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リクとアイビーは、ひたすら曲がりくねった薄暗い回廊を進んでいた。
壁はひび割れ、ところどころから微かな光が漏れている。
そんな中、二人の視線の先にひときわ古びた扉が現れた。
木目は擦り切れ、錆びた金具が扉の隅でかすかに光っている。
扉の中央には小さな表札が掛けられており、そこにはぼんやりと光る文字でこう書かれていた。
――歪み樹海
Twist Jungle
リクはその文字をじっと見つめ、ゆっくりと息を吐いた。
「ここが、迷宮の次のエリアか……」
アイビーは無言で鉄パイプを強く握り締めた。
二人は静かに、その扉を開ける決意を固めていた。
リクがゆっくりと扉を押し開けると、きしむ音が回廊に響いた。
目の前に広がったのは、今までの薄暗い回廊とはまるで違う世界。
無数の木々がねじれ、絡まり合い、空を覆うように伸びていた。
その樹海はどこまでも続き、先が見えない。
木の幹は異様な色彩を放ち、時折風ともつかぬ音がざわめく。
リクは息を呑み、アイビーと顔を見合わせた。
「これが……歪み樹海か」
アイビーは鉄パイプをしっかり握りしめ、一歩踏み出した。
リクは目を輝かせてその光景を見渡した。
「すごい…こんな植物、初めて見る。まるで生きてるみたいだ!」
彼は興奮を隠せず、そっと葉に触れてみる。
「どうしてこんな形になったんだろう…科学的に解明したいな」
アイビーはそんなリクを少し呆れたように見つめながらも、彼の好奇心にどこか安心感を覚えていた。
「まあ、夢中になるのもわかるけど、気をつけてね」
しかしリクは夢中すぎて、その声がほとんど耳に入っていなかった。
葉の一枚一枚、幹の細かなねじれ具合に目を奪われ、まるで時間が止まったかのように動かない。
しかし、足元の地面がわずかにギシギシと軋み始める。
アイビーはその不穏な音にハッとし、リクの肩を軽く叩いた。
「リク、足元…何か変だよ!」
だがリクは夢中で振り向くこともなく、ただ植物に見入ったままだった。
その時、ゆっくりと樹海の影から、何かが静かに蠢き始めていた。
葉の一枚一枚、幹の細かなねじれ具合に目を奪われ、まるで時間が止まったかのように動かない。
しかし、足元の地面がわずかにギシギシと軋み始める。
アイビーはその不穏な音にハッとし、リクの肩を軽く叩いた。
「リク、足元…何か変だよ!」
だがリクは夢中で振り向くこともなく、ただ植物に見入ったままだった。
その時、ゆっくりと樹海の影から、何かが静かに蠢き始めていた。
「…え?」と振り返る瞬間、冷たい感触が足首を締めつけた。
頑丈でねじれたツタが、まるで生きているかのようにリクの足首を絡め取っていたのだ。
「くっ……動けない!」
リクは必死にもがこうとするが、ツタは締まりをゆるめる気配を見せなかった。
アイビーは慌てて駆け寄り、鉄パイプを握りしめて叫んだ。
「リク、待ってて!すぐに助けるから!」
アイビーが必死にパイプを振り下ろそうとしたその瞬間、ツタは素早く動いた。
リクの足首を締め付けたまま、さらに絡みついて彼の身体を持ち上げ始める。
「うっ……!」
リクは空中にぶら下がるような状態になり、もがこうにも自由がきかなかった。
アイビーは一瞬ひるんだが、すぐに決意を固めてパイプを強く握り直した。
「リク、落ち着いて!絶対に助けるから!」
リクはぶら下がりながらも必死に周囲の植物を観察した。
「ツタって、普通は光合成のために葉に養分を送るけど……ここは異常だ」
「ツタの繊維は非常に丈夫だけど、内部の成長点を狙えば伸びる力を止められるはずだ」
リクは知識を頼りにツタの絡まる部分を見極め、アイビーに指示を出す。
「アイビー、あの絡まってる部分の節の辺りを狙って!」
アイビーは力強く鉄パイプを振り下ろし、ツタの成長点に打撃を加えた。
ツタは一瞬硬直し、その隙にリクは地面に降り立った。
「よし、これで少しは動きやすくなった」
アイビーもすかさずパイプを握り直し、リクの隣で構える。
「よし、今だ!全速力で逃げよう!」
二人は息を合わせて、ねじれた樹海の中を駆け出した。
背後からはまだツタのうねる音が聞こえるが、振り返らず前だけを見つめて走る。
濡れた土の匂いと、ひんやりした風が顔を撫でた。
「これで助かったね…」
リクは少し息を切らしながらも、ほっとした表情でアイビーを見る。
「うん、でも気を抜かないで。ここはまだまだ危険だよ」
二人は互いに目を合わせ、決意を新たにまた先へ進んだ。