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こうして迎えた10月31日に、私は1人でこの祠に来たのです。
オリバーには内緒にしていました。
もしオリバーに言ったとしたら、ついてきてくれたかもしれません。
ですが、失敗した時に、彼を失望させる方が怖かったのです。
「どうか、私の子供を授けてください……!お願いします……!」
私は、強く強く願いました。
祈りました。
オリバーとの子供が欲しい。
ただそれだけを。
すると。
「私を呼んだのはそなたか」
耳に響く、美しくも低い声が聞こえてきました。
パッと顔を上げると、言葉にするには難しいほど、美しい男性がおりました。
私が手を伸ばすと、彼の体を透けてしまいましたので、彼が霊的な存在であることはすぐに分かりました。
「どうした、怖がらぬのか。普通の人間なら私のような存在を怖がるだろう」
「いいえ。私はもうすぐあなたと同じ存在になります。誰が怖いと申し上げることができましょう」
「……そうか」
この者は私の左胸を見て、一言それだけ言いました。
分かってしまったのでしょう。
私の中に潜む死の扉に。
「娘、名を何と言う」
「シャルロットと、申します」
「そうか。美しい名だな。そなたによく似合う」
「ありがとうございます」
私に似合うかどうかは分かりませんが、私はシャルロットと言う名前がとても好きでした。
オリバーが、何度も愛おしげに呼んでくれた私だけの名前だからです。
「貴方様のお名前も、教えていただけますか?」
私は尋ねてみました。
「私の名は、ルイだ」
「ルイ……様……」
「様はいらぬ」
「では……ルイ……さん?」
「呼び捨てでも構わぬのだぞ」
「いいえ。それは特別な人にしか……」
「……そうか」
呼び捨てにするのは、世界でただ1人、オリバーだけなのです。
「其方の願いは何だ?」
「叶えて、頂けるのですか?」
ルイさんは、私の胸を指差しながら言いました。
「其方の心の美しさに、私は惚れた。何でも叶えよう」
「本当ですか!?」
「ああ、男に二言はない」
「では……私に愛する人との赤ちゃんを授けてくださいませんか?」
「……何だと?」
私は、必死に伝えました。
私が余命いくばくもないこと。
愛する人がいること。
彼の子供をこの世界に遺して死にたいことを。
すると、ルイさんはこう言いました。
「其方の願い、私が叶えよう」
そうすると、すうっとルイさんは私の体の中に入っていきました。
「な、なに……!?」
ルイが体に入った瞬間、頭の中にルイの声が響きました。
「これで、君は赤ん坊を授かることができる」
「本当ですか!?」
「ああ。其方の頼みだからな。
「ありがとうございます……!」
「対価は……いただいたからな……」
そう言ってから、ルイさんの声が急に聞こえなくなりました。
この時、私は対価をパンプキンパイのことだとばかり思っておりましたから、深く聞くことはしませんでした。
もしも、この時ちゃんと対価のことを聞いていれば。
私はオリバーを失うことはなかったのにと、後々悔やむことになることに、まだこの時の私は気づいておりませんでした。