コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
優里視点
俺が星崎の異変ーーーいや『隠し事』に気づいたのは、
本当に偶然だった。
極限までオーラというか気配を消していたために、
俺は全く気づかなかったのだが、
スタッフの一人が俺とぶつかった。
「すいません!」
「いや⋯いいよ。
そっちは大丈夫?」
「は、
はい」
丁度その時に隣を彼が歩いていたのだ。
普段はかけないメガネをかけていたこともあり、
雰囲気はまるきり別人だった。
完全に地味な裏方スタッフに溶け込んでいた。
ただすれ違った時にうねりがひどい癖っ毛の彼に、
俺が勧めた椿オイルの匂いがして気づいたほどだ。
(え?
星崎ってこんな地味だったか?)
そのまま二人は機材を運ぶために、
保管庫に向かって行くのを俺は思わず追いかけた。
たまたま聞いてしまったのだ。
「何か⋯ごめんね?
うちの社長のせいでこんな重労働とか、
本当は女の子にはさせたくないんだけどさ」
「みんなTASUKUさんのせいじゃないって分かってますから、
謝らないでくださいよ。
私も一緒に戦いますから!」
ん?
どう言うことだ。
俺が会話から読み取れたのは、
二人の共通の敵は社長だと言うこと、
スタッフには過重労働を強いられているらしいこと、
その負担を減らすために星崎が裏方業務をサポートしてることなどだ。
何で?
どうして俺を頼らないんだ。
彼はどんなことも自分で抱え込んで解決させてしまう。
もしも一人では抱えきれない問題が起こればーーーーー?
仮でも良からぬことを想像してしまう。
そうすれば一番付き合いの長い俺を頼るような気がした。
初めて隠し事に気付いた時から気づかないフリをしながら、
俺は少しずつ計画だけはしていた。
でも実行にはうつせなかった。
星崎に危害を加えたくないと言う気持ちが、
俺の中でブレーキをかけていたからだ。
しかし、
肝心のブレーキは今はもう利かない。
藤澤から彼を取り戻す。
そのためなら何でもする気だ。
黒い感情が隠しきれないほどに俺の中で、
破裂しそうなほど膨張していく。
これはうまく隠そう。
瑠璃夜は普段鈍くても、
相手からの敵意には誰よりも敏感だ。
星崎に勘づかれてしまえば、
この計画は頓挫してしまう。
「今日もよろしくお願いします」
俺が現場入りするとすでに、
バラエティ番組のセットは完璧に組まれており、
入念に不備がないか徹底された確認作業を彼が行なっているところだった。
「あ⋯優里さん入りました。
スタンバイお願いします!」
よく通る彼の声が現場に響くと緊張感が高まる。
彼がその空気を作り出してていた。
収録が始まり、
俺はいくつかの質問に答えていく。
機材トラブルや撮り直しなどもほとんどなく、
順調に進行して無事に終わる。
「優里さん、
お疲れ様でした!」
愛想のいい笑顔で彼が俺に話しかける。
この表情を藤澤にも見せているのか?
そう思うと好きだったはずの笑顔すら、
嫌いになりそうだった。
俺だけに見せる表情じゃないんだよな。
分かってはいてもどうしても認めたくはなかった。
そして俺に近づいてきた星崎を見て、
もう一つの認めたくないことが発覚する。
彼の首筋に赤い斑点がくっきりと視界内に入った。
キスマークだ。
(は?
もう藤澤に抱かれたってこと?)
その瞬間に何かが壊れた。
「ちょっと話したいことあるんだけどいい?」
「はい?
いいですよ」
俺のものにしたい衝動を必死に抑えながら、
空き部屋に彼を連れ込んだ。
何の警戒を示さない彼の方を振り返って、
壁側に追い込むと首筋に躊躇いなく俺は噛みついた。
ガリッ
「いぃっ!?」
彼は苦痛で表情が歪む。
抵抗はしても突き飛ばしはしない彼の甘さに、
優越感を感じる。
ああ、
俺って狂ってるな。
狂おしいほどに彼を愛しているのにどうして伝わらないのか。
「ーーーーー!」
星崎が何か叫ぶ。
ポタッ
え?
涙?
何でだ?
「優里さん!!!」
星崎が必死に俺の名前を叫ぶと、
力任せなほどに強く俺を抱きしめた。
何でこんなこと考えてるのに優しいんだよ。
俺の中でこの処理しきれない感情に、
本当は勘づいているんじゃないのか?
気づいてないならどうして、
俺よりも辛そうな顔をしているんだよ。
俺の口内は星崎に噛みついた時だと思うが、
血の味やら、
涙の味やらが混じって、
なんとも変な味がした。
不快なはずなのに、
星崎の腕の中は安心できた。
雫騎の雑談コーナー
はい!
いかがでしょうかね?
つまらないかもしれませんが、
嫉妬に狂った優里さんがついにいたしちゃいましたなって回ですわ。
それではサクッと本編に行きましょうかね。
社長との関係性があまり良好なものではなく、
ことごとく嫌がらせを受けいた星崎ですが、
現場被り多い優里さんに心配させまい!と強がって、
そのことを隠していた。
でも実は優里さんには筒抜けだったんです。
さらに嫌がらせを悪用して自分だけを頼らせようと、
優里さんが裏で画策していることも知らない星崎。
さらにキスマークで優里さんが完全暴走するも、
星崎がそれを止めるんですね。
なんか一気に話盛りすぎたかな?
まあ⋯いいや。
楽しんでもらえればね。
アンチさえ来なければいっか。
ちなみに続きは第24話の「疼き」にて、
放置された藤澤さんの回になるため、
少し時系列を遡ることになります。
では次回もお楽しみに〜♪