いままで歩いてきた通路の遥か遠くに、あのテレビ頭が現れた……。頑丈そうな体をして、片手にハンマー。頭部には32インチのテレビが乗っていて、砂嵐を映している。
「ひっ、あいつだ!」
私はあらん限りの震える声を振り絞った。
慌てて片手でライフルを構えようとして、その拍子に携帯電話が地面に派手に落ちた。角田と渡部も振り返り、声にならない悲鳴を上げる。テレビ頭は私たちに向かって猛スピードで迫り来る。
私はライフルを片手で構えて闇雲に一発撃つ。パーンと破裂音が辺りに響く。突進するテレビ頭は一瞬よろけるが、その巨体が更にスピードを上げて迫ってきた。
「駄目だ! 逃げましょう!」
渡部が叫んだ。
私たちが散り散りに逃げようとした。
その瞬間。
「大丈夫! こっちよ!」
呉林が、少し先の作業場の扉を開け放った。
「赤羽さん! そのライフルはもう弾切れなの! 早くこっちへ逃げて!」
不思議な力を持つ呉林の大声を、聞いた私たちは真っ青になり、作業場へと走り出した。
「こっちへ逃げましょう!」
必死で私たちはその作業場へと、そう叫んでいる呉林の後を追った。
テレビ頭が物凄いスピードで走って来る。砂嵐の音が素早く近づいてきた。
作業場は裸電球が所狭しとぶら下がり、その明かりで部屋が広く感じられた。卓上には複数のミシンやプレス機が置いてあり、一番奥にはスチール製の扉の倉庫があった。広い倉庫には棚に置いてある複数のミシンやダンボール箱が山積みされ、色々な用途のある金属製の棒や頑丈なロープなどがある。
呉林は私たちを作業場の倉庫へと誘導する。
テレビ頭が作業場の扉を派手に破壊して迫り来る。
「みんな! もうすぐよ! 頑張って!」
呉林の意味の解らない励ましを受けて、みんなはただ呼吸を乱して、闇雲に奥行きのある倉庫の中へと体を押し込もうとする。その拍子にダンボール箱が潰れ、金属製の棒がむき出した。5人が非難するとスチール製のドアを呉林が閉める。
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