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投稿お疲れ様〜!! 勇気出して話しかけたのに、自分に言葉のナイフとして刺さってしまったのかzさん…。 食堂紹介編だ…!栄養剤飲まされてたのか…、小さい頃に食を体験できなかったの辛いな…。 zさんもd先生に食器の使い方教えて貰ってたんだ…!?d先生有能か…?? あと、お粥の説明のでこんな時間にお腹空いてしまった()
ことり
床に敷いてある絨毯と自分が履いているブーツがぶつかる音が廊下に響く。あと俺の後ろには、ぼんやりこちらを見つめながら着いてくるショッピくん。無言で何も会話が生まれないこの時間がただただ少し気まずくて、この空間をどう打開すればいいかなんて自分には勿論分かるはずない。こんな時シャオロンや大先生だったら相手に話題を振って話すことが出来たらどれだけ楽だろうか。あぁ、羨ましい。昔、勇気を出して話しかけた言葉が見えないナイフ変わって自分に刺さった事があった。あの瞬間がまだ頭の片隅に張り付いてて剥がれない。あんな記憶消えちゃえばいいのに。何も出来ない自分に嫌気が差してしょうがなくて、1人頭の中で反省会を開く。とぼとぼ歩きながらそんな事をしてると、ふわり。温かくて自分の好きな匂いが辺りに漂っていた。ちょっと先には少し開いた食堂の扉。後ろには先程とは変わらずこっちを見つめる薄紫。
「しょ、ショッピ君。ここが食堂やで。み、みんな揃って朝と夜ご飯を食べる場所やで。」
そう言うとこくりと頷いてくれた。う、上手く説明出来たんか…?取り敢えず食堂の中へと案内する。扉をくぐれば大きくて長いダイニングテーブルとその周りを綺麗に囲む椅子たち。あとは料理を皆に振る舞いに来た人に夜食を求めて冷蔵庫を漁りに来た人がしょっちゅう出入りする清潔で広い厨房。その一角で厨房に立っている1人の幹部。濃紺の髪と少しよれたスーツがトレードマークの青の彼だ。ちなみに、この食堂は幹部専用で料理を振る舞うのも主に大先生やひとらんが。もし誰でも立ち入る事が出来るとなると毒とか盛られたりする可能性もあるからな。
すると濃紺の彼がこちらに気付き声を掛けてくる。
「お、来たなぁ。ショッピ君とゾムさん。もうちょっとで出来上がるから席座って待っててなぁ」
「はーい。ショッピ君、こっち着いてきてや」
自分の隣にひとつ増えた椅子にショッピ君を座らせる。大きな窓から入ってくる暖かい太陽の光で眠くなってくる。ぼーっとしながらしばらく待っているとおまたせ〜という声と同時にショッピ君の前に少し小ぶりな鍋とスプーンひとつ置かれる。大先生が鍋蓋を開ければほわりと中に閉じ込められていたいい香りと白い湯気が一気に宙に放たれる。気になる鍋の中身はほぐされた鮭と溶き卵が回し入れられたお粥だった。俺が風邪引いたときによく作ってもらうやつやなぁ。
「マスター。これはなんですか?」
「これはなお粥って食べ物やでぇ。ひとらんらんって名前の幹部おるやろ?その人の出身の国の料理なんやでぇ」
「あ、あと全然マスターとかじゃなくて鬱とか大先生って好きに呼んでなぁ〜」
「……わかりました。」
そこでピタリと会話は終わってしまう。ショッピ君はじっとお粥を見つめるだけで食べようとしない。お腹空いて無いのか…?それとも違う理由なのか。俺には分からなかった。あ、もしかしてなんて声と共に大先生はひとつ質問をした。
「ショッピ君。前いた所でどんなものを食べてた?」
「食べ…る?」
「そう、食べる。」
「…一つだけ毒とは違う液体の様なものを体に入れられていました。」
この言葉を聞いて推測できたことは彼にずっと与えられていたものは栄養剤だけ。暖かいスープでも焼いた肉でも野菜でもない小さな錠剤と無色透明な液体。嗚呼、ますますあの研究員達が憎らしく思えてくる。
「そっか。…じゃあ、ひとつひとつカトラリーの使い方ゆっくり覚えていこうな。」
「…はい。」
大先生がショッピ君スプーンの持ち方を教えているのを眺めていると、何処か懐かしさを感じてしまう。俺も大先生にカトラリーとかの使い方を教えて貰ったからなぁ…。初めて食べた大先生の料理は暖かくて、数年経ったが未だに忘れられない。いや、寧ろ忘れてはいけないものだと思う。あの時の感動は凄かったから。
慣れない手つきでスプーンを扱い、鍋から少しお粥を掬えばぱくりとショッピ君の口へそれは入っていった。
数回咀嚼して飲み込んだお粥の感想は、「…柔らかい。」この一言だった。食事の楽しさと大切さ、そして美味しいと感じる感情をまだ知らない彼は今後どうなっていくのだろうか。何より食べる幸せを彼には知って欲しい。いつか、暇な時ショッピ君と2人で飯でも行けたらいいな。
次回ラスト。短くてすみません。