コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
今回は若井とのデートらしい
俺の家まで迎えに来てくれるわけだが到着したその姿にびっくりした
は?
キャンピングカー!?
普通車を予想してたからまじで驚いた
っていうか…なんで?
俺が1人面食らっていると
「まあまあ乗ってけ」
と運転席の窓からひょこっと顔を覗かせ若井は手をヒラヒラと振り言った
いやいや、まずお前の車じゃないだろ
とツッコミそうになったが敢えて黙って助手席に乗り込んだ
今から日本一周でもするのか?
まさかな
…
けど
あの若井なら本気で言いそうな気がした
「どこ行くんだよ?」
と恐る恐る聞いてみると
「ん、山」
山?
え、山?
え、じゃこの車で山道をラリーでもすんのかって思ったけど…さすがにそれはないか
まず俺がもたない
「知り合いにさ、山借りたんだ。あとこれも」
と言って握っているハンドルをポンポンと叩く
借りる?
山を?
車は…まあそうだろうな
「ま、着いてからのお楽しみってやつよ」
と真剣に正面を見、両手でがっちりハンドルを持ち運転をしながらそう言った
若井の慣れないデカイ車の運転に必死すぎて思わず吹きそうになった
…元貴がどうやら困っている
という話をどこかで耳にすると俺とりょうちゃんは急遽話し合う事にした
俺たちのしょうもないいがみ合いで元貴を困らせていては意味ない
どうするかなあ…
全然思いつかない
うーん
「うーん…」
珍しくあのりょうちゃんも真剣に悩んでいる
そのりょうちゃんは
あっ!と言いポンと手を叩くと
「それなら元貴自身に決めてもらったらいいんじゃない?」
と神の一言で決まった
あー、それいいじゃん
文句なしだな
そして話し合いの結果お互いにデートをプランしておもてなしするって事にした
うおー
マジか!めっちゃ楽しみじゃん
おもてなしって何にしよっかなー
元貴何が好きかなー
1人でウキウキしていると
「でも」
でも?
りょうちゃんはぐいっと俺の目の前に寄ると
「抜けがけしたら針千本飲まからね!」
と釘を押された
ふぁっ
俺ってそんなにガツガツしてるように見えんのか
「お、おうよ」
「負っけないよー」
そうして俺たちの戦いは始まった
「俺のデートプランは山だぁぁ」
小2時間程キャンピングカーに揺られて着いたのは確かにまぎれもなく山だった
見渡す限り山、山、山…緑、緑、緑…近くには小川が流れていてまさに秘境って感じだ
若井は自信満々に胸張ってそう言ったけど
…で?
1人立ち尽くしていると
「よいしょっと」
と若井はキャンピングカーに載せていたバーベキューセットを出してきた
「元貴、いっぱい肉食おーぜ」
どデカいクーラーボックを開けると中には大量の肉と少量の野菜があった
え…
肉何パックあんだよ
てか今15時じゃん
こんなに2人で食えんのかな
ってか若井がキャンプって全くイメージない
まさか遭難とかしないよな…
はぁ…
俺は一気に不安になってきた
…元貴今日まだ笑ってないんだよな
ずーっと気になってた
いつもは変なテンションになってふざけたり誰かにちょっかい出して大笑いしたりしてるのに
今日に限っては静かというかずっとぼんやりしている
俺のデートプランがいまいちだから?
じゃなくてまさか俺か原因?
やばい
マジでやばい…
が、頑張らなきゃなー
キャンプ初心者の若井は以外にも頑張っていた
本人曰く
「昨日YouTubeめっっちゃみたからな!」
どうやら若井は若井なりに予習したみたいだ
いつもより2倍動いてる気がする
外で食う肉は確かに美味い
でもこういうのってみんなでワイワイする感じがある
若井本人が不満って訳じゃないけど
あー、せめて和ませ役のりょうちゃんがいたらちょっとは違ったのかもなあ
あ、りょうちゃん…
思い出した
…
あのことは考えないようにしてたつもりだったのに
りょうちゃんは謝ってくれたけど全部がりょうちゃんのせいじゃない
中途半端な俺も悪い
はぁ…
あの時なんで俺はりょうちゃんを受け入れたんだろう
やっぱり最近変だ
モヤモヤしつつ俺は若井が焼いてくれた肉を黙々と食す
「どんどん食ってくれー」
焼く専門の若井が俺の紙皿に肉をどんどん乗っけてくもんだから皿があかない
肉>野菜
年のせいにしたくないが結構しんどい…
「若井…ちょっとギブ」
「えー」
俺はそう言うと若井が持ってきたキャンピングチェアに深く腰掛けるとペットボトルのお茶を飲んで喉を潤した
はぁ…
あ、そうだ
こんなに緑&緑してるんだし絶対スマホって圏外だよなあ…
一縷の望みを託し俺はポケットからスマホを取り出すと案の定圏外だった
だよな…
まあモバイルデトックスって事で今日1日若井に付き合ってやるか
取り敢えず…
俺はスマホを若井に向け大量の肉を食っている所を撮ってやった
うん
上手に撮れてんじゃん
家に帰ったらインスタに載せてやろ
バーベキューで時間をくったせいで空はすっかり暗くなっていた
昼間はそうでもなかったけど夜は結構冷える
そんな中、若井は軍手をし石を円形にすると巻木を積み上手に火をつける
「よーし」
とポンポンと手をはたく
やってやったぜって感じだ
若井はいつの間にか持ってきたであろういつものギターを取り出すと慣らしにひく
静かな空間にその音が響く
「なあ、元貴」
ん?
「俺のギターで良かったら一曲歌ってくんないかな」
あー、うん
それいいな
俺は若井の火を向こうの正面に座る
若井がギターをひく
「何がいい? 」
「んー若井セレクトで」
「おっけー」
若井の弾くギターの音に合わせて俺は声を繋げていく
あ、楽しいな
夜空はすっかり満点の星空でその中で若井のギターの優しい音と俺の声が合わさり響きわたる
それはまるでライブのセットの中にいるようだった
正面に見える若井もなんとも嬉しそうな顔が見えた
2人だけの肌寒い屋外のコンサート
吐く息が白い
たまにはこんなのもいいかな
瞬く星空の下で歌う元貴はなんとも幻想的に感じた
うわ…
俺はその姿に息を飲んだ
大袈裟かもしれないけどその姿はまるで妖精じゃないかと思うほど美しかった
満点の星空の下で澄んだ空気の中で歌うその姿に俺は釘付けになる
気温が低いからか歌う声には白い息が見えそれが更に幻想的に感じた
いつもスタジオで聞く歌声とは違い屋外のステージで歌う姿は本当に素晴らしくて
その美しい声に思わず手を止めそうになりながらもこの時間を止めたくなくて
聞き惚れつつ俺はギターをひき続けた
やっぱり凄い
元貴は凄い
その美しい歌声は俺をも含めて全てを魅了するんだ
「ふぅ…」
観客のいないコンサートが終わると俺はしばらく元貴に見とれていた
そして自然と口にした
「なぁ元貴…」
「なんだよ」
「…好きだ」
「は?」
は?ってなんだよ
え、もしかして聞こえてない?
って思って息を吸い込み大きい声で叫んだ
「す、好きだぁー!」
「知ってた」
「え」
「ずっと前から知ってた」
ふぁっ
な、なんだよマジか…
っていうか元貴はいつから知ってたんだ
俺が1人うろたえていると
「気づいてねーのお前だけだよ!」
小さくなってきた炎の向こうの元貴に笑顔でそう返された
…!
その素直で美しい笑顔に俺はドキドキが止まらなかった
20241201