「桜 なのは」
私は自分の名前が好きだった。
桜を見たら、2人と手に乗せた桜の花びらを思い出せたから。
でも今は嫌いだ。
だって、だって、2人を思い出してしまうから。
2人と話したこと。笑ったこと。泣いたこと。愚痴言ったこと。悪口言ったこと。
全部が、脳内に焼き付いていた。
もうあの日々は戻ってこない。
分かってたはずなのに。
もう一度、戻りたい。
あの頃に戻って、2人と目一杯話したかった。
こんな、思い出しても真っ黒な感情を抱かない毎日を一緒に過ごしたかった。
そしたらきっと変われた。
こんな私が、嫌い。
性格も、見た目も、声も。
全部全部嫌い。
こんな私なんか生まれてこなければ良かったのに
もう、1人になりたくない。
絶対に、もう嫌だから、すずとみさきの面影と重ならない子たちと私は偽りの関係を結んだ。
別に、仲がいいわけじゃないけど、でも。
でも、1人になるよりはマシだから。
だから、私は友達を作った。例えそれが心の底から友達じゃなくとも、仕方ないのだ。
私が、きっと私が悪いから、仕方ないんだよ。
そう、思わないと涙がこぼれ落ちて、自分が惨めになってしまうから。
なんで、なんでこうなったのかわかんなくて。
わからないからこそ、こわいんだ。
何を思われてるのかわからないから。
誰か、ほんの気の迷いでもいいから。
だから、助けて欲しかった。
辛いんだ。泣きたいんだ。我慢してるんだ。いろんな感情を、押し殺してる。
「友達」がわからない。
唐突に浮かんだ悩みは、解けることのない謎となり、涙に変わった。
友達、なんて言う嘘の塊を、作る必要があるなんて、ずっと思っていなかった。
ただ、勝手にできただけ。
友達を作ろうとしたら、できなくなった。
瞬く間に消えてった。
なんでなんだろう、と意味のない口論を続けていても意味のないことなんか知っているはずなのに。
それでも考えて、悩んで、泣いてしまう。
どうしても、友達という存在がいた過去に頼ってしまう。
自分でも、こんな自分が嫌だった。
最初は強がっていた。
「理由も言わずに無視とか最低」とか、「馬鹿すぎだろ。」とか。
でも、無駄だった。
友達がいない寂しさは、埋められなかった。
何にをしていても、すずとみさきが隣にいた。
でも、もう2人はいない。
隣に手を伸ばしても、その手は空を切るだけだった。
「やっぱり悲しい」なんて、いう資格もない私には、ただ無言で泣くことしかできない。
自分の無力さが、ひどく憎かった。
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