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コメント
1件
うわっ…まずタイトルと世界観からして既に泣かせに来てるやつじゃん…。ユウが元の世界に帰れるってなったときの葛藤とか、仲間に手紙を残すシーンとか、じわじわ来たよ。特にツノ太郎に手紙渡すところと、最後「子分ーーー!!!」のシーンで完全にやられたわ。ユウが自分で自分の過去を思い出せない違和感とか、後半の「僕に家族なんてあったっけ」の部分も怖くて続きが気になる…。この1話だけで世界観とキャラの心情がすごく丁寧に描かれてて、すごく引き込まれた。続きめっちゃ読みたい!
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ある日、ツイステッドワンダーランドは崩壊した。
鏡の間から、学園全体、それから賢者の島。そこから段々と、ある古代魔法は侵略を始め、最終的にその世界は枯れ葉のように朽ちていった。
僕はその場に立ち尽くし、涙を流した。
誰もいない、何もない、あるのは、崩壊した世界と、
こころに残る悲しみだった。
次こそは。
次こそは。と、僕は強く思った。
次がなかったとしたら。僕がつくればいい。生み出すんだ。
皆を、救うためには………。
僕が…やらなきゃいけないんだ…………!!!!
✧…✧…✧…✧…✧
全てはここから始まった
全ては私達が、彼らが、ヴィランズ達が、
最高のハッピーエンドを迎えるために___________。
✧…✧…✧
Chapter1 物語の終わりと始まり
最近、時々僕は、何か特別な、生命を感じることがあった。
二つの生命を。
エースやデュース達にも相談したが、寝ぼけているんじゃないかとか、気のせいじゃないかなど言われた。
だが、僕は確かに感じるのだ。
これは絶対に気のせいじゃない。確かに。
これは自分に大いに関わっていて、とても大切なものだと、手を取るように何故か分かった。
だけど、それが何なのか、明確なものは全く分からないままだった。
✧…✧
「あー…トレイン先生の授業ほんっっと眠くなるー…」
「えっと…xがこうで、Yがこうだから……つまり……なんだ……??」
エースは欠伸をしていて、デュースは分からない問題を解こうと必死になっている。
グリムは僕の肩に乗って眠そうにしている。
これが日常だった。
いつまでも続くと思っていた。
だが、ある時から、僕のその考えは甘かったのだと。気付いてしまった。
✧…✧
「おい、ユウ」
「…!?はい…!?」
突然クルーウェル先生に呼ばれ、僕は少し驚きつつも返事をした。
「…………学園長がお呼びだ」
その時のクルーウェル先生の顔は少し暗く、自分でも少し怖くなった。
「なになに?お前またなんかやらかした?」
「フナ!?オレ様の知らない所でまたなんかやったのか!?」
「えっ…いやぁ…多分ないとは思うけど…そうだったら…来世で会おう」
「まあ…面倒事また押し付けられてなきゃ良いんだけどな…」
「もうあんな面倒事はこりごりだしな」
僕は二人の言う事に苦笑した後、学園長の居る場所へ向かった。
✧…✧
学園長室につくと僕はドアをノックして、恐る恐る中へ入った。
「失礼します……。…急に呼び出してどうしたんですか?……学園長」
「ああ。よく来てくれましたね。ユウくん」
学園長は、僕に返した後、小さく深呼吸をして、口を開いた。
「実はですね…貴方の元の世界への帰り方が、わかったんですよ」
「………え……?」
✧…✧…✧
僕のなかで心拍数が上がった。
急に怖くなってしまった。
「それって…どういう……。」
震える声で聞いた僕に、学園長は俯きながら言った。
「驚いてしまうのも分かります。ですがね、ユウくん。これはどうしても仕方ないことなのですよ。それに、貴方も、帰りたいでしょう?元の世界へ。」
学園長の言葉に頷くことしかできなかった。
帰りたいことは帰りたい。
僕だって、いつまでもここ、ツイステッドワンダーランドにいるわけにはいかないのだ。
