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〈黒尾編〉
「今日こそは、てつくんに美味しいって言わせる…!」
仕事が終わる少し前に
“あと30分で帰る”ってメッセージ。
そこから急いで仕上げた夕飯。
テーブルの上には大好きな唐揚げと、
鉄朗が「世界で一番好き」って言ってくれる味噌汁。
でも――時計はとうに30分を過ぎていた。
(遅いな…疲れてるのかな)
時間が少しずつ不安を膨らませた頃。
ガチャ。
「……ただいま。
あ〜疲れた〜、ってお?これはこれは」
扉の向こうから、いつもの軽い声。
でも顔を見た瞬間、表情がふっと緩む。
「なにこれ。
俺のために頑張っちゃった?」
🌸「うん、帰ってくるって言ってたから…」
上着を脱いだ彼が近づいてきて、
エプロン姿のままの彼女をじぃぃっと見つめる。
「は?可愛すぎんだけど」
唐突な言葉に慌てて視線をそらすと、
顎を指でくいっと戻される。
「目ぇ逸らさないの。
せっかくお姫様が俺のために
頑張ったんだからさ?」
悪戯に笑って頭ぽんぽん。
「でもさ。
これ、俺が遅いのが悪いよな?ごめん」
意外と素直に謝る。
それだけで胸がほっと温かくなる。
「よし、まずは味見タイム!
特等席にご案内くださーい」
自然に手を繋いでテーブルへ。
一口食べた瞬間――
「んっ……優勝。
まじで結婚しよ?」
軽い口調なのに、
今日だけは冗談じゃないように聞こえた。
「俺が遅くなる日でも、
帰りたいって思わせてくれる家にしてくれんの?」
胸に額を寄せながら、低く甘い声。
「ありがとな、🌸
俺を待っててくれて」
優しく頬にキスして、照れ隠しに笑う。
「ご褒美は後でちゃんと渡すから。
覚悟して食べてね?」
からかいながらも、優しい目のまま。
「いただきます、🌸」
その一言だけで、
今日一日の不安が全部溶けていった。