この作品はいかがでしたか?
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「いっけなぁい!遅刻遅刻ぅ!」
そんな少女漫画めいた台詞を上げて、自転車をこぐ女子高生が一人。
煌華《おうか》は見知らぬ道を必死に自転車で走る……フリをしていた。
「え?わたし?」
キョトンとした顔をする。
「わたしはね、おうかって言うの!15歳!そして、今絶賛遅刻中!あぁ、わたしってホントドジ〜!早く行かないと〜!!」
急に自己紹介を始めた。少女漫画にありそうな。
これはその煌華という少女を中心に起こる物語。
◇◇◇
暫く漕いでいると、前に下見をしに行った学校前の交差点を発見。
(お、これはこれは少女漫画シチュエーションにぴったりの交差点がもう目の前に、うーん、誰かいるかな…)
目を瞑ってキョロキョロしてみる。
(あ、見える…いる!歩きの高校生!あ、おんなじ制服。道山くん…?いや、道倉くんだ!誰?よし、タイミング合わせて…バッチリ!えい!)
「うわぁ!」
盛大にぶつかってみる。自転車から衝撃で落ちたフリをしてみる。
「いてて…なんなのよ!ホントにもう……え?」
なんと──ぶつかった男は血を流しまくって死んでいた。
(え?え?え?…なんで倒れてんの?待って…これってヤバいやつ?ヤバいやつだよね?どうしよ…救急車?救急車だよな…電話しなきゃ)
携帯を取り出す。すると、重大なことに気づいてしまった。
(あれ?救急車って何番?110……は警察だよね…うーん199?…いや違うな……)
そんなことと葛藤してるうちに段々と男の血溜まりが広がっていく。
ヤバい!けど呼び方知らない!そんなことを内心叫んでいると、通りがかりのじじいが発狂した。
「うわぁぁあ!キミ、119番!早く!」
「それだ!」
「ん?」
ようやく分かった。さっすがわたし。なんて思いながら電話をかける。
「はい、消防署です。消防ですか?救急ですか?」
いきなり難題をぶつけられた。
「えっ…ええと、、、」
(消防は消えるのを防ぐ…救急は救うのを急ぐ…じゃあ救急は警察みたいな感じなのかな?なら消防だな。うん。絶対そう)
「消防です」
「分かりました。どこですか?」
ふと上を見ると電柱に貼り付けてある広告にお問い合わせはこちらと書いてある下に電話番号と土地の住所が書いてあった。
(絶対これだ!)
「丸味町4番地ですぅ!」
「分かりました、すぐ向かいます」
ところが、消防は20分経っても来なかった。
(どうなってんだよ…もう遅刻じゃねえかよ……)
男は瀕死状態に陥っていた。じじいが必死に手当をしていたが、もう持たないかもたれない。
だが、そんなことは煌華にはどうでもよかった。一刻も早く学校に向かいたかった。初日から自分のイメージを周りに崩されたくなかった。
そんなことを考えて苛立ちを募らせていると、もう一度電話がかかってきた。
「すみません、火事など起こってなかったのですが…」
「え?」
何故現場に着いている前提まで話が進んでいるのか。ていうか火事って言ったか?こっちは事故なのだが。
なんて不思議に思っていると、会話を聞いていたじじいが驚いた顔をして割り込んできた。
「火事?キミ、なんて言ったんだよ!」
「え、普通に消防で丸味町4番地ですって…」
「ここ丸味町じゃなくって嘉戸利町だよ!」
「ん!?マジで!?」
「…もうオレがやっとくから!あの目の前の学校でしょ!早くいきな!」
「!ありがとう!じじい!」
何とも幸運。男はイマイチ助けられなかったけど20分を付き添ってあげてたからもう助けてたって言っても過言ではないよね、なんて思いながら学校に着く。
もうクラスでの活動が始まっていそうだった。誰もいない中、クラスを確認して指定されたクラスへ行く。
表情筋を引き締め、声帯の準備をし、教室のドアを開ける。
「すみませぇん!今来ましたぁ!」
両手を前に出しあわあわと元気よく教壇の横へ行く。
先生は呆れつつも「おはようございます」と言ってくれた。
「全く初日なのに…何してて遅れたの?」
「人助けしてました!ちょっと事故っちゃって……」
「え!?大丈夫だったの?」
「ま、まあ!」
「…そう。ええと、谷口さんね。あそこの席だよ」
席に着く。指先を外側にし、少し上に上がってからバネのようにふわふわさせて座る。これが可愛いの王手。
「では、体育館へ行きます。着いてきてください」
こんなぶりっこな煌華、やっていけるのかっ!?
クラスは受け入れてくれるのかっ!?
続きは今度!
コメント
1件
wwww 続き待ってます