「話は以上です。…ああ。そういえば伝え忘れていました。元の世界へ帰れる鏡の入り口は今日含めあと1週間で閉じてしまいます。そのため、貴方がこの世界にいられるのは、あと1週間です。1週間後には儀式を済ませ、貴方は無事に元の世界に帰れますよ」
「あ、ありがとう…ございます…。」
「そして、あと大切なことを一つ。ツイステッドワンダーランドから貴方の元いた世界へ行けるのは一方通行です。生き来は残念ながらできません。この残された期間を、仲間と楽しく過ごしてくださいね。」
「はい。分かり、ました…。それでは失礼します」
僕はこみ上げてくる様々な感情を抱き、それを一生懸命に抑えながらそこを出て廊下を走った。
✧…✧
「あ、ユウー!んで、結局何だったわけ?」
暫く一人で廊下を歩いているといつもの2人と親分が寄ってきた。
「あー…いやっ、大したことなかったよ。ただゴーストカメラに収めてある写真を提示しただけ」
「っそ、それならよかったけど」
一瞬動揺するも、嘘をついて誤魔化した。
「本当かぁ〜?オメェー、すぐ一人でため込むからな」
グリムはデュースの肩からぴょんっと僕の肩に飛び移り、僕を近くで凝視した。
「何もなかったならいいんだ。だが、無理に溜め込むなよ。何かあったら言ってくれ!これでも僕はお前のマブだからな!」
デュースも相変わらずの優しさでそう言ってくれる。
「ありがとう…!」
僕は、こんなに良い人たちと、1週間以内にはもう…会えなくなるのか…。
考えた途端、涙腺が緩くなる。目元が熱くなり、涙を堪えるのが必至だった。
「どうかしたか?」
「あっ、ううん、目にゴミはいっちゃった」
✧…✧…✧…✧
オンボロ寮へ帰り、僕は自分のベッドにあがり、涙を流した。
泣きながら、僕は上から窓から見える大きな満月をじっと眺めた。
「僕は帰らなきゃなのか………。」
そう、呟いた。
「僕は元の世界に戻ってからどうしよう…」
………、あれ……?
僕は考えている最中、急に思考の行き止まりに辿り着いてしまった。
「僕って…………誰、だっけ………」
決して記憶喪失になったわけではない。
だが、何故かツイステッドワンダーランドに来る前の記憶がなに一つも思い出せないのだ。
おかしい…。
でも、僕は自分自信が元の世界に戻りたいと思っている。なのに…何故だろう……この矛盾は。
落ち着いて。
落ち着いて僕は親の顔を思い出そうと必死に頑張った。
「…、!なにか…見えた…気が…する……これは………」
だが、やっとの思いで辿り着いた、不明確で、ぼんやりとした記憶の中には、僕の母親らしき者は、二人いた。
鮮明ではないのだが、一人目は、大量の勉強の本だろうか。それを僕の前に置き、タイマーを設置していた。
二人目は、僕のことを抱き締めてくれていて、何故か暖かい気持ちになれた。
僕は冷静になって考えた。
僕は元の世界に帰りたいと思っていて、元の世界に何があるのかも、何故か知っている。なのに、深掘りしていくと、何故知っているのかがわからない。
僕には元の世界で生活をしたという鮮明な記憶がなかった。
名前は桜田優。それは分かる。
それは分かるのに。
矛盾が矛盾を呼び、またその矛盾が矛盾を呼ぶ。
意味がわからない。
この矛盾は…一体…。
「ふなぁ〜〜……それはオレ様のデラックスメンチカツサンドなんだゾ〜〜………」
考えていると、グリムの寝言で自分の世界から現実の世界へと引き戻される。
そっか…。
この世界から帰っちゃったら…僕は、グリムとお別れしなきゃいけないんだ。
前に約束したのに。
グリムが大魔法士になるまで、一番近くで見守ってあげるって…。約束したのに。
でも。
帰らなきゃいけないんだよね…。
僕は悲しさを胸に抱きながら、布団に潜り込み、無理矢理眠りについた。
✧…✧
「…………て」
誰かの声がする。
「………い……て」
女の子かな…?
「………き…づ……、て」
誰だろう。
弱々しい声だなぁ…。
なんか…僕に言ってる………?
「お願い……気づいて…!!」
✧…✧
バサッ!!
