コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ど、どういうこと?シュウ」
言われた内容に理解が追いつかなかった。
というか、何故ヴォックスが話に出てくるのか。当の本人はシュウの後ろで楽しげにこちらを見つめている。もう、ホントそういう顔、腹立たしい。そう思ったアイクは軽く睨みつけておいたが彼の笑顔を見るあたり効果はなさそうだった。
「んはは、まあ急に言われたらびっくりするよねぇ」
笑って言うシュウにそんな他人事みたいに、と思ったけれどまずは事情を聞くのが先だ。
「ちゃんとした理由があるんだよね?」
「それは勿論」
頷いて、シュウは事の顛末を手短に説明してくれた。
シュウ曰く、
今回祓う対象が失恋が元のかなり執拗い思念で、偶然途中で会ったヴォックスと一緒に祓いに行った。
何事も無く終わるはずだったが、何故かヴォックスがやらかして呪いの残滓を受けてしまった…と。
「その呪いっていうのがなかなか厄介でね」
いかにも困ったというような顔でシュウは言った。
常に人肌に触れていないと呪いが体を蝕んでいく呪いらしい。
「でも、ヴォックスは鬼だよね?呪いを祓うとかは…」
アイクが問うと、シュウの後ろで楽しげな表情を浮かべていたヴォックスが首を横に振った。
「アイク、呪いというのは普通人間に対して憑くものだ。それが鬼に憑いたとなれば、どう作用するか分からない。本来鬼と呪いというのは同じ側にあるものだからな」
「というわけで、自然消滅まで大人しくしておこうっていうのが最善策なんだけどね、アイク」
ヴォックスだけでなくシュウまでもが楽しげな笑みを浮かべてこちらを見つめている。
散々ヴォックスからの好意をあしらってきたとはいえ、ヴォックスは大事な仲間なのに変わりは無い。が。
「ほかの人たちはどうなのさ?」
この家にいるのは何も自分だけでは無い。そう思って口にすれば、やれやれというふうに首を振られた。
「ルカはマフィア、ミスタは探偵。家を空けないといけないことも多いし…勿論僕だって依頼があるからね。
家に居られて都合がいいのはアイクしか居ないんだよ」
お願い、とシュウに頼まれれば引き受けるしかない。
「…分かったよ。不本意だけど」
「ありがとうアイク、助かるよ!」
ヴォックスに余計なことをしないようにきつく言っておかなければ。ニコニコと微笑むシュウ──の後ろでニヤニヤとした笑みを浮かべるゴリラを尻目にそう決めたところで、アイクは今更ながら気づいた。
「あれ、ヴォックス今誰にも触ってないけど…」
そう言うと、シュウは「そこは呪力でちょちょいとね」と苦笑した。解呪は出来なくても、”人”と認識させる様な呪力を作ることは出来るらしい。ただ長時間は消耗が激しいらしく、アイクの代わりになってもらうことは難しい様だった。
「じゃあ呪力を消すから、ヴォックスはアイクにくっついてね」
シュウがそう言うやいなや、アイクは正面から抱きしめられた。肌と肌が触れていればいいはずなので、なにもここまでする必要は無い。
「ヴォックス〜〜?」
手だけを繋いで素早く引き剥がして、またもや軽く睨みつけた…が、「怒っていても可愛いな」とどこ吹く風である。そんなやり取りを、シュウが「相変わらずだねぇ」と楽しげに見つめていた。