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11月1日 AM14:25 東京歌舞伎町
左目に黒の眼帯を付けた晶は、1人でバーまどろみに向かって歩いていた。
ライダースジャケットのポケットの中から、槙島ネネの固形化したJewelry Pupiyを取り出し、自分自身に起きた現象を思い出す。
晶自身も三郎とモモに起きたように、八代和樹と共に白雪と交戦していた中、一瞬で時を進められたとすぐに気付いた。
人々が行きかう中、晶は静かに思考を巡らせていると誰かが自分の前に立つ。
足元から徐々に体の上に視線を向けて行くと、黒いフード付きのマントを着ている爺さんが目の前に立っているのが分かった。
「ネネの思い人はお前か」
「アンタ、ネネの事を知ってんのか?何者だ」
「ネネの力の1つ、とでも言っておこう。数々の助言をしてきたからな」
「力って事はJewelry Pupiyが持つ力の事か。人に化ける事が出来るのか」
晶の言葉を聞いた爺さんは首を横に振り、「お前以外の人間には見えない」と言う。
「ネネの瞳が何の石で、どう言う意味を持つのか分かるか?」
「宝石言葉ってやつか?知らねーし、そんなの。石のよりも、何で俺の前に現れた理由が聞きたいね」
「石を持っている者の前に現れただけだ、賢い頭を持つお前なら分かるだろ?」
「俺が変な力を使って良いって?そう言う事か」
爺さんの存在が自分が持っている槙島ネネのJewelry Pupiyなのだと、晶は少しだけ理解出来たが俄かに信じ難い。
晶の反応を見た爺さんは、心情を読み取ったような言葉を吐く。
「お前の右隣の男、あと数秒で転ぶぞ」
「は?」
爺さんが言葉を放ってから3秒後に、自分の右隣を歩いていた男が石に躓き、体勢を崩して地面に倒れ込む。
「未来予知って事か?なんか、三郎のと似てんな」
「予知とは違う、ネネは私の言う通りに行動し、お前を救ってきたのだ。故に、私は未来を予言する者」
「アンタの言う通りに動けって事かよ」
「お前に2つ、言いたい事がある。私の話を聞いてどうするかは任せよう。1つ、今までの関係性が崩れ落ちる。2つ、お前の知り合いのメンバーが爆発に巻き込まれる。1つ目の関係性だが、黒い眼帯の男が今まで積み上げて来た関係性を破壊。2つ目の爆発がどこで起きるのか、お前がよく知っている場所で起きる。ここまで言えば大体は察しがつくんじゃないか」
爺さんの話を聞きながら、晶は再び思考を巡らす。
1つ目の人物は見た目の特徴として兵頭雪哉が上げられる。
兵頭雪哉が積み上げて来た関係性だが、兵頭会の傘下に入っている組の事か、四郎達の事が晶の脳裏に浮かぶ。
2つ目の自分が知っているメンバーと言われれば四郎達だ、Hero Of Justiceの誰かが爆発に巻き込まれる。
しかも爆発が起きる場所は晶が良く知る場所と言えば、兵頭会本家か神楽組の本家、兵頭拓也が経営していたバーまどろみの3つに限られる。
目の前にいた爺さんの姿がどこにもなく、晶はその場で呆然と立ち尽くす。
「俺に止めろって言いたくて出て来たのか?ったく、歌舞伎町から近いのはバーまどろみだな」
晶はスマホを操作し、Hero Of Justiceのメンバーに通話をかけていく。
三郎、四郎の2人に通話をかけるが、2人が電話に出る事がなく、次に六郎に通話をかけた時だった。
ドゴォーンッ!!!
「マジかよ」
大きな爆発音が聞こえ、視線を向けるとバーまどろみが入っているビルから灰色の煙が出ているのが見える。
晶はすぐにビルの裏側に移動し、闇医者の爺さんに通話をかけながら非常口のドアを蹴破った。
ガシャンッ!!!
「チッ、こんな時に出ねーのか」
バーまどろみがある階まで駆け上がり、階に到着すると灰色の煙の中から数人分の人の気配がし、晶はナイフを構える。
自分の気配を消しながら煙の中に入って行くと数人の男達が、バーまどろみの中に入ろうとしているのが見え、後方に居た男の髪を掴み顎を上げさせ、素早くナイフの刃を走らせた。
ズシャッ!!!
「ゔっ!?」
「おい、どうし…」
ズシャッ!!!