僕は飛び起きた。
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」
僕は手汗をびっしょりとかいていて、心臓がドクドクと速い音をたててなった。
「僕は…あの声は……?」
僕のなかで何かひっかかる。
急に怖くなる。
あの声が言っていた、「気づいて」、という意味は、一体何だったのだろうか。
「どうしたんだゾ?子分、顔色が悪いんだゾ」
「!……あっ…ううん、なんでもない…ちょっと怖い夢見ちゃっただけ」
グリムに心配されては駄目だと思い、咄嗟に僕は誤魔化した。
きっと、気の所為だと。ただの夢だと。自分に言い聞かせ、何故か込み上げてくる恐怖と不安を無理矢理沈ませた。
✧…✧…✧…✧
あの声の正体や言葉のわけもわからず、誰にも元の世界に帰れることになった。なんて言えないまま、日はどんどんと僕らを置いて進んでいった。
そして元の世界に帰らなければいけない日まであと2日まできてしまった。
そうだ。手紙を書こう。
ふと、その時思いついた。
皆に手紙を書こうと。別れの手紙を。
僕はシャーペンを持ち、沢山の封筒やらシールやらの手紙セットが入った四角い缶を取り出し、中を開けて中身を出した。
サラサラサラッと、一人一人に手紙を書いた。
エースへ。デュースへ。レオナ先輩へ。エペルへ。
ツノ太郎へ。イデア先輩へ。リリア先輩へ。ジャックへ。
オルトへ。トレイ先輩へ。アズール先輩へ。セベクへ。
何枚も、何枚も、描いている間、部屋は時計の針の音と、紙の上を走るシャーペンの音しかなかった。
✧
「かけた…。」
僕は3時間かけて描き終わった23通の手紙を机の上において、そのままベッドに力尽きて横たわる。
皆と僕の思い出が語られた手紙。
これを渡すのは僕が帰る日の前日だ。
つまり、明日…。
グリムの顔はなるべく見たくないかなぁ。悲しむ顔を見るとこっちもつらくなるし…。
エースにでも渡してもらおうっと。
僕は自然と出てきた涙をぬぐって、眠りについた。
✧…✧…✧
「……ぁ、……お願い……だ」
また、誰かが僕に何かを言っている。
今回は…男の人の…声?
「気づいて……、くれ……。」
何になんだろう…。
一体何になんだ……?
「……まえ……は…………して…る」
何を…してるんだ?
「お……え…は………こ……世界を…ル…、……プ……し……る」
途切れ途切れで、よくわからない。
でも、僕は声が出せない。
もう一度言って。とも、言えない。
その声は、次第に遠ざかっていって、僕を待ってはくれなかった。
✧…✧…✧
バサッッ!
また僕は布団から飛び起きた。
呼吸が苦しい。
何かに僕は気づかなければいけない。
大切なことを僕は忘れている気がする。
夢の声が言った最後の言葉。
一体、あの声は僕に何を伝えようとしていたのだろうか。
「おい子分!はやくしねぇーと学園に遅れるんだゾ!」
「あっ、ごめんごめんっ!今すぐ準備するね!」
僕は急いで昨日書いた23枚の手紙を鞄に詰め込んで、支度を済ませてグリムと共にオンボロ寮を出た。
✧…✧…✧
今日中に、この手紙を皆に渡さなければ。
でも、あまり騒ぎになられると困る。
まずは…やっぱり、エースたちかな。
✧
「あっ、エース!」
「おっ!ユウー!」
昼食の時間になったため食堂に行くと、エースの姿が見えたため、声をかけた。僕が手を振ると、エースもこちらへ手を振り返してくれる。エースの近くにデュースやジャック達もいるようだ。
丁度良い。
「………ねえ、これ、受け取ってくれないかな……?」
僕は皆へ昨夜書いた手紙を渡す。
手紙は、寮ごとに色が違い、ハーツラビュル寮は赤、サバナクロー寮は黄色、ポムフィオーレ寮は青色、と個人的な拘りで変えてある。
手紙を閉じるシールも、デュースだったらトランプのスペード、エペルだったら赤い林檎、と、一人一人少し違い、自分なりに思いを詰め込んだ。
「これは手紙?」
「なんだ?今さら急に」
「あっ、いや、たまにはいいかなってさ、…、!帰ったら、寮に帰ったら開けてね。絶対に寮に帰る前に開けちゃ駄目だよ」
首をかしげるジャック達に慌てて誤魔化しを入れる。
「なんでだ?」
「いーの!恥ずかしいからっ!」
