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そんなに雰囲気変わってるのかな、😖💧
(こんな醜い姿でマリカに逢いに行ったら、拒否されるに決まってる……)
理想郷を作るために、たくさんの人を殺めたせいで、この姿になったのか? そもそも僕はどこで間違った?
天使の翼でマリカを迎えに行って、ふたりで暮らすのに良さそうな土地で、静かに余生を送るはずだった。そのためにお金だって、たくさん貯めた。
「こんな悪魔みたいな姿、誰も受け入れてくれないだろ」
蝋燭の明かりに照らされているせいか、鏡に映る姿は妙に不気味さが際立っていた。自身の姿なのに、嫌悪感を覚える。
「マリカに逢いたい。そのために僕は頑張ってきたのに、どうして……」
「ヒッ!」
背後に人の気配を感じて振り返ると、見覚えのある人物が僕を見て後退りする。ソイツの手に小さなナイフが握られていたことで、組織が僕を消そうと寄越した暗殺者なのが、一目でわかった。
「僕を殺しに来たんだろ? それで刺してみろよ」
蝋燭台を床に置き、後退りする暗殺者に向かって歩を進める。しかしその距離は一向に縮まらない。僕が進むと、暗殺者は体を震わせながら後退した。
「いけないなぁ。組織に頼まれたのに、無様に逃げ帰るのか?」
言いながら素早く距離を詰めて、暗殺者の首を掴み、指先に力を込めた。鋭い爪が容赦なく皮膚にめり込む。そこから勢いよく血が吹き出し、暗殺者は絶命した。
僕が彼を殺さなかったら、別の誰かが暗殺者を殺めただろう。組織としては、失敗は許されないものだから。
暗殺者をその場に放り投げ、血に濡れた片手を貴族の布団で拭った。人を殺すという恐ろしいことをしているのに、トラウマに陥ることなく、平然と手にかけることができたのは、千人という馬鹿みたいな数をこなしたから。
ひとえに、天使の翼を手に入れるためだけに、無我夢中でおこなっていたのだが――。
「これ、見せかけじゃなく、飛ぶことはできるのか?」
翼を動かそうと、頭の中でイメージしてみたのに、ピクリとも動かない。
「どうしたらいいんだ。羽ばたいてみせろよ」
困惑しながら口にした瞬間、小さく翼が動いた。
「そうだ、もっと羽ばたけ」
まるで耳でもついてるみたいに、命令したらそのとおりに動いた。
バルコニーに出るべく大きな窓を開け、空を見上げる。もう少しで満月になりそうな大きな月が、これでもかと夜空を明るく照らした。
「あの月に向かって飛ぶぞ!」
月に指をさしながら、その場でジャンプすると、床に足がつくことなく、体がふわりと浮かぶ。大きく羽ばたいた悪魔の翼は、僕を月へと導く。
おもむろに下を見ると、貴族が住んでいた屋敷は、ミニチュアのように小さな建物になっていて、深夜帯につけられている数少ない町明かりが、都市をぼんやりと浮かびあがらせた。その様子が、まるでおもちゃのように見える。
「こんな、ちっぽけなおもちゃ箱に住んでいたのか、僕は……」
呟きながら顔をあげて、大きな月を眺めた。神々しい月の光が、禍々しい僕の姿を明るく照らす。
「この月明かりとおもちゃ箱を、マリカに見せてやりたい」
僕の姿を見てマリカが怯えたら、なにも言わずに立ち去ろう――そんな気持ちで、ここから遠いガビーラ様のお屋敷を目指したのだった。