すぐ側にいた金髪の瘦せ型の男の背後から首の動脈を切り、晶は次々に男達の首を切って行く。
ドサッ。
頬に付着した血を手の甲で拭い、足元に転がった男達を蹴って隅に追いやり、扉が開いた店内に入ると六郎達が倒れているのが見え、その中でも一番重症だったのはリンだった。
崩れ落ちた瓦礫に頭をぶつけ、傷口から大量の血が溢れ出している中、頭蓋骨までもが傷口から見え、小さな足も落下した瓦礫に押し潰されている。
リンの首の動脈に触れ動きを確認するが、触れている指先から振動が伝わらない。
五郎や六郎、七海なら何とか外に運び出せるが、足が瓦礫に押し潰されているリンを運び出すのはほぼ無理であった。
カランッ。
固形のスフェーンが晶の足元に転がり、晶はすぐにリンの瞼を開けて瞳があるか確認すると、目玉が抜かれている状態になっていた。
足元に転がって来たスフェーンを拾い上げ、七海の上に被さっている五郎の腕を引き、片腕を自分の肩に回し立ち上がる。
五郎の背中には割れた窓ガラスの破片がいくつか刺さっていているのが見え、意識を失った五郎を肩車した状態のまま、晶は知り合いの医者に通話を掛けた。
***
11月1日 AM15:00 兵頭会本家
四郎達がいなくなった後、すぐに白雪も生き残った若者達を連れて、兵頭会本家から出て行って後だった。
九条光臣は神楽俊典が手配した医者に連絡を入れ、負傷し者達は病院に案内され、後処理は兵頭会の組員が請け負う事で就任式はお開きとなった。
「ボス、顔色が悪いです。部屋で休まれた方が…」
「俺達は…、あの女に騙されていたのか?」
「ボス…」
「あの糞女、玲斗にまで手を出そうとしやがって…」
一郎の顔を見ながら兵頭雪哉は、先程の白雪の行動を思い出して表情を歪ませる。
怒りと憎しみ、負の感情に支配された兵頭雪哉が掃除をしている組員達に向かって声をかけた。
「お前等、死体の処理が済んだら白雪の捜索をしろ。あの糞女をどんな状態でも良いから、俺の前に連れて来い!!!」
「「っ!!!は、はい!!!」」
兵頭雪哉の威圧感に気おされた組員達は、掃除の手を早めて白雪の捜索準備に取り掛かる。
「二郎、晶と楪葉を呼び出せ」
「え、孝明さんもですか…、ゔっ!?」
二郎が言葉を言い終える前に兵頭雪哉が、二郎の右頬に力強く平手打ちをし、倒れそうになった二郎の胸倉を掴んで顔を近付けた。
これまで自分達に向けていた表情はどこにもなく、鬼と化した兵頭雪哉は二郎の事を睨みつける。
「二郎、お前はいつから俺に口答えが出来るようになったんだ?あ?」
「貴方の命令は聞きます。ですが孝明さんは、もうこっち側の人間ではないんですよ…。呼び戻すって事になります、ボス。ボスが孝明さんに足を洗わせたじゃないですかっ!ゔっ!?」
兵頭雪哉は二郎が話している中でも、頬を殴る手を止める事はなかった。
振り翳される拳を受け止める事も出来た二郎だが、攻撃を避けようとする体を必死で押さえつける。
今の兵頭雪哉なら反射神経で攻撃を避けたとしても、彼の逆鱗に触れるだけだと二郎は分かってた。
兵頭雪哉の怒りを少しでも減らす為に、二郎は兵頭雪哉の好きにさせていると、兵頭雪哉は怒りの感情のままに言葉を吐く。
「アイツは俺に恩義があんだよ、足洗ってようが関係ねぇ。お前が連絡しないなら、俺がするだけだ」
その言葉を聞いた一郎と二郎の言葉を聞き、自分達の耳を疑ってしまう言葉を兵頭雪哉は放ったのだ。
「ボスッ!!!落ち着いて下さい!」
一郎の呼び掛けを聞いて、二郎の事を殴っていた拳の動きが止まった。
畳の上に新しい血痕ができ、二郎の頬が何倍にも膨れ上がり、二郎は口の中に溜まった血の塊を吐き出す。
「二度と俺に口答えするな、一郎お前もだ」
「ボス…」
「お前の血で拳が汚れたじゃねーかよ、さっさと立て」
二郎は兵頭雪哉に言われた通りに立ち上がり、兵頭雪哉は一郎と二郎を見据えたまま口を開く。
「お前等の存在意義は俺の役に立つ事だろうが。その事を忘れんなよ」
