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瑠璃香がジトッとした目で晴永を見やったら、晴永が一瞬瞳を見開いてから、「バレたか」と言って悪戯っぽく微笑んだ。
瑠璃香は、会社では見たことのなかった晴永の子供みたいな笑い方に、心臓がトクン! と跳ねるのを感じてしまう。
(こ、これは気のせい! 変な状況にいるから吊り橋効果に陥ってるだけよ!)
別に生命の危機にあるわけでも何でもないのだから、吊り橋効果なんて起こりようがない。そんなこと瑠璃香にだって分かっていたけれど、無理矢理そう考えて、自分を納得させないと、なんだかダメな気がした――。
***
「ううう……」
瑠璃香は結局、記憶のない金曜の夜に続いて、土曜の夜も晴永の家に泊まることになってしまった。
「夫婦になるんだから、問題ないだろ?」
あっさりそう言われたけれど、瑠璃香としては大問題だ。
下着の替えもないし、服だって借り物のままでは落ち着かない。
必死になって訴えた結果、ようやく吐息を落とした晴永が「一度だけな」と言ってくれた。
自宅に荷物を取りに行く――それだけの約束。
(よし……!)
内心で小さく拳を握った瑠璃香だったのだが。
服がまずいので、瑠璃香のマンションまでは晴永が車で送ってくれることになった。それは分かる……。というか大変ありがたいことだとも思う。
でも――。
車を降りた瞬間、気づいてしまう。
晴永が、ぴったりと隣を歩いていることに。
「あ、あの……」
「なんだ?」
「部屋、散らかってるかもしれないですし……その……私一人で……」
言い終わる前に、
「却下だ」
即答だった。
「なんでですかっ」
「お前、一人で戻したら……絶対帰ってこなくなる」
そう言われて、瑠璃香は思わず身体を跳ねさせた。
(ば、バレてる……!)
慌てて取り繕うように、にっこりと笑う。
「そ、そんなわけないじゃないですかぁ~」
晴永は何も言わない。
ただ、その目が「嘘を吐くな」と告げている。
結局、晴永からの圧に負ける形で、二人で瑠璃香の部屋へ上がった。
散らかっているかも……などと晴永を牽制した瑠璃香だったけれど、瑠璃香の部屋はこの上なく綺麗に整理整頓されていた。
当たり前だ。
性格的に散らかったままにするのは無理なのだから。
「で? ――どこが散らかってるって?」
分かりきっていただろうに、それをわざわざ指摘してくるあたりが意地悪だと思ってしまった瑠璃香である。
「たっ、たまたまですっ。たまたま綺麗にしてただけなんですっ」
そう。部屋は綺麗に整っていたって、もしも土曜が雨降りだったなら、きっと洗濯物がリビングに干してあったはず。
その中には当然下着類だって混ざっていただろう。
飲み会に出る前に洗濯物を取り込んで、所定の位置へ片付けていた自分をグッジョブ! と思うと同時に証拠隠滅的にはアウトだったかも……と悶々としてしまう。
「とりあえず支度するので、課長はそこに座っていてください!」
グイッと晴永を押しながら言ったら、腰をグッと掴まれた。
「ひゃっ」
そのことに驚いたと同時、「何度言えば分かるんだ……」と吐息を落とされてしまう。
「あ……」
そこでようやく何を咎められているのか理解した瑠璃香は吐息交じり。
「でも晴永さん、この呼び方に慣れてしまったら会社でもそう呼んでしまうかもしれないじゃないですか」
(それはまずいんじゃないかな、お互いに……)
そう思ったのだが……。
コメント
1件
うんうん、そりゃー、1人じゃ帰せないよねー(笑)