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続きは甘く優しいキスで

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続きは甘く優しいキスで

第34話 - 13.つかの間の平穏－２

2

2025年07月16日

#ハッピーエンド

#オフィスラブ

#大人の恋愛

#恋愛

#再会

#執着

芙月みひろ

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芙月みひろ

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目的の駅に着き改札を出た私たちは、こちらに向かって大きく手を振る男性がいることに気がついた。

目を凝らしてその人物を見た私は驚く。

「まさか、時田支社長？」

拓真を促して私はその男性の元へ急ぐ。

「やぁ、笹本さん、久しぶり！今回はわざわざ来てくれてありがとう」

私は笑顔で挨拶した。

「ご無沙汰しています。支社長直々に迎えに来てくださったんですか？お手数をおかけしてすみませんでした」

「いやいや、無理を言って来てもらったんだ。これくらいは当然だよ。笹本さんを驚かせたくて、わざと事前に言ってなかったんだけど、時間通りの到着で良かったよ」

時田はにこにこと言い、それから私の隣に立つ拓真に顔を向けた。

「彼が北川さん？初めまして、時田です。今回はよろしくね」

「初めまして。北川です。私の方こそ、どうぞよろしくお願いします」

初対面同士、簡単な挨拶を済ませて、時田は私たちを促す。

「駐車場は向こうなんだ」

「はい。お願いします」

時田の後を着いていく。車の助手席には私が、後部座席には拓真が乗った。

駐車場を出て車を走らせながら、時田がしみじみと言う。

「いやぁ、しかし、笹本さんに会うのは久しぶりだね。一緒に働いたのは丸二年くらいだったっけ？」

「そうですね。当時は本当にお世話になりました」

私が入社した時、時田は経理課長だった。仕事面では厳しいが物わかりの悪い上司ではなく、仕事を離れたところでは「いいおじさん」だったから、彼を慕う社員たちは多かった。私もその一人で、時田の支社への異動が決まった時は寂しく思ったものだ。

「ところであの頃の経理のメンバーは、みんな元気にやってるか？笹本さんの同期の太田君も変わりはないかい？」

太田の名前を聞いて動揺したが、それを隠して平静を装う。

「はい。今では課の中でも中堅どころといった感じみたいです」

時田はやっぱりなと納得したように頷く。

「あいつは前職が会計事務所だからな。下手すると俺より詳しいところがあったもんだよ。周りともうまくやっていけるタイプみたいだったし、このまま頑張っていれば、いずれは役職にでもつけるんじゃないの？」

私は無言で乾いた愛想笑いをし、話題を変えようと頭を巡らせる。こういう時は仕事の話が一番だと、口を開く。

「そう言えば、支社長。今回私が事務の方にお教えするのは、総務関係のことだけでいいんですよね？経理関係は支社長が詳しいわけですし。それと今回、北川さんも一緒にということでしたけど、北川さんにはどんな感じで動いてもらいましょうか？」

「うん。それは向こうに着いてから話そうか」

「あ、そうですよね」

移動中に話すことではなかったかと、慌てて口をつぐんだ。

時田は苦笑している。

「笹本さんは相変わらず、ほんと、生真面目だな。そこが君の長所の一つではあるけどね。まぁ、今回はさ、ここだけの話、息抜きに来たつもりで気楽に頼むよ。あぁ、その前にホテルに寄って荷物を預けてくるか？夜は飲み会だし、二人ともその方が楽でいいだろう」

確かに荷物は少ない方がいい。

「じゃあそうします」

「二人とも昼飯はまだなんだろ？よし、まずはホテルに寄って荷物を預けたら、そのまま飯に行こう。うまい店に連れて行ってやるよ」

「わぁ、楽しみです」

喜ぶ私に時田は前を向いたままにかっと笑い、ハンドルを切った。

荷物をホテルに預けて身軽になった私と拓真は、時田の言う「うまい店」で昼食をご馳走になった。

恐縮する私たちに、時田はにっと笑う。

「滅多にない機会だからな」

その後支社に向かい、その場にいた全員と顔を合わせた後、時田と簡単に打ち合わせする。

私は事前に聞いていた通り事務指導だったが、拓真はこれから外回りに行くと言う時田に連れられて出かけて行ってしまった。

田中から出張の話を聞いた時には、支社の業務の流れを彼に見せるのが目的だと思っていたが、実は別の目的でもあったのだろうか。不思議には思ったが、部長に何か考えがあってのことなのだろうと、それ以上深く考えることはしなかった。

終業時間となり、その後は予定通り懇親会の席が設けられた。

これまで他店に出向いたことがなかった私は、その土地ならではの食べ物や、周りで聞こえる方言のような言葉に、楽しい気分になっていた。拓真も時田や支社の営業の男性たちと楽しそうに話をしている。

今後の電話やメールでのやり取りが、これを機にますます円滑になりそうだと、私は今回の出張の成果に満足していた。