僕は手紙を押し付けて、エースたちのいる席から走って逃げた。
次は…
あっ、あの席、2年生の皆がいる…。
奥の方でリドル先輩やフロイド先輩、シルバー先輩等の2年生達が喋りながら昼食をとっている様子を発見した。
僕はその席に向かう。
「あっ…あのっ…!」
「あ〜!小エビちゃんじゃん!」
「?ユウ、どうしたんだい?何か用があるのかい?」
「あっえっと……その…これを渡したくて…」
僕は恐る恐る手紙を鞄から取り出して、一通一通皆へ渡した。
「あはっ、なにこれぇ〜」
「どうしたんっスか?ユウくん、こんな急に。マドルでも入ってんスか〜?」
「ほんの気持ちですよっ…!ほらっ、いつもお世話になっているのでっ…!」
慌てる僕に全員首を傾げる。
「その気持ち、感謝して受け取ろう」
シルバー先輩はニコリと笑いながら僕へ礼を言う。
「おーっ!ありがとなっ!ユウ!これからもよろしくなっ!ところで、中身は何だ?!」
カリム先輩が封筒の中身を開けようとした時、僕は咄嗟に大きな声で「今みちゃ駄目ですっ!!!」と言ってしまった。
「おわっ!?なんだ!?急に大きな声な」
「?何故今見ては駄目なんだ?」
「あっ…その…ほら、やっぱり恥ずかしいじゃないですか…!?その場で見られるのはっ…!な、なので、ちゃんと寮に帰ってから読んでくださいねっ!」
僕は「それではっ!」と言い放ち素早くその場を去った。
「小エビちゃんどうしちゃったんだろーね」
「さあ…何か裏がありそうですね。」
「今度、優しい僕が是非相談にのって差し上げましょう」
✧
あとは3年生達に渡せれば完了だ。
ツノ太郎がいなかった場合探すのは大変だが、その場合はリリア先輩に渡してもらえばよい。
丁度椅子からレオナ先輩の耳がとび出ているのを見つけたため、そこへ向かう。
「あの…、すいません…。」
「あら、ユウじゃない、どうしたの?」
「おお!トリックスター!!私達に何か用かい?」
その場へ行ってみるとレオナ先輩だけではなく、ヴィル先輩やルーク先輩、リリア先輩などがいた。イデア先輩とツノ太郎の姿は相変わらずなかったが。
「実は皆さんに渡したいものがありまして…」
僕は手紙を取り出して一人一人に差し出した。
「えー!?なになに〜!?手紙?嬉し〜い!」
「わざわざありがとうな」
「いえいえ、ほんの気持ちですよ」
「……ユウ、なんでこんなものを今渡したの?」
ヴィル先輩の鋭い問いに僕は一瞬焦る。
「書きたい気分になったんですよ…!なんか、夜中にマジカメでそういう投稿が流れてきて、やってみようかな〜みたいな?」
慌てて誤魔化した僕を沢山の目が疑いながらこちらを見る。視線が痛い…。
「それは寮に帰ってから見てくださいね!必ずですよ!それでは僕はこれで失礼します…!」
僕はヴィル先輩達にとめられる声を無視してスタスタと歩いて食堂をあとにした。
✧…✧…✧…✧
「ユウ、あの子、何か事情を隠してそうね」
「ああ。いかにも何か隠してます風だな」
「また一人で抱え込んでないかしら…」
レオナやヴィル達は不安そうな顔を浮かべる。
「まあいいじゃろう、今はそっとしておいてやるのじゃ。」
リリアの言葉にヴィルが顔をしかめた。
「でも…」
「それでもじゃ。わしは彼奴の気持ちがちょいと分かる気がするのじゃ。そう焦るな。近いうち分かると思うぞ」
「?」
「まあ、寮に帰ったらその手紙の中身が見れるんじゃからそんなに心配せんでもよかろう」
「……まあ、それもそうね…。」
リリアは分かっていた。
話を盗み聞きしていたのではない。学園を離れることになった時の自分と照らし合わせた時に、ユウと重なる点があったからだ。
一足先に気付いてしまった分、胸に悲しみを宿しす時間が長くなってしまった。
「…………マレウスよ………。お主はユウとの別れを受け入れることはできるか…?」
✧…✧…✧…✧
取り敢えずほぼ全員に手紙を渡すことができた。
あとはイデア先輩とツノ太郎………
「あっ!!!リリア先輩にツノ太郎の手紙渡すの忘れてた………」
ヴィル先輩達の鋭い視線から一刻も早く逃げたいということで頭がいっぱいで忘れていた。
取り敢えず今は食事の時間が終わる前にイデア先輩のところに行こうと思い、イグニハイド寮へ急ぐ。
✧…✧…✧…✧
