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09/15
kz side
俺は、今日死ぬ。
それは変えられる訳でもなく、最初から決まっていたことだ。
なんでそんなに冷静かって、もうどうしようもないからだよ。
変わることの無い運命。
変えてはいけない世界の決まり。
なら、最期まで笑顔でいる方がよっぽどいい。
みんなに心配、かけたくないしな。
───この強がりさえも、本当にできたら良かったのに。
fu side
俺の昨日の憶測が正しかった場合、kzの心は大丈夫なのだろうか。
ただ、自分の死を待つだけ。
それがどんなに辛いことなのだろうか、
俺はそれをわかってやれない。
だけど、この気持ちは絶対に伝えるからな。
数十分後、俺は病院に着いた。
kzの病室の前にはrmがいた。
きっとrmもわかっているんだろう。
kzが、どれだけ完璧な仮面を被っているのか。
普段からkzはそうだった。
優しくて、正義感の強い人。
だからこそ、俺たちを不安にさせないようにしてくれているんだろう。
ただ、俺たちはその笑顔を見る度、胸が苦しくなる。
「kzは自分の気持ちを押し殺してまで、
みんなに心配をかけないようにしてるんじゃないか」
「ずっと、ひとりで戦っているんじゃないか」
だから、最期くらいはありのままの君でいて欲しい。
俺たちを頼って欲しい。
最年長だからって、年下に甘えてはいけない訳じゃない。
みんなに不安をかけないようにしなければいけない理由にもならない。
むしろ、甘えたり、不安をかけながらも笑い合ったりするのが、
”自由”ってものだと俺は思う。
俺は、覚悟を決めて病室へと足を踏み入れた。
rmも、1歩を踏み出した。
目の前にあったのは、昨日とほとんど変わらない病室の景色。
ただひとつ変わっていたのは、外の天気だ。
眩しいほどの光がカーテンから漏れ出す。
その光に照らされる君の髪がとても綺麗だった。
この光景を目に焼き付けたい。そう思った。
それでも、どれだけ君を描いたって、君は消えていなくなってしまう。
思い出の隅にしまっておくだけでもいいから。
───君の居た証が欲しい。
rm side
kzの病室の前でずっと立ち止まってた俺も、fuの後に続いた。
今日はなぜか儚さを纏っているkz。
これが人間の美しさというやつなんだろうな。
今すぐにでも消えてなくなってしまいそうなほど、透明で綺麗だった。
kz「あれ、fuたち来てたんだ。気づかなかったニコッ」
なんで、なんで笑ってられるんだよ…
kzはそういうところだ。
最年長だからって心配かけないようにしてるんだ。
でも、kzの綺麗な笑顔も、俺らには要らない。
ただ、kzが生きててくれれば、それだけで十分。
だからさ、居なくなんないでくれよ。
fu「syuはあとから来るってさ、」
kz「良かった〜」
すると、fuが紙のようなものを出した。
fu「手紙書いてきたんだけど、読んでくれる?」
kz「え、読みたい…!」
fu「はい、」
fuがkzに手紙を手渡した。
rm「俺も聞きたい!」
kz「じゃあ、音読する!」
それから、kzは音読をはじめた。
┌──────────────────┐
│kzへ │
│ │
│ いつもありがとう │
│ 知ってたかもしれないけど、 │
│最後まで読んでよ? │
│ 君のことがずっと好きだった │
│ もし、こんな俺で良ければ、 │
│付き合ってほしいです │
│ もちろん、kzは彼女だけど笑 │
│ 俺さ、頼りないかもしれないけれど │
│kzのことは誰よりもわかってるつもり │
│ お返事待ってるね │
│ │
│f uより │
└──────────────────┘
短いが、kzへの愛を最大限に詰め込んだ立派な恋文だ。
kzの瞳からは、大粒の涙がこぼれた。
fu「お返事、欲しいな…」
kz「ッう、こんな俺で良ければッ…グスッ」
そして、fuがkzを抱きしめた。
fu「ありがとッ!大好きだよ…」
どうしよう。
感動の雰囲気なのはわかるが、俺はどうすればいいんだろう。
とても気まずい…
とりあえず、2人の頭を撫でてやった。
fu「へッ?///rm…?」
kz「んぅ…?//」
2人とも照れてしまった。
やばい。これはもっと気まずくなるやつだ。
rm「俺ちょっと飲み物買ってくる〜!ε=(((((ノ・ω・)ノ」
fu side
kz「行っちゃった…」
fu「びっくりしたぁ…/」
急にrmが撫でてくるなんて思わなかった…///
kz「改めて、よろしくね…? //」
((ちょっと赤面で控えめなの可愛いな…
fu「よろしくね…! 」
───絶対に後悔なんてさせないから。
syu side
俺は今、kzの病室に向かっている。
すると、自動販売機の前にrmが居た 。
syu「あれ、rm?ここで何してるの?」
rm「いや、飲み物買いに行こうと思ってさ〜」
syu「じゃあ俺、kzの部屋行ってくるね」
rm「気をつけてな〜」
ん?気をつけて?