「「はい、ボス」」
2人の返事を聞いた兵頭雪哉は部屋を出て行くと、一郎のスマホが振動する。
一郎はスマホを取り出し、画面に表示された名前を見てみると、着信相手は晶からだった。
「もしもし、丁度良かった。お前に電話しようと思っていた所だ」
「お前の話は後回しだ、六郎達の行動をどこまで把握してる」
「いきなりなんだ?今日なら、アジトで待機している筈だが」
「今すぐ神楽組が面倒見ている病院に来れるか、場所が分からないなら位置情報を送るが」
晶の言葉を聞いて、一郎は嫌な考えが頭を過る。
自分の鼓動が聞こえ、血の気が引いて行くのが分かり、冷汗が額から流れ出す。
「六郎に何かあったのか」
「拓也さんが経営していた飲み屋が入ってるビルで、さっき爆発事件が起きた。その中に六郎達が居たらしい」
「は?爆破だと…?六郎は無事なのか!?生きてるのか!?」
「手遅れになる前に、神楽組お抱えの病院に連絡したんだよ。詳しい事はお前が聞け」
一郎の嫌な予感は的中し、晶との通話を早々に終わらせると二郎の手を引き走り出した。
「おいっ、いきなりどうしたんだよ?晶は何の用で、電話を掛けてきたんだ?」
「さっき、バーまどろみが入ってる飲み屋ビルが爆破した」
「爆破!?何でまた…」
「その爆破に六郎達が巻き込まれた」
一郎の口から出た言葉を意味を、二郎はすぐに理解出来ず、おもむろにスマホを取り出し五郎に通話を掛ける。
だが、五郎は二郎からの通話に一向に出ず、二郎の顔から血の気が引いていく。
「五郎は…、五郎は無事なのか!?」
「晶が神楽組が面倒を見ている病院に運んでくれたらしい、無事を確かめる為に病院に向かうんだ」
「…、取り乱してごめん」
「俺だって混乱してるんだ、今は気の利いた言葉は使えない」
2人は重い足を引きずりながら兵頭会本家を後にし、車に乗り込み送られた病院に向かった。
***
11月1日 AM15:00 東京都江戸川区葛西臨海公園葛西臨海公園
CASE 四郎
兵頭会の本家から誰に目にも止まらないように抜け出した俺達は、大きな観覧車が目に入り葛西臨海公園に訪れていた。
平日のおやつ時、客が少ない公園内を3人は黙って歩いていく。
モモは俺の手を力強く繋ぎ、けして手を離さないと言う強い思いを感じさせる。
「四郎、痩せたね。体調は大丈夫?休まなくて平気?」
「今の所は平気だ」
「そっか、辛くなったらすぐに言ってね」
「心配し過ぎだ、三郎は」
三郎と俺の会話を黙って聞いていたモモだが、大きな観覧車を見ながら俺に声をかけた。
「四郎、2人で観覧車に乗りたい」
「観覧車…、あそこにあるやつか」
「黒猫ランドの時は最後まで回れなかったでしょ?今は敵がいないから、その…、嫌だったらいいの」
「乗って来なよ、俺は回り終わるまで待ってるから」
モモの表情から感情を読み取った三郎は、モモの背中を後押しする言葉を吐く。
「じゃあ、乗るか?」
「うん!早く行こ!」
俺の返答を聞いたモモは、繋いでいる手を引っ張って観覧車の乗り場に向かって足を速める。
後ろを振り返り、三郎に視線を向けると満面の笑みを浮かべて手を振っていた。
モモに手を引かれたまま、2人は観覧車の乗り場に到着し、スタッフの指示道りに赤色のゴンドラの中に乗り込んだ。
俺とモモは対面するように座り、ゴンドラの中が揺れながら上昇して行く。
黒猫ランドの観覧車に乗った時とは違って、2人の間には静かな空気が流れていた。
「四郎とまた会えて良かった、もう会えないかもって思ってたから」
「モモ、俺はお前のモノだ。お前を守る事が、俺の役目だと思ってる」
「四郎…」
俺の言葉を聞いたモモは、瞳を潤ませながら四郎の事を見つめる。
自分に嘘を吐かない事、騙さない事、裏切らない事を十分に分かっている。
モモに対して沸き上がっているこの感情の名前が何なのか、この先も俺が知る事がない感情。
ただ、こうしてみているだけで何かが満たされていく気がするのは何だ?
