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お疲れ様

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お疲れ様

1 - 今日も頑張ったね

♥

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2022年06月25日

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もう夜だ

今日も一日

ご苦労さん

そう言う人は

大切だ。



男:なあ、そろそろ結婚、しないか?

女:え? いいの?

男:ああ、もういい

女:でも……

男:いいんだ

女:……そう

男:だから、俺と結婚してくれ

女:……私達、別れましょう

男:え?

女:あー、そのほら……ね?

男:あー、まぁな……

女:でしょ?

男:俺が、悪いなこれは、すまない

女:いいのいいの。気にしないで

男:いや、謝らせてくれ。こんな男に三十路になるまで付き合ってくれたんだ。ほんと、悪いと思っている

女:……許さないよ。私、絶対に許さない

男:……悪い

女:……許したく、ないよ

男:悪い……

女:でも、なんで今更?

男:今更……って、わけじゃない

女:でも、今更でしょう?

男:まあな……

女:なにか、あったの?

男:……すー(息を吸う)ふー(息を吐く)。思い起こせば……学生時代からの夢だったし、そのあたりからの付き合いだなお前とも

女:そうね。……あの頃は楽しかった。周り全部がキラキラしている。そんな感覚があったわ

男:俺が思うに学生時代ってやつは探せば夢で溢れていたよ。小説家を目指している奴がいた。スポーツ選手、弁護士なんかもいたな。まあ、探せば夢を持った奴らがそこら中にいて夢を持ってない奴らもいたが何かに打ち込める。何かを目指して頑張れる。どれもこれもが思い出になる場所だった。

男:俺から見ればそうだった。

女:まあ、当初のあなたは夢なんかなくてとりあえず適当に何かに打ち込んでいる人間だったけどね。それでも、いろんなことがあって、いろんな人と出会えた。中には気に入らない人もいたけど、それでも私には輝かしい思い出。辛いことも悲しいこともあったけどね

女:部活、勉強、恋愛。懐かしいわ

男:そうだな。まあ、お前に出会って夢が出来た俺だ。お前に惚れて、振られて、努力しようと決めて我武者羅に手ぇ出して、見つけた夢があった

女:その夢に向かっているあなたに今度は私が惹かれて、まあこの形に落ち着いた

男:ああ、思えば十年以上の付き合いか……

女:ふつうはそんな相手がいれば結婚するんでしょうね

男:違いない。お前は今日まで付き合ってくれたいい女だよ。今までありがとう

女:ねえ、私が言うのもなんだけど……どうして、諦めちゃったの?

男:言いたくない。が、言うべきなんだろうな

女:一人の女の人生をここまで引きずったんだからその責任を取ってよ

男:……正直に言うなら、時間だ

女:時間?

男:そうだ。時間だ。時間っていうのは残酷だよ。学生の頃みたいに周りで夢に向かって頑張ろうって頑張る気力を奪っていく。

男:大人になってからそれが顕著になる。考えてみろ、一人で孤独にたった一人で夢に向かって頑張れる奴がどこにいる?

女:それは……

男:結果も出ず、思った目標も超えられず、ただ一心不乱に努力する。それが出来たら美徳だろう。それが出来たから称えられる。それで結果を出したからすごい奴なんだ。俺はそんな強い奴じゃなかった。振るわない結果にやる気がそがれ、超えられない壁に心折れ、それでもと努力する時間が減っていくことに気付きますますやる気の炎に水を差される。

男:俺って、こんな程度の奴だったんだって……

女:あなた……

男:お前は、いいよな。結果が出て、目標を超えられて、そんでやる気を燃やす日々

女:あなた

男:俺なんか──

女:あなた!

男:わ、悪い。そこまで言う気じゃ……わる、いやすま、じゃないな。申し訳ない

女:……謝ってほしいわけじゃないわ。あなたが! ……いえ、ごめんなさい。私があなたを責める資格、ないわね……

男:……まあ、そんなわけだ。俺は夢に向かう原動力が尽きたんだよ

女:そう

男:悪いな。こんな男に突き合わせて

女:ううん。それより、ごめんなさい。私の方が謝るべきだわ。あなたのことをないがしろにして自分の功績に目が行っていた。私は、それよりもあなたを支えるべきだった

男:やめろよ。惨めになる

女:でも……

男:これでも俺は、お前が結果を出すこと自体はうれしかったんだ。……悪い、過去形になっちまったが、自分のことのように喜んだんだ。喜べてた

女:結局、過去の話しじゃない

男:悪い

女:いいわ。そんなことはどうでもいいの。ねぇ、本当に諦めてしまうの?

男:ああ

女:私の、ことも?

男:……ずるくねぇか? その質問

女:ごめんなさい

男:謝るくらいならするな

女:……それくらい、嫌なのよ

男:……俺が、夢をあきらめるのをか?

女:それも、あるわ

男:……はあ

女:ごめんなさい。私はあなたに夢も希望も諦めてほしくないし、何より約束を守ってほしいの

男:俺は、お前をいい女だって言ったけど、前言撤回だとんだわがままな女だよお前は

女:ごめんね

男:それでも、俺は……

女:さっき、学校の話しをしたでしょう?

男:あ、ああ

女:あの中のどれくらいの人が夢をあきらめて別の道や似たような道に歩いていると思う?

男:全員ではないだろうなぁ

女:でしょうね。むしろ私みたいに学生のころからの夢をかなえてその道を堂々と歩いている人の方が少数だわ

男:そうだろうな

女:私は、それでもいいと思ってる。諦めるのは一つ道だわ

男:ああ、だから──

女:それでも私はあなたにあきらめてほしくない

男:……諦めてほしくない、か。俺の定めるべき道をお前が決定しようってのか?

