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#狂気
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空港にはフライト時間の二時間前に着いているのが望ましいとして、私たちは残る一時間をスーパーマーケットや近くのお店で過ごす。
残る一時間は空港で免税店やお土産を買う時間に充てた。
ヴィトンでの買い物は、予算の六十ドル近くを大幅に超えてしまったので、カードでの精算となった。
だから現金がまるっと残っているので、お土産や免税店でコスメや香水を買うのに、使わせてもらう事になった。
「よし、行ってこい。好きなだけ買え」
デパコスがズラリと並んでいるお店の前で、尊さんが私の背中をトンと叩く。
「ありがとうございます……っ! 一生恩に着ます!」
「着なくていい」
冷静に突っ込みを入れられたあと、私は恵を伴ってキラキラコスメが沢山ある店内に入っていった。
俺――、篠宮尊は、朱里たちが見える場所に立って、彼女たちを見守る。
「なんだか小さい子のお使いを見てるみたいで、ハラハラするな~」
隣にいる涼が言い、俺は苦笑いする。
「カタコト英語だからな。でも朱里は気合いの入ったボディランゲージするから、大体伝わると思う。まぁ、買う物が化粧品なら、見せてもらって『これください』で大丈夫なんじゃないか?」
「尊とあちこち行った時も楽しかったけど、恋人と一緒だと別の楽しみ方になるね」
「まぁな。……とりあえず〝安全に寝られればいい〟だけじゃ済まないからな」
「あははっ、確かに。恵ちゃんはいまだに何かと慣れてなさそうで、おっかなびっくりだけど、その内リラックスして楽しんでくれるようになったらいいな」
「中村さんは、本当に警戒心の強い猫みたいだよな」
「朱里ちゃんは好奇心旺盛な猫タイプね」
俺たちはそう言い合い、クスッと笑う。
「まー……、こうやって好きな子の事で笑えるようになったって、俺たちって随分幸せになったよな」
涼に言われ、俺は「まぁな」と笑う。
「今まで不幸じゃなかったけど、恵ちゃんと出会ってから世界の解像度が上がったっていうか。今までだって自分の事を〝物事を楽しむ天才〟と思っていたけど、彼女と一緒になってから世界が変わったね」
「分かる。マジで世界が朱里中心になる」
「俺、正直自分が四六時中、女の子の事ばかり考えて過ごすようになるなんて、まったく想像してなかったんだよ。言い方は悪いけど、いつかは妥協した相手と結婚するだろうから、その時は相手の求める理想の夫、父親を演じようと決めてた。……でも本当に人を好きになると、演じるなんて余裕はなくなる。自分でもびっくりだよ。……こう見えて、何事に対しても余裕はあるほうなんだけど」
「大学時代の奴ら、涼の事を〝名前通りのクールなプリンス〟って言ってたけど、中村さんと一緒にいる姿を見たら、どんな顔するだろうな」
「男友達はともかく、勝手な理想が壊れて幻滅されるなら、万々歳だよ」
「ははっ、俺、お前のそういう意外と毒のあるところ好きだよ」
そのあと、涼は小さく笑ってから少し黙る。
俺はその沈黙を理解して、ポンと彼の背中を叩いた。
涼は物凄くモテた結果、凄まじい粘度のストーカー被害に何度も遭った。
それこそ、警察案件になるような事だ。
涼のように立ち回りの上手い奴でも、かわしきれない人がたまに現れる。
接近禁止令が出て、それでも約束を破って警察の厄介になって……という事を、みんなに憧れられるマドンナ的な女性や、良家の令嬢、または芸能人がやるもんだから、人は見かけによらない。
朱里たちは涼をパリピ気質な陽キャと言うが、彼はこう見えて政財界の大物を揃えてのパーティーを嫌っている。
そういう人たちと会えば、ただの挨拶、社交辞令では済まなくなる事もよくあるからだ。
三日月グループの御曹司に言う事を聞かせられる人はそういないが、例外もいる。
その人が強引に自分に利益のある女性を連れて来てセッティングとか、見合い話を持ち込んできたら、断るのが面倒になる。
だからパーティーは欠席はしないものの、一通り挨拶をして早々に帰るのがいつもの流れになっていた。
涼に比べて俺は陰キャ扱いされる事が多いが、パーティーを抜け出して一人で海辺まで車を走らせ、ひたすらボーッとする涼もなかなかのもんだ。
俺や少数の友人は涼のそういう一面も知っているから、むしろ明るく振る舞っている時は〝仮面〟を被っている時だと理解している。
それが、中村さんといると素でバカをやってるので、親友としては「良かったな」という気持ちになる訳だ。
コメント
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尊さんと涼さんの会話エモすぎて泣いた🥺「世界の解像度が上がった」「世界が朱里ちゃん中心になる」って表現、めっちゃ刺さった…!しかも涼さんの過去のストーカー被害とか、クールに見えて実は仮面かぶってる本音部分が明かされるのも尊いし、猫に例えるの可愛すぎん?? 男同士の本音トークに胸熱すぎてしんどい😭💕