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静寂が訪れた瞬間、マドレシスの剣がマデスの胸に深々と突き刺さった。その光景に討伐軍の戦士たちは息を飲んだが、すぐに彼らの歓声が上がるかと思われた。しかし、その期待は打ち砕かれた。
マデスは突然、冷たい笑みを浮かべ、再び変化し始めた。黒い鱗が溶け、彼の全身を柔らかく温かい光が包み込むように見えた。そして、彼の傷ついた身体から、ゆっくりと新しい形態が現れ始めた。
「第参形態…」マドレシスが息を呑んだ。
マデスの姿はどの形態とも異なっていた。黄金の光に包まれ、慈愛に満ちているかのようだった。彼の顔には、かつての冷酷さは消え去り、優しさと悲しみが混ざり合った表情が浮かんでいた。
「愛の力だ…」マデスは静かに呟いた。「すべてを赦し、受け入れる力。それこそが、第参形態だ。」
マデスは討伐軍を見渡しながら、静かに話し続けた。「私は愛というものを信じていた。だが、それは私を愚かにした。そして、その結果、全てを失った。だからこそ、私は憎しみによって生きることを選んだのだ。」
彼の言葉は、戦場に重く響いた。戦士たちは、マデスの変貌に戸惑いを覚えていた。しかし、マドレシスは違った。彼の目には決意の光が宿っていた。
「愛が力だと言うならば、受け入れることができるのは、真の勇者だけだ。」マドレシスはマデスに向かって一歩踏み出した。「そして、愛を超える力があるとすれば、真の決意だ。」
マドレシスは剣を再び構えたが、防御の姿勢をとった。「愛を力とするならば、受け入れるべきだ。愛の力であろうと、憎しみであろうと、全てを超えてみせる。」
マデスはその言葉に一瞬驚きを見せたが、すぐに優しい笑みを浮かべた。「マドレシス…お前は、理想そのものだ。しかし、私はもはや歩むことはできない。」
マデスは愛の光を放ちながら、討伐軍に向かって歩み寄った。その光は、戦士たちの心にまで染み込み、彼らの憎しみや恐怖を和らげた。しかし、マドレシスは光を浴びながらも、揺るがなかった。
「愛がすべてを赦す力であっても、我々は進まねばならない。」マドレシスは静かに言った。「この戦いの果てに、我々が守るべきものがある。そのために、今ここでお前を超えてみせる。」
マドレシスはマデスに向かって静かに歩み寄り、彼の手を握った。マデスは一瞬驚いたが、その手の温かさに何かを感じ取った。そして、マドレシスは優しく囁いた。
「ありがとう、兄さん。そして、さようなら。」
その瞬間、マドレシスの全身から溢れ出た光がマデスを包み込み、彼の第参形態が消えていった。愛の光が消え去ると同時に、マデスは静かに膝をつき、微笑みながら最後の息を吐いた。
「お前は、私が望んだ世界を…」
そう言い残して、マデスの体は静かに地面へと倒れた。討伐軍の戦士たちはその瞬間を見守り、深い哀しみと感謝の気持ちが胸に込み上げてきた。
マドレシスは静かにその場に立ち尽くし、マデスの亡骸に向かって頭を垂れた。
「兄さん…守ろうとしたものは、俺が守る。」
その言葉は、戦士たちの心に深く響いた。そして、彼らはこの戦いの真の意味を理解し、次なる戦いに向けて静かに歩みを進めた。