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留学期間1週間、その半分が過ぎようとしている夜のこと。

「あ。」

ルーティーンの一環で水難救助の復習を一緒にしていた冴子の前歯が数本抜けた。

「そんな一気に抜けるんだ。」

「そうなの。昨日顎の強化で船かじったから消耗が激しかったし。」

「クッキーみたいに砕けてたもんな、さすが生物界No.2の顎力。どれくらいで新しい歯になるんだ??」

「この本数だと2~3日…。」

言ってる間にさらに抜ける。

「これで生え揃う日数が10日に伸びた。ごめん、今日はこれでおしまいにしていいかな。」

「分かった。拾うの手伝っていいか??ちょっと触ってみたくて。」

「私ので良ければ…。」

「すげー尖ってる!!かっけーな!!」

「切島君の歯もギザギザしてカッコいいよ。個性で歯も硬くなって、顎力はどうなるの??」

「変わらないよ。」

「そうなんだ。」

「物を噛み砕けたとしても俺の歯は生え変わらないし、解除したあと絶対痛いと思う。」

「そっか。痛いのは嫌だよね。」

集め終わり、冴子は専用のケースに歯を入れた。

「じゃあまた明日、おやすみ。」

「うん。おやすみ。」

寮に戻り、それぞれの時間を過ごすことに。

「(はぁーダメだ!!切島君の腕かじりたい!!)」

骨の形をした特製の歯固めを噛みながら、ベッドに横たわる。

「(切島君イイ匂いする。水中だと特に…!!)」

電気ショックを受けたように飛び起きる。

「あーだめだ。意識しちゃうー!!」

勢い余って噛んだ歯固めが粉砕してしまった。

「はぁーっ…!!」

とにかく寝ることに集中しようと目を閉じた。

翌朝。

「鮫島さんおはよ!!そのマスクいいね!!」

「おはよ切島君。あれからまた抜けたから着けてるの、歯がない顔見られたくなくて。」

昨日まで気にしてなかったが。

「(距離近いな!?)」

向かい合って朝食を食べるがその事が頭を巡り、全く味がしない。それはそうと。

「切島君、私サポート科にいく用事あるんだけど、良かったら行ってみない??」

「行く!!」

サポート科に向かいながら。

「いつも付けてるスリンガーの修理頼んでるのか??」

「いや、歯固めも作ってもらってて。それが砕けちゃったから、新しいの作ってもらおうと。」

紙袋の中身を見せる。

「歯固め??こりゃまた、見事に粉々。」

「歯が生えるまでのムズムズ感をこれでまぎらわすんだ。」

サポート科の生徒に渡し、改良の話をしている間、切島は他の生徒に囲まれて個性を披露していた。それから教室へ向かいながら。

「今日の訓練は大がかりだよ。密輸船の制圧訓練、船をぶつけあったりの肉弾戦よ。」

「マジか!!気ぃ引き締めとくわ!!」

そして訓練の時間。ヴィランとヒーローに別れることに、冴子と切島もここで初めて別行動を取ることとなった。

「すげー!!」

ヴィラン役の切島は海中からの大ジャンプで船に乗り込んできた冴子に思わず見とれる。

「噛みちぎられないよう用心しな!!」

右腕装備のシールドで攻撃を受け流しながら、制圧していく。

「最後は君だけだ!!」

切島と戦闘が始まろうとした時。

「うおっ!?」

「鋭児郎君!!」

ヒーロー役を振り落とすのと船をぶつけるので舵を切った勢いで切島が転落する。

「大丈夫!?」

すかさず冴子も飛び込んで、後ろから抱えて浮上する。

「なんとか…!!」

「っ!?だれか浮き輪投げて!!」

密着していることが恥ずかしくなって、周りに助けを求める冴子。切島は浮き輪ごと無事に回収された。

その夜ルーティーンをしながら。

「(今日は他の子に捕まっちゃったなぁ。)」

ひたすらプールを漂う。ブロックに微かに残る切島の匂いに思いを寄せる。

「(やってること変態と同じ!!)」

早々に切り上げ寮に戻ると、お風呂上がりの切島と遭遇。

「おかえり。」

「ただいま…。」

訓練の時のこと、切島も意識したのか少し目線を下げ。

「あの時、名前呼んだ??」

「ごめん、咄嗟に呼んじゃった。」

「いやその、ちょっと距離が縮まった気がして嬉しかった…。」

「(その距離は友達として!?異性として!?)」

冴子の感情のバロメーターが振り切れた。

「鋭児郎君…!!」

「何…??」

「腕かじってもいい??」

「え゛っ!?…噛みちぎられない程度なら…。」

その言葉で冴子は完全に恋に落ちてしまった…。

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