外にはあんなにたくさんいるのに、神社の中はほとんどひと気がない。
未知は薄暗い境内に座った。
「これ、、で大丈夫か?」
そう言って愁は胸元から出したハンカチで、切れた鼻緒を結んでくれる。
「ありがとう。」
と未知が微笑む。
「ひとりか?」
「いや、りっちゃんと一緒に着た。」
「あぁ。」
「愁くんは?」
「一緒だったけど、はぐれた。」
「そうなんだ。」
未知は愁に直してもらった下駄を見つめる。
「ちょっと待ってて。」
そう言うと、愁は走ってどこかへ行く。
しばらくすると愁が戻ってきた。
「これ。」
愁の手には二本のラムネがある。
「え?」
未知は驚いたように聞き返す。
「それのお詫び。」
愁は未知の足元を見て言う。
「あ、ありがとう。」
ラムネの瓶はつめたく冷えている。
「私、これ開けるの苦手なんだよね。いつも失敗してこぼしちゃう。」
未知が言うと、
「貸して」
愁が未知のラムネをとる。
力いっぱいビー玉を押し込んだ愁は、しばらくそのまま手を離さない。
「はい、、」
未知の手にラムネが戻る。
「すごい、全然こぼれてない!」
「コツがあるんだ。」
そう言って愁は自分の分のラムネを開ける。
「はぁーおいしいー」
浴衣で蒸された未知の体を、冷たいラムネが通っていく。
「今日、いつもと違うな。」
「え、、?」
愁が未知のお団子を見る。
「あ、これは、、せっかく浴衣着たからお母さんに上げてもらった。」
「似合ってる、、、」
自分のラムネ瓶を見ながら愁が言う。
「あ、ありがとう。」
未知は少し頬を赤らめて言う。
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