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そして透子もそんなオレの反応を見て頬から手を下ろすと。
「じゃあこれからは透子も全部オレに見せてね」
すかさず今度はオレが透子の両頬を両手で包み込む。
「ずるっ!」
「何が? 同じことしてるだけ」
すると透子は悔しそうに反応して、オレはまたそんな透子が可愛くて笑って言葉を返す。
「透子がそう言ったんでしょ?」
オレは多分これからもっと透子を好きになっていく度、どんどん素の自分が出てきて、もっとカッコ悪い自分を見せることになる。
そしてもっとオレはその好きな気持ちをもっと透子に伝えたくなる。
「私と言ったのとなんか違う気がするんだけど・・」
「ん? 同じじゃない? だってこれからは素直に甘えてきてくれるんでしょ? そしたらそんな姿オレ一秒も見逃したくないし」
だけど、きっと透子がオレに甘えてくる姿見せることの方がハードル高い気がするから。
だから、これからもやっぱりそんな透子の姿を全部この目にこの記憶に焼き付けていきたいから。
「やっぱりずるい・・・」
「透子のこと好きだから全部知りたい。ただそれだけ。透子は違うの?」
「そう、だけど・・・」
ほら。もう素直に伝えられなくなってる。
今言ったばっかなのに。
「ん? ちゃんと言って。オレのこと好き?」
透子、ちゃんと言って。
好きだって。
オレの目だけ見て、オレだけを想って、その言葉をちゃんと聞かせて。
「好き・・だけど・・・」
「誤魔化さないで」
今日は逃がさない。
透子が自分でちゃんと言ったんだから。
「言わないとこのままここでキスするけどいい?」
「・・・!」
そう言うとさすがに驚いた反応を示す透子。
「ここ外だよ。誰かに見られる・・・」
「だから? 別にどこだって関係ない。見せつけとけばいいよ」
そんなのでオレが納得するとでも思ってるの?
そんなの全然理由にならないから。
「・・・好き・・・」
するとようやく観念したのか、透子がオレの目を見つめながら静かにそう呟いた。
やっと言った・・・。
あーなんだろ。この幸せ感。
オレは嬉しすぎてニヤけが止まらなくて。
「よく出来ました」
そう呟きながら、透子の唇にオレの唇を重ねた。
そんな可愛い姿見せられて我慢出来るはずないでしょ。
愛しすぎてもっともっと透子が欲しくなる。
好き。
全部が好き。
好きな気持ちが、求める気持ちが止まらない。
だからこの包み込む手から唇から透子をもっと感じさせて。
どこまでも止まらないオレの気持ちを受け止めて。
そして透子もそんなオレの想いが届いているのか、優しく唇で透子すべてで受け止めてくれる。
ようやく唇を放して、透子を見つめながら微笑むと。
「好きって伝えたのに」
「だってそんなこと言われたら逆に気持ち抑えられないでしょ」
「なら、結局同じじゃん」
「透子が可愛すぎるのが悪い」
「は!!??」
結局はどうやったって透子が可愛いんだから仕方ない。
どんな透子だって結局オレの気持ちは抑えられなくて、透子を求めたくなるんだから。
「まぁオレはどっちにしてもこうするつもりだったけどね」
素直に透子が信じてただけだし。
「フフッ」
すると笑ってそう言ったオレに透子も笑って応える。
「何笑ってんの?」
「ん? やっぱり樹が好きだなーって実感してただけ」
すると、また予想していない言葉を今度はサラッと言い放つ。
はぁ・・そういうとこなんだよ・・透子・・・。
「あーやっぱ透子の方がずるいわ」
「何が?」
「オレが想像してないとこからそういうのブッコンでくるんだもん」
「何それ(笑)」
「オレが透子に迫って恥ずかしくしながら、オレに気持ち伝えてくれるのももちろん嬉しいんだけどさ。そうやって何気なく自然にサラッと伝えてくれる透子もすげぇ好き」
「ごめんね。なかなか素直になれなくて」
「いや。だからこそオレの魅力で透子をどんどんハマらせていける楽しさがあるワケだし(笑)」
「そうだね(笑) 私も樹のせいでどんどん知らない自分引き出されて、自分でも初めて知る自分いるもん」
きっと自分で気付かないそんなところも、オレがそうさせているのだと思うと嬉しくなる。
意識して照れるのも、無意識で照れずに嬉しい言葉を素直に伝えてくれるのも、全部全部オレを想ってくれてるから。
透子がオレのこと考えて反応してくれるすべてが嬉しい。
「オレのせいで・・・?」
