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8歳になった元貴と滉斗は、相変わらず影のように寄り添っていました。
しかし、1年生の頃とは少しだけ空気が違います。元貴が音に疲れて滉斗の肩に頭を預けるとき、滉斗の耳がほんのり赤くなったり、二人の視線が合うと、どちらからともなく少し照れたように笑うようになったり。
「ねえ、ひろと。……あのね」
「ん?」
「ひろとといると、耳がいたいの、すぐ治るんだよ。不思議だね」
元貴の無垢な言葉に、滉斗は心臓が跳ねるのを感じていました。
5年生になった涼架は、中学校への進学を意識し始める時期ですが、相変わらず二人の良き理解者でした。
ある日、中庭にあるベンチで、元貴が滉斗の膝枕で眠ってしまった時のことです。
「……滉斗。君、元貴のこと見てるときの顔、すっごく優しいね」
「……そうですか」
読書をしていた涼架が、本から顔を上げてクスクスと笑いました。
「もう『守ってあげる』だけじゃなくて、『ずっと一緒にいたい』って顔になってるよ。それって、もう恋だよね」
「こ、い……?」
8歳の滉斗にとって、それはまだ絵本の中の言葉のような響きでした。
でも、膝の上で安心しきって眠る元貴の寝顔を見て、滉斗は確信します。
(……そうだ。俺、こいつの隣以外、どこにも行きたくない)
その日の放課後。雨上がりの校庭には、大きな虹がかかっていました。
水たまりを避けながら歩く帰り道、滉斗は元貴の手をぎゅっと握り、足を止めました。
「もとき」
「なあに? ひろと」
「おれ、決めた。……おれ、もときの『彼氏』になる」
元貴は目を丸くしました。
「かれし……? テレビとかで言ってる、ずっと一緒にいる人のこと?」
「そう。おれがずっと、もときの音を追い払ってやる。だから、もときもおれの隣にいろ。……他のやつじゃダメだ」
ストレートすぎる滉斗の言葉。
元貴は少しだけ驚いたあと、今までで一番幸せそうな、花が咲くような笑顔を見せました。
「うん……! ぼくも、ひろとがいい。ひろとが『彼氏』なら、ぼくは『彼女』でいいの?」
「……まあ、どっちでもいいけど。おれとお前が、一番近くにいれば」
二人が手を繋いで(いつもよりずっと強く握りしめて)途中の公園によると、涼架が待っていました。
「おかえり! あれ、二人ともなんだか顔が赤いよ?」
「りょうかさん……あの、おれたち、付き合うことにしました」
滉斗が胸を張って報告すると、涼架は一瞬驚いたように目を見開き、次の瞬間、今日一番の笑顔で二人を抱きしめました。
「おめでとう! よかったねぇ。二人なら、きっと世界で一番素敵なカップルになれるよ。……よし、今日はお祝いに、僕がとっておきのゼリーを分けてあげる!」
「わあ、ありがとう! りょうちゃん!」
5年生の涼架が二人を温かく見守り、2年生の二人が初めて「恋人」として歩き出した日。
藍林檎学園の長い歴史の中で、それは小さな、けれど二人にとっては一生忘れない大切な一歩でした。
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