この何もしてない時間がこ心地が良いと感じているのも、視線を交わすだけでも落ち着くこの感情は何なんだ?
生きてきた中で知らない感情が沸き上がり、らしくもない言葉を言って、俺は何がしたい。
モモに見返りを求めている訳でもなく、モモが喜ぶ言葉を選んで、何の目的もなくモモの事を喜ばせたいだけなのか。
「お母さんより、私の事を選んでくれたんだよね?」
「当たり前だろ」
「お母さんとキスしてたけど、私の方が大事だったんだよね?」
「あの女はモモから俺を引き離す為にキスをしてきたんだ、自分の騎士にする為。特殊の縛りを解くには同じ事をするしかなかった、それだけだ」
そう言って、俺はモモの顔から視線を外し、観覧車の窓の外から見える景色を眺める。
モモもこれ以上は何も聞かずに、俺の横顔を愛おしそうに見つめ、2人の間に沈黙が訪れるが、重苦しいものではなく落ち着いた空気が流れて行く。
白雪が無理矢理、血を飲ませてきたからか肺の痛みが少しだけ緩和されているきがした。
アルビノの血を大量に飲めば、俺の病は治るのは分かっている。
モモの体の中に流れている血液を全部抜き取って、吐き気を抑えながら飲んだらと考えながら視線を向け、馬鹿な事を考えてみた。
「もう一回、キスしても良い?」
「お前の好きにしたらいい、俺はお前を拒まない」
「本当に良いの?」
「あぁ」
恐る恐る隣に移動し、ゆっくりと俺の頬に触れて体温を小さな指先で確認していく。
自分の元に俺のが帰って来た事を確かめるように、モモは四郎の顔を覗き込んでは再び頬に触れる。
何回か同じ事を繰り返しているので、閉じていた瞼を開けた。
この小さな生き物の命を奪ってまでも生きたいのか、そう聞かれれば生きたくないと答えるだろう。
ただ、モモと三郎を残して逝く事だけが心残りなだけだ。
「あっ」
「さっきから何してんだ」
「えっと…、四郎がちゃんとここに居るか確かめてたの。四郎と離れていたの長かったから…、その…、わっ!」
ドサッ。
モモが言葉を言い終える前に体を抱き上げ、自分の膝の上に座らせる。
「し、四郎っ?」
「こうしたら、俺が帰って来た事が実感出来るか?」
「四郎が優しくしてくれるのは私だけ?」
「お前にしかしない、した事もない」
俺の言葉の1つ1つに偽りのない気持ちが込められている事を、モモは分かっていた。
何も聞かずに、モモはゆっくりと自分の唇を押し付けると、俺とモモの周りにアパタイト色の鎖が浮かび上がり、モモの頭上にアパタイトの宝石が装飾された王冠が被さる。
2人の関係が第1段階から第2段階に移行し、モモのJewelryWordswの力が強化された事を意味している事が分かった。
「モモ、お前に確認しておきたい事がある」
「確認?」
「白雪がお前を殺しに来たら、俺は迷わず白雪を殺す。お前の母親を俺は殺すが、あんな女でも母親だろ?」
あの女の異常さは兵頭会の本家で、モモ自身も見て理
解している筈だ。
兵頭拓也を殺したのは白雪だろう、白雪の行動と言動を見ていれば簡単に想像が出来る。
「お母さんは、四郎の事を欲しがってる。私と同じように、四郎の事を求めてる。私、四郎の事を取られたくなくて、お母さんの右手を…。また、お母さんが私の四郎に手を出したら、四郎じゃなくて私が殺しちゃうと思う。時々ね、感情が暴走?しちゃう時があるの」
モモの言葉を聞いて、俺は思い当たる部分が幾つかあった事を思い出していた。
モモが我を忘れて勝手な行動する事は何回かあったが、暴走する時は大抵は俺が関係している。
そうなったモモを力尽くでないと止められない、モモの事を止める事が出来るのは俺だけだ。
あんな女でも、モモの事を産んだ母親で、何か思わない訳がない。
コイツから、肉親を奪って良いものなのかと迷いが産まれてる。
殺すか、殺さないか、このどちらかを決めておかないと、これからの俺の行動に関わってくるからだ。
「私、お母さんの事よりも四郎が大事。三郎の事も少しだけ、一郎たちの事も美雨ちゃん達の事も大事。四郎、お母さんの事殺しても良いよ」
「分かった」
「お母さんに対して何も思わないの、死んでも何も思わないと思う。私、おかしい?」
こういう時、ちゃんとした大人ならモモの考えを優しく否定し、母親と向き合わせようとするのだろうか。
