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初めての小説ですが、めちゃめちゃ頑張ったので見てみてください‼️
書いたあとの感想としてはこうたんさんのキャラが違うかな?という感じです。
違和感があっても無視して頂ければ…‼️
第1話 黄色い仮面と赤い髪
春のキャンパスは、どこを歩いても新歓のビラであふれている。声を張り上げる先輩、ちらしを避けて早歩きする新入生。人混みに紛れて、僕 こうたんは仮面を軽く直した。
黄色い仮面にフード付きのパーカー。怪しいと言われても仕方ない格好だけど、これが一番落ち着く。人の視線を直接受けないだけで、世界はずいぶん静かに感じられるから。
「おーい! そこの仮面の人!」
背後から、元気いっぱいの声が飛んできた。振り返ると、赤いの髪を揺らす男の子が手を振っていた。細くて色白。ひときわ目立つのは、太陽みたいな笑顔だった。
「……僕?」
「そうそう! 一人だろ? どーせサークル探してるんじゃない?」
イントネーションが少し変だ。関西弁っぽいけど、妙にエセっぽい。
「えっと……まあ、探してるけど」
「なら決まり! なっしーについてきな!」
赤髪は勝手に僕の腕をつかみ、ずんずん歩き出す。
「ちょ、ちょっと! まだ名前も…」
「なっしー!僕のあだ名。好きに呼んでね」
「なっしー……僕はこうたん。」
「じゃあ今日から呼ぶ! こうたん!」
強引すぎる。でも、不思議と嫌じゃなかった。
◇
たどり着いたのは、校舎の片隅にある小さな部屋だった。ドアに貼られた紙には、大きく「ニート部」と書いてある。
「……ニート部?」
「そ! 活動内容は“基本的になにもしない”。みんなで集まってだらだらするだけ。最高でしょ?」
「そんなので成立するの?」
「成立するんだよ! 暇人の集まりだから!」
部屋の中では、数人がゲームをしたり寝転んだりしていた。ゆるすぎる空気に、思わず笑ってしまう。
「こうたんも入ろ? 一緒にだらだらしよ!」
なっしーの笑顔は全力で、断る余地なんてなかった。
◇
数日後。昼休みの学食。僕がトレーを持って席を探していると、後ろから元気な声が飛んできた。
「おーい! こうたん!」
振り返ると、やっぱりなっしーがいた。自然すぎる登場に、首をかしげる。
「……また偶然?」
「偶然……かもなぁ」
「……もしかして、つけてた?」
「バレた!? えへへ、ちょっとだけ!」
「“ちょっとだけ”ってなに!?」
「安心せぇ! なっしー、ストーカーの前科あるけど、全部可愛いレベルだから!」
「可愛いストーカーってなんだよ……」
「好きすぎて後ろ歩いちゃったり、SNSで調べすぎたり! そんな感じ!」
胸を張って言うな、と言いたいのに、真剣そうな目に笑ってしまう。
「ほんとに変わってるね、なっしーは」
「変じゃない! こうたんが特別なだけ!」
元気すぎる直球に、胸が不意に跳ねた。
◇
ニート部の部室。放課後、二人きりでゲームをしていた時。
「なっしーって、恋愛とか興味ある?」
「あるある! でも空回りばっか」
「警察呼ばれたり…逃げられたり。」
「じゃあ僕が教えてあげるよ。“好き”って気持ち」
「はあ!? こうたんが!?」
「そう。僕が」
ぐいっと距離を詰めると、なっしーの目が大きく見開かれた。
「ち、近いって!」
「逃げないで」
「に、逃げないけど!」
動揺している様子が可愛くて、僕は笑った。
◇
片付けの後。誰もいない部室で、赤髪の横顔を見つめる。
「なっしー」
「ん?」
「僕から離れないでね?ストーカーでもいいから。ずっとそばにいて」
一瞬固まったなっしーは、やがてぱっと笑った。
「……やった! じゃあ正々堂々、こうたん専属ストーカーになる!」
その宣言が、やけに嬉しかった。思わず彼の手を握る。細くて冷たいけど、ちゃんと握り返してくれる。
黄色い仮面の奥で笑みを隠しながら、僕は確信した。
――もう、この赤い髪から目を離せない。