だけど、その言い方が少し気になって指摘する。
「ん?」
「オレのせいでじゃないでしょ? オレのおかげでしょ?」
「確かに。樹のおかげで今は自分を好きでいられる」
「オレも。透子のおかげでやっと自分を好きになれた」
お互い出会う前は全然違う場所で、違う時間軸で生きていて。
だけど、お互い自分をなかなか好きになれなくて。
そんな時透子と出会えて、お互いかけがえのない存在になって、相手を大切に想うと同時に自分も受け入れることが出来た。
透子が誰かを愛する気持ちも、自分を受け入れて好きになる気持ちも、全部教えてくれた。
「じゃあ。帰ろっか」
「うん」
お互い微笑み合って、また歩き始める。
「ん」
そう言って透子に片手を差し出す。
そして透子も微笑みながら自分の手を重ねてくれる。
繋いだ手からまた透子への好きが溢れる。
この夜道をこうしてずっと手を繋いで歩いていたくなる。
「あっ、そうだ。オレ明日から一週間ほど大阪に出張になっちゃって」
「そうなんだ? 向こうのブランドの方で?」
「そうそう。上手くいけば大阪の支店も視野にいれてて」
「へぇ~。もうそこまで計画出てるんだ」
「まぁね。ネットの方もどんどん力入れて店舗でもどちらでも求められるモノにしたいし」
「そっか」
「それの打合せも兼ねてだから、ちょっと長くなりそう」
「じゃあまた一週間会えなくなるのか~」
「寂しい?」
「そりゃね。前みたいに隣に住んでたら行く前もギリギリまで会えるし、帰って来てからもすぐ会えたのに」
自然にそう伝えてくれるのが嬉しい。
「ホントあんなにずっと近くに住めてオレも幸せだった」
オレにとったらあの距離は幸せでしかなかったな。
「なんで引っ越ししたの?」
「まぁケジメみたいなもんかな」
「ケジメ?」
「うん。やっぱり隣に透子がいるって思うとさ、ホントはそれだけで幸せで頑張れるのは確かなんだけど。でも、その分そんな近くにいると、どうしても会いたくなっちゃうから。あの時は透子と会っちゃうとオレの決意もブレちゃいそうで怖くてさ。ちゃんとやり切る自分になる為には、あの選択するしかなかった」
「そっか。そうだよね。私もまだ隣にいたら寂しくて会いたくなっちゃってただろうし。あの距離にいれることでやっぱり期待しすぎてしまって、もっと現状に苦しんでしまってたような気がする」
今まで一方的に想ってるだけの時は、ただ近くにいれるだけで嬉しかったけど。
だけど、いろんなモノを抱えることになってからは、正直顔を合わせることが苦しかった。
ホントは好きなのに、気持ちを抑えなくちゃいけなくて、避けるような日々も辛かった。
会いたいのに、会わない選択離れる選択をするのはホントにキツすぎた。
「でも今はオレもこの距離がもどかしいけどね」
今はもういつだって会いたくなってるオレにとっては、すぐ会えないことがやっぱりもどかしくて物足りない。
「うん。今はどこに住んでるの?」
「ん? またそっちも落ち着いたら今度連れてくよ」
「うん。わかった」
それもゆっくりと。
透子との時間をこれからゆっくり埋めていこう。
「でも今日はちゃんと家まで送り届けるから安心して」
「ごめんね、わざわざ」
「当たり前でしょ。透子そんな一人で危なくて帰らせられないし」
「危ないってそんな年齢じゃないから大丈夫だよ~(笑)」
「ダーメ。オレにとってはどんな時も透子が心配で守りたいの。ちゃんと透子はオレに守られといて」
「フフッ。わかった」
いつでも心配。
年齢とかそんなの関係ない。
オレにとってはずっと心配で大切。
「ってか、オレがギリギリまで透子と一緒にいたいっていうのもあるしね」
「私も。ギリギリまで一緒にいられて嬉しい」
「一週間またしばらく会えなくなっちゃうから、目一杯透子との時間味わっとかないと」
「うん。寂しくならないように、うーんとそれまで味わおう」
「出張から帰ったらすぐ一番に会いに行く」
「うん。待ってる」
やっぱり透子とは一分一秒でも多く一緒にいたいから。
その分毎秒いろんな透子が見れるから。
その分ずっと幸せを感じていられる。
こうやって一緒に歩いてるこのすべての時間の透子が愛しい。
「見て。樹。すごい綺麗な満月」
「ホントだ。すげぇ」
すると、夜空を指差して伝える透子。
穏やかに流れていく一緒に過ごす時間。
その時間を一緒に感じられる幸せ。
透子といればなんてことない景色も時間も、すべてが愛しくて幸せになる。