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んん?どういうことだろう。
「先日のお昼も先生に呼ばれているって言って、俺の誘いを断ったよね。あれはハッタリだとすぐにわかったよ。いままでエリアーナをずっと見ていたんだから、様子がおかしかったらすぐにわかるよ。あの時は目が泳いでいた」
「そ、そんなに目が泳いでいましたか?」
「すごくね。エリアーナは真面目だから、基本、嘘をつくのが苦手だよね」
アーサシュベルト殿下がわたしの左手首を掴まれグッと引っ張られると、わたしを殿下に引き寄せられ肩を抱かれた。
「お嬢様方、日頃からエリアーナのために協力をありがとう。エリアーナは本当に良い友人に恵まれている。僕からも心からお礼を言うよ。これからもエリアーナをよろしくね」
わたしの友達たちにそれはそれは眩しい春の殿下仕様の微笑みを向けられ、ちょっぴり嫌味を言われているのに友達たちはあっけなく殿下に骨抜きにされる。
「エリアーナをちょっと借りるね。心配はいらないよ」
「殿下、承知しました。エリアーナをよろしくお願いします」
「みんな、ちょっと!!」
う、売られた…
友達が寄ってきて、コソッと耳打ちしてくる。
「エリアーナ、悪役令嬢はここで「私に何の用事があって?」とか言って、高飛車な態度をとるのよ。悪役令嬢回避するにはここは大人しく殿下について行きなさい」
「ええ!そ、そういうものなの?仕方ないわね…わかったわ。そうしてみる」
友達の提案に渋々頷く。
友達とそこで別れ、アーサシュベルト殿下に手を繋がれて、引っ張られるように移動し馬車に乗せられる。
「どちらに行かれるのですか?わたし、家の者に伝えておかないと」
「もう伝えてあるから大丈夫だよ」
いつにも増して用意周到な気がする。
殿下と目と目が合う。
キャロル嬢とはどうなっていますか?
すごく聞きたいのにその一言が出てこなくて、なにも喋れない。
馬車の中でしばらく沈黙が続く。
「エリアーナ、そっちに行っても?」
向かい合って座っていたので、殿下は横に来たいらしい。
「殿下、どうぞ」
「…アッシュがいい」
「それは…」
殿下とは距離を置きたいと思っているいまの気持ちで殿下を名前呼びする気にはなれない。
俯いて膝にある自分の手を見つめる。
「俺の名前すら呼ぶ気にならない?」
まるでわたしの心を見透かしたような発言に思わず殿下を見てしまった。
「ようやくエリアーナと目が合った。やっと君の視界に俺が映っているよね」
殿下がそういうとこちら側に移動してきた。
「ずっと、俺を避けていたよね」
バレてる。
「原因はキャロル嬢かな?」
その時、タイミング悪く目的地に着いたようで、従者から声をかけられる。
大きな建物の前でよく知っているところだった。
「殿下、ここ…王立図書館ですよね」