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第零章 プロローグ
切られてしまった桜から1つ出てきた新芽を揺らす風は、そのままの勢いで悠々と顔の周りを吹き抜けてゆく。
まだ肌寒い春の山を、色とりどりの屋根の住宅を見下ろしながら歩く。
そして気がつくと頂上に立っていた。ここに、きっと町で一番古いであろう建物が立っている。
私は、そこに配置された呼び鈴を無視して、戸から中に入った。カギは私も持っているのだ。
ダイニングに入ると、懐かしい匂いがした。なんの匂いかわからないけど、なんだか鼻の奥をつんとさす匂い。
1歩ずつ、奥へ進む。子供の時はいれてもらえなかった小部屋に入った。
戸を開けると、私が小さい頃にかいた絵などが、山ほど破られて置かれていた。クーのものはキレイだ。
私は、さらに奥へと進む。
「ギシ…」
はっとして下を見る。私はたった今きしんだ床を見た。床板が五枚ほど腐っていた。私はそこを、5回踏んだ。すると、下へ続く階段が出てきた。からくり仕掛けだ。
「ミシ…」
私の体重-27キロでも、この埃臭い階段は、一歩踏む度に音を立てた。私は(正直怖かったが)手すりを持たずに階段を降りる。手すりを触ると、ぼろぼろと木が崩れた。
長い階段を下り終えると、段ボール箱が何百と転がっていた。私は、それぞれのテープをナイフで裂いて、中を調べていく。本五百冊ほど、レコード十本、紙切れが百枚ほど入っていた。
本を全て読み終えると、既に二時間が経過していた。腕についた木製の時計は、午前5時を指していた。レコードはポシェットに入れ、帰ろうとしたとき、ある袋が目にとまった。開けると、いちばん古そうな本があった。息が少し浅くなる。本を持つ手がほんの少し震える。私が探し求めていたのは、きっとこれだ。
「D A R K N E S S」
一文字ずつ読んだ。
「うっ…」
足の先っぽから、ふくらはぎ、太もも、腹から、胸…手の先まで、冷たくなっていった気がした。
目を覚ますと、見覚えのある…はっきりと覚えている…不気味なあの部屋に来ていた。体は小さくなっていた。
これは、子供の頃の記憶か。
私はそこに浮いている。
「え、…?」
上から姉のクー(クレオ)が降ってきた。続いて、父のジェネシス、母のリリーも降ってきた。
そして、知らない男の子が二人降ってきた。私は、男の子がだれか知らない。クーも誰だろうという顔をしていた。ここには家族だけが降ってくるはずだ。これは…私の記憶じゃない。
その男の子達はあまり似ていなかった。
一人は金髪で瞳は薄い赤。くりくりした目は睫が長くて、可愛らしい。もう一人は髪は真っ黒で、細い目をしている。瞳は濃くも薄くもない赤色。
誰かが話し始めたとき、ちょうど意識がとんだ。
次に私の視界に映るのは、私自身だった。真っ白な空間にいる。横に父がいた。寝ていた。気づかれる前に、ここを、私は離れなければならない。きっと、こいつもだ。そう思ってもう一人の私に言った。
「お前は…誰だ。こんなところで、何をしているのだ。ここは、危ない。さっさと出ていけ。」
私は、もう一人の私に蹴飛ばされた。
「それだから誰も私を分かってくれない。誰もが私の手からボロボロこぼれ落ちていく。誰もここのは残ってくれない。人はみんな、愚かだけれども一番愚かなのは昔の私…お前だよ。」
愚か…
「私は間違えたつもりはない。さっさと出ていけ。」
私はそいつの方を見もせずに言った。
「人のことなんか気にかけるから、人に突き放されるんだよ!自分のことを考えてれば、独りにならなくてすんだのに!」
「それが間違っていると思えない!私はあくまで、darknessをこの世から消さなければならないだけで、それが私の使命なわけで、ほかを傷つけたりしたくは…」
ない、と言おうとしたところで、意識がとんだ。そしてさっまでのことが夢だと分かった。つまり私は、地下室にいた。いまのことで、私はいくつも違和感を感じた。でもダメだ、どうしてもよく分からない。でも…この本はきっと当たりだ。darknessと書かれた本を持ち、私は家を出た。するとリアムが待っていた。
「ゾラ!」
リアムが安心したように息を着いた。
「帰ろっか。」
と私がいうと、うん!と、リアムが笑った。