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GW明けの登校日。早朝に私はとある人へ メッセージを送っていた。
宛先は真住慶太。
私が手に持っている紙袋の中には瀬南くんのコートが入っている。
あんなに楽しい時間を過ごしたのに、私は瀬南くんの連絡先を聞きそびれてしまった。彼のクラスへ急に会いに行ったら嫌がられそうな気がして、彼の幼馴染に連絡を取ったのだった。
五十嵐の予想は的中してて真住からは『人が減るだろう放課後のタイミングがいいと思う』と提案された。
GWに会ったのが最後で数日ぶりに会うけど、瀬南くんは普通に会話してくれるだろうか。帰り際に話しかけるねと言った時は好きにすればいいと言ってくれてたけど…
今日も今日とて小テストを受けつつ授業を受ける。だけどいつもと違って早く放課後にならないかなってちょっとわくわくしてる自分がいる。
「もかっぺ~、また明日ねー!」
「みずきち、ばいばーい!」
同じクラスの人達が半分以上教室から出た頃、みずきちと別れて未知なる教室へと向かう。ちゃんとコートの入った紙袋は持ってるし大丈夫!
廊下を歩いてると ますみんを見つける。
「あ、ますみーん!」
私が声をかけるとひらひらと手を振ってくれた。
「付き合わせちゃってごめんね?」
「気にしなくていい。初めて入る教室だと緊張するし」
「そうなんだよね…ますみんいてくれて心強いよ」
そう言って、開けっぱなしになっていたA組の扉から中を覗き込む。
ますみんは通い慣れてるのか、戸惑いもせずに教室の中に足を踏み入れる。私もそれにならって、ますみんの後ろをついていくと
「五十嵐?!」
「っ?!」
急に手を掴まれて名前を呼ばれたのでびっくりした。顔を上げると同じ部活の水島くんだった。
「水島くん?」
「え、A組に来るなんて珍しいじゃん。もしかして、俺に用事?」
「あ、ごめん。水島くんに会いに来たわけじゃないんだ…」
顔を輝かせながら言う彼に申し訳なさを感じて謝っていると
「もかっぺ、亜貴いたぞ」
ますみんがさりげなく水島くんとの距離を作ってくれて背中を優しく押してくれる。
本に栞を挟んで机に置き、こちらを見上げる瀬南くんと目が合った。なんでか分からないけど、自然と頬が緩んでしまう。
「亜貴、連れてきた」
「ありがとう」
ますみんが瀬南くんに連絡しとくって言ってくれてたから、放課後すぐ部活へ行かずに教室で待っててくれたんだと思う。
「瀬南くん、久しぶり」
「久しぶり」
「先日は ありがとうございました! 」
紙袋を差し出しながら言うと彼の視線がそれに向けられる。
「何、これ」
「あ、服!羽織らせてくれたやつ」
「あぁ、チェスターコートね」
何が入っているのかを伝えると素直に受け取ってくれた。あんなに素っ気なかった瀬南くんと普通に話せてる~!!嬉しい~!!
「早めに返せてよかった」
「わざわざ連休明けすぐに持ってこなくてもいいのに」
「瀬南くんと話したかったから、GW明けすぐに会えて良かった」
そう言うとまた少し驚いた顔をされたけど、すぐに普通の顔に戻る
「僕と話したいって本当に物好きだね」
「そうかな?瀬南くんと話してるの楽しいよ」
「あ、そう。」
「そうだ、次っていつなら見学に行ってもいいかな?」
「次?んー、今日でもいいけどこの前言った通り同級生が何人来るかは知らない」
今日の見学どうしようかなと頭を悩ませていると
「五十嵐、今日部活あるよね?遅刻するよ?行こう」
瀬南くんと話していたら、いきなり手を掴まれて引っ張られる。
「え、水島くん、ちょっと待って」
「文化委員とかで練習出来てないんだから、参加できる時にしなきゃだろ」
「そうだけど…でも、私」
手を引っ張られて距離が出来てしまった瀬南くんの方に視線を戻すけど、眼鏡をかけている彼の表情は分かりづらい。
瀬南くんの人を寄せ付けない態度…ここで今離れてしまったら、次はどのタイミングだったら応じてくれるんだろう。
「水島、待って」
教室を出る前に瀬南くんが声を発した。
「何?」
「3分だけ待ってくれる?」
そう言って瀬南くんは立ち上がるとこちらへと近づいてきてくれる。
「瀬南くん」
「五十嵐、スマホ出してメッセージアプリ開いて」
「スマホ…」
言われた通りにスマホを取り出して操作をする。
「QR読み込むカメラ出た?」
「う、うん」
端末を差し出して見せると私の端末のカメラに映るよう瀬南くんは自分の端末をその下に滑らせる。
検索結果に’ 瀬南 亜貴 ‘と表示される
「何か言いたいことあったら、ここに連絡してくれればいいから」
…瀬南くん、自分のこと全然話さないから絶対聞いても連絡先とか教えてくれないと思ってたのに
「うん、分かった」
「部活あるんでしょ、頑張りなよ?」
瀬南くんから教えてくれるなんて思ってなかったし、こんなサラッとスマートに教えてくれるなんて思ってなかったし、必要最低限の連絡しか受け付けませんって感じなのにいつでも連絡していいみたいな言い方するし…
「ありがとう、頑張る」
え、ずるくない?私ちょっと今、瀬南くんの顔見れない。なんかちょっとドキドキするんですけど…
瀬南くんとLINEを交換して、いつでも連絡が出来るようになって上機嫌な私は楽しく部活動をこなせた。