何があったんだ…?
念の為、俺は静かに病室に入った。
病室に入ると、fuとkzが楽しそうに話していた。
fu「でさでさw〜〜〜?」
kz「え?w〜〜~w」
───もう二度と、この光景を見られないかもしれない。
笑いながら話すfuも、それを笑顔で聞いてくれるkzも。
時間が止められたら、どれだけ良かったんだろう、
なんて、馬鹿だよな。
人は死んでしまう。いとも簡単に。
俺の弟だってそうだった。
ただ、それが人の美しさなのかもしれない。
散るからこそ、美しく咲ける。
散ることも美しさなのかもしれないな。
fu「あ!syuじゃん!」
kz「気づかなかったw」
syu「めっちゃ静かに入ってきたからね」
fu「w」
kz「というか、rmに会わなかった?
飲み物買ってくるって言って、もう10分くらい経つんだけど…」
syu「あ〜、会ったよ、なんか自動販売機の前で立ち止まってた」
fu「あいつ何してるんだ…」
syu「おにぎり持ってきたけど、fu食べる?」
fu「え〜!美味そ〜!」
kz「俺も食べた〜い!」
その後、rmも戻ってきて、 みんなで楽しく過ごした。
夕方になって、俺は帰ろうとしたんだけど…
kz「待って、行かないで…」
kzが引き止めてくる。
…なんでだ?
理由も分からないまま、俺は部屋の椅子に座った。
すると、
kz「ッッ、ゲホッゴホッゲホッゴポッ」
kzが発作を起こした。
その赤が、恐怖心を駆り立てるんだ。
俺は咄嗟にナースコールを押した、
fu「kz!」
kz「…ケホッ、ゴホッ、fu…ごめッゲホッ」
fu「喋らなくていいから!」
kz「…待ッて、俺、ゲホッもうッダメッだからゲホッ」
rmは黙り込んで拳を握りしめている。
kz「俺ん家ッの、ゲホッ、2階の、南のゲホッ部屋の机の上…ゴポッ」
fuは、深く頷いた。
kz「大ッゲホッ好きだよッ、ゲホッみんなッ」
fu「kz…」
rm「ッッ…」
syu「ッ…」
kz「またッゲホッね…」
そして、kzは眠りについた。
もう二度と、起きることのない眠りに。
fu「kz…!kzッ!ぁぁ…」
rm「ッッ、嫌だッ…」
syu「ッ、また俺は守れなかった…」
それより後のことは、もう覚えていない。
rm side
kzが死んだ。
理解できなかった。
kzが死んだなんて、嘘に決まってる。
昨日まで…いや、今日も笑顔で笑いあっていた仲間だぞ。
人とは、なんて脆いんだろう。
すぐに消えて居なくなってしまう。
たとえそれを美しいというのなら、美しさなんて要らない。
泥だらけでもいい。
ただ、笑い合える仲間さえいればいいだけなのに…
fu side
kzは眠った。
俺は、決して覚めない、永遠の夢を見ている気分だった。
現実とは、厳しいものだ。
数分前まで楽しく話していた人が、急にいなくなるなんて、
俺は、もう”このまま生きられるんじゃないか”と思っていた。
あんなに元気だったから。
やがて医師が到着したけれど、もう遅い。
ただ、こんなことを思う俺は馬鹿なのかもしれない。
綺麗だ。本当に綺麗なんだ。
白いベッドの上で眠る君が。
───「またね」
君が最期に言った言葉。
君は、なんて優しい人なんだろう。
「また会えるように」という願いを込めてくれたんだろうな。
あの数十秒で、あそこまで言葉を選んで…
伝えたいことを伝えれる限り、言葉にしたんだ。
それがどれだけ難しいことか、俺にはわかる。
手紙と実際に言うのとでは違うけどな。
それから家に帰ったけれど、いまだに信じられない。
ご飯も食べずに机と向かい合う。
kzに手紙を書いた。
震える手も、今は関係ない。
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kzへ
よく頑張ったな。
本当はずっと、死ぬ日がわかってたんだろ?
ひとりで恐怖と戦って、怖かったよな、辛かったよな、
ごめんな、kz。
でも、こんな暗い顔してたら、kzは怒りそうだな…
君との約束、守れなかった。ごめん。
でも、これは確かなこと。
愛してるよ、kz。
おやすみ。
fuより
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そして俺は、泣いた。
何分も、何十分も、何時間も。
我慢できなかった。
fu「kzが居なくなって、寂しくないわけないだろ…」
そして俺は、いつの間にか眠りについていた。
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