っ込んできた一台のトラックが、路上に横たわる指谷を轢き、そのままコントロールを失った。 ドガガガガッ!! 悲鳴を上げる間もなかった。歩道を散歩していた保育園の子供たちと先生たちが、暴走する鉄の塊に次々と飲み込まれていく。穏やかだった午後の街は、一瞬にして鮮血に染まる地獄へと変わった。
運転席の男は、惨状を目の当たりにしながらも、震える手でタバコに火をつけた。 逃げなきゃ。そう思った瞬間、タバコの火が漏れ出したガソリンと、破損したタンクのガスに引火した。
――――ドォォォォォォォォンッ!!
巨大な爆炎が全てを焼き尽くす。 黒煙が空を覆い、阿鼻叫喚の叫びも、炎の轟音にかき消された。
数ヶ月後。 瓦礫の中から奇跡的に救出された「物体」があった。 爆心地のすぐそばにいながら、薬による異常な再生能力で死を免れた男、指谷だ。しかし、その脳と肉体は完全に焼き切れ、深い深い眠りへと落ちていった。
――そして、30年後。 科学技術が進歩し、古びた医療ポッドの中で、一人の男が目を醒ます。 白髪混じりの、30年の時を失ったかつての少年。 彼が目にしたのは、変わり果てた世界と、消えることのない罪の記憶だけだった。
(第1章・完)
ひとせるな
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