モモが居る環境は子供にとっては悪影響、俺達大人はちゃんとした答えを出してやれない。
親からの愛情を受けてこなかった俺が、モモの事をまっとうな道に導く事なんて不可能だ。
モモ自身もまともな答えを求めていない事ぐらいしか、俺には分からない。
「面倒を見てもらった記憶がないんだ、母親が大事だって思えないのも当然な現象だ。母親が側に居たって、嫌いになる事もある。結局、母親と子供も合う合わないがあんだ」
「うん、そうだよね。私、おかしくなんかないよね」
「頭がおかし奴等を何人も見てきたろ」
「あははは!確かに、もっと頭のおかしい奴がいたね。そっか、四郎に教えてもらう事が多いなぁ」
そう言いながら、モモが俺に抱きついてきた。
不安定で簡単に壊されてしまいそうなモモを、守らなけらばならないとモモの背中に手を回した瞬間に思った。
モモを殺そうとする人間を全て殺さないと、俺が側にいて守らないといけないのにすぐに死んでたまるか。
死ぬなら、邪魔者がいなくなってからだ。
俺に人生を捧げた三郎の事も、最後まで俺が面倒を見てやらないといけないな。
そうか、人殺しの俺でもこんな事を思う日が来るとは思ってもみなかった。
「四郎、大好き」
「俺の事を好きなままでいろ、この先も」
願いの籠った言葉を吐きながら、俺はモモを抱き締めた。
***
11月1日 AM15:15 東京市内 〇〇現場
灰色の空から冷たい雨が降り注ぎ、現場で作業していた男達は空を見上げ、今日の作業を早めに終わらせる事になった。
事務所で事務作業をしていた楪葉孝明に、従業員の男が声をかける。
「楪葉さん、雨が本降りになってきたので作業は中断しました。木材には雨避けのブルーシートをかぶせてあります」
「ご苦労様、夜から台風が接近してくるってよ。明日は休みだな、他の奴等にも伝えてくれるか?ちょっと今、手が離せなくてよ」
「分かりました!すぐ伝えてきます!」
楪葉孝明から指示を受けた男は外に居る従業員達の所
に向かって行き、楪葉孝明が再びパソコン画面に視線を向けた時、さっき出て行った従業員の男が戻って来る。
「ゆ、楪葉さんっ!」
「そんなに慌ててどうした?休みは伝えて来たのか」
「そ、それはまだなんですけどっ、兵頭会の組長さんがいらっしゃって…」
「邪魔するぞ、楪葉」
事務所の入り口に立っていた従業員の男を手で退け、兵頭雪哉と数名の組員達が部屋の中に入って来た。
兵頭雪哉の表情と空気を察した楪葉孝明は従業員の男を外に出し、来客用のソファーに兵頭雪哉を座らせる。
「雪哉さん、お久しぶりです。あ、飲み物を…」
「お前、俺に恩義はあるよな」
「え?それは勿論ですよ。今の生活があるのは雪哉さんのお蔭なんですから」
「そうだよな、お前は義理堅い奴だったよな」
楪葉孝明は嫌な予感がし、組員達に視線を向けると自分に銃を構えているのが見えた。
武器を持っていない事を分かっていた兵頭雪哉は、楪葉孝明にとって不利な状況を作り上げ、そのまま話を続けていく。
「こっちの世界に戻ってこい、楪葉。俺の頼み、聞いてくれるだろ?」
兵頭雪哉の言葉を聞いた楪葉孝明は、自分の予感が当たった事に落胆した。
コメント
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うわあ、このエピソードは重くて切ないですね…。晶がネネの力の本体らしき爺さんと出会って、未来予言みたいなことを聞かされる展開、そして実際にバーまどろみが爆破されるシーンは本当に胸が痛みました。リンの姿を目の当たりにした晶の冷静さが逆に辛い…。それと同時に、観覧車での四郎とモモのシーンは静かで美しくて、二人の絆が深まったのが伝わってきました。でも四郎が「モモを♡♡♡てでも生きたいか」と自問するところが、彼の病の深刻さを物語っていて切ないです。兵頭雪哉の怒りがどんどん暴走しているのも気になる…。次が気になる終わり方でした!
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#学園
大正
4,972
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夜鐘
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