女:ええ、そうよ。私はあなたの人生を決定するためにここであなたを説得する

男:へえ、馬鹿らしいと思わないか? それ。夢をあきらめて俺はここにいるんだぞ

女:そうは思わないわ。あなたはただ逃げているだけ。私はそう思ったわ

男:逃げるも諦めるも一緒だろ

女:私はそう思わない

男:なんでそう思った?

女:だって、諦めは停止で逃げは後退だもの

男:悪い。言っている意味が分からない

女:諦めるっていうのはそれそのものをやめる事よ一生。それも、トラウマでも抱えてるってくらいにそれをやりたがらない

男:ああ、そうだな。やめて逃げるんだよ俺は

女:いいえ、そう思わないわ。あなたならたとえ一時的に逃げてもまたやり始める。絶対にね

男:へえ、その根拠は?

女:私への未練よ

男:は?

女:私は、あなた以外と結婚する気はないし、しない。今決めたわ

男:おいおいおい、何言ってんだ……

女:あなたとの約束を守り続けるのよ。操を立てるの、いい考えでしょう?

男:ば、ばっか! さっさと結婚しろよ! なにあほなことをいってんだお前は!

女:えー、だって今更ほかの男を捕まえようとしても難しいし

男:そこは俺も協力するから

女:じゃあ、協力しなさい。私があなたと結婚できるように夢をかなえて頂戴な

男:め、めちゃくちゃだぞそれ、お前……はあ?

女:それとも、あなたの想う女を不幸にしたい?

男:んなわけあるかよ! 幸せになってほしいに決まってる!

女:じゃあ、よろしくね

男:いや、だが……

女:ねえ、私はこう思ってる。疲れちゃったのあなたは

男:いや、燃え尽きたんだ俺は

女:いいえ、疲れただけ、弱気になっているだけよ。だって、あなたの話していた理由に嫌になったとか嫌いになったとかそれこそもう、見るのも嫌だとかそんな理由じゃなかったじゃない

男:けど、な。俺は、これ以上は無理だと思ったんだ

女:弱気じゃない

男:これ以上は頑張れないんだ

女:疲れてるだけよ

男:俺じゃ、お前を幸せにできない

女:私を幸せにできるのはあなただけよ

男:俺は……

女:ぎゃあぎゃあ言っているよりもまずは休みなさい

男:何をいってるんだ?

女:もう一回言うわ。あなたは夢から逃げているだけよ

男:何を根拠に

女:明確な理由を言うのなら、あなたが諦めてないからね。はっきりしたわ

男:俺は、諦めた。お前も幸せにできない

女:あなた、気付いていないの?

男:なにを?

女:あっきれたわ。あなたにも、何より自分にも

男:はあ? 俺を呆れることはあってもお前が自分を呆れることなんてないだろう

女:あるのよ。私は、あなたを放置して絶対に夢をあきらめないって知っていてここまであなたを追い詰めたんだから。……ねえ、気付いてる? 本当にわからない?

男:な、何がだよ?

女:あなた、自分が夢を叶えられなきゃ私を幸せにできないって、その言葉。要は夢がかなわないから私を幸せにすることができないって言ってるのと一緒よ

男:え?

女:ちょっとわかりにくかったわね。あなたはそもそも諦めてなんかいない

男:は? 何を──

女:黙って聞いて! 私を幸せにできないのは、あなたの夢がかなう事のない夢だからよね?

男:お、おう

女:じゃあ、それって叶えたいって願望は残っているんでしょう?

男:は?

女:本気で分かってないの? だってあなた、夢以外の事見てないじゃない。今でも

男:あっ、え?

女:じゃあ、夢をあきらめて何をするの? あなた

男:そりゃあお前……

女:何もしないの? ぐうたらと無駄に時間を浪費する? 学生の時のように

男:……ぃ、る、よ

女:それでいいのね?

男:いいわけないだろ!

男:どんだけ夢追ってたんだと思うんだよ! 寝ても覚めても! 夢を追ってんだ! お前と会ってた時だって夢のこと考えてた! いまさら、諦めてたまるか!

女:ふふっ、それでこそよ! ようやくあなたらしくなったわね

男:見てろよお前! 絶対に夢叶えて幸せにしてやる!

女:ええ、ええ……

男:お、おい。泣くなよ

女:だって、だって……気付けなくて……あなたがそこまで、追い詰められてたんて知らなくて……

男:わるかったよ……俺も、恥ずかしかったんだ。萎えていく自分が信じられなかったんだ。明日には、明後日にはって思ってたらこうなってんだ……

女:ごめ、ごめんなさい……

男:良い。気にすんなよ。確かにお前と比べちまって惨めにはなった。けどな、またこうして燃料をぶち込んでくれたんだ。それが、一番の応援だ

女:ええ、ええ。頑張ってね。あなた

男:ああ、頑張るよ。めげないしもう、折れないだろうよ

女:なんで、そう思うの? 私、不安よ。また、あなたが諦めようとするんじゃないかって

男:ばぁか。何言ってんだ。俺には、お前がいるんだ。もう二度とこんなことにはならないさ。俺なんかみたいな頼りない背中をぶっ叩いてくれるお前がいるんだ。怖いものなんてねぇよ

女:ふふっ、そうね

男:ああ、だから。安心してみてくれれ

女:ええ、たとえ結婚できなくとも子供は欲しいわ

男:あ? いや、それは……

女:冗談よ。まあ、そうなっても頑張り続けてねあなた

男:お、おう

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