「ハァ……ハァ……ハァ……」
食堂から鏡舎までは遠かった。
息を切らしながらイグニハイドへ続く鏡の中へ入る。
✧
「あ、あれは…漫画で一億回は読んだことがある異世界から召喚され主人公として数々のバトルや冒険をする展開に陥ったオンボロ寮の監督生のユウだ……」
「何故拙者らの寮に…?」
「結構焦っているようだぞ…?」
相変わらず談話室には学園の食堂に行かずにブツブツと独り言を話しながらパソコンを開く者が大量にいて、その人たちは僕を見てあれこれ言っている。
イデア先輩の部屋ってこっちだよね…
相変わらず迷子になりやすいイグニハイド寮の中で僕はイデア先輩の部屋を記憶の限りに探す。
「あった!」
僕はイデア先輩がいる部屋をノックする。
イデア先輩の部屋だけではなく、イグニハイド寮生達の部屋は全て顔認証なため、気軽に出入りができない。
「………はい………って…ユウ氏……?????何故ここに??今はお昼時では、?何か用?」
「あっ、いえ…これを渡したくて来ました」
「?手紙?」
僕の差し出した手紙を見てイデア先輩は首を傾げる。
「は、はい………!!この手紙はオルトが帰ってきてから読んでください…!絶対ですよ!!」
「??あっ、はい……。って、えっ?それだけ??」
「?はい。それだけです。ではっ!」
「えちょっと待ってユウ氏!待ってわけわかんないんですけども??!!」
イデア先輩が呼びとめる前に僕は素早く廊下を駆けて談話室を抜け、イグニハイド寮から退散した。
✧…✧…✧
「………ったく…これだから自分勝手なNRC生は……、」
イデアは深く溜息をついた。
その時、目に入った青色の手紙を手に取る。
「………」
「……………」
「……………………」
「いや拙者はユウ氏を裏切りたいんじゃなくて??ただたんにオルトが帰ってからは推しイベ開催されるから走るし??読む時間ないから??仕方なく??読もうとしているだけですし…、??、」
「………ちょっとくらい………」
イデアは言い訳を加えて、白い骸骨のシールをとり、中を確認した。
(うわぁ~…結構沢山あるなぁ……)
ユウが自分へ書いてくれたと思うと少し嬉しくなる。
「えー……なになに〜……?」
ペラっと折りたたまれた手紙を広げた。
その内容に、イデアは絶句した。
そこに書いてあったのは、イデアへの別れの言葉と、思い出と、明日帰らなければいけないという事実だった。
「………………嘘………でしょ………?」
急に肩から力が抜ける。
悲しさがこみ上げてきた。
イデアは、その手紙を読み進め、涙を流して、部屋に一人うずくまった。
✧…✧…✧…✧
結局、ツノ太郎にだけ渡せていないまま夜になってしまった。グリムは朝渡す予定でいるため、グリムが眠る枕元に置けば大丈夫だ。
ツノ太郎だけ手紙を渡さないとまた拗ねられてしまうし、除け者にしているみたいな自分が少し嫌になるためどうしようか方法を考える。
その時、ピカッ、と窓が光ったような気がした。
まさか、と思い僕はオンボロ寮の廊下をかけて外へ走った。
「…!やっぱり…!ツノ太郎…!!!」
やはり、そこには月を眺めるツノ太郎の姿があった。
僕の声を聞いて振り向き笑顔を浮かべる。
「ああ、人の子よ」
「ツノ太郎、こんな時間にどうしたの?」
「なんだか少し嫌な予感がしてな。寮にいるのもなんだったから、ここ、唯一落ち着ける場所へ来たんだ。」
オンボロ寮の事を落ち着ける場所と認識してくれているのは自分的にも結構嬉しい。僕としても安心できる場所だし、思い出の詰まった場所だから。
でも、明日にはそんなオンボロ寮と僕はお別れをしなければならないのだ。
やはりあらためて考えると辛いことばかりだ。
「そうなんだ〜!…あっ!こういえばツノ太郎!ちょっと渡したいものがあってね」
「ほう、それは興味深いな」
ツノ太郎は嬉しそうな表情を浮かべる。
僕はそんなツノ太郎を直視することが辛くて目を逸らす。
「これ…!あげる!」
僕は薄緑色手紙をツノ太郎に渡した。
受け取ったツノ太郎は驚いた顔を浮かべた。
「これを、僕に…?」
「そう!寮に帰ってから読んでほしいんだけど…」
「ああ。お前が一生懸命書いた手紙、ありがたく受け取ろう。人の子よ。礼を言う。」
「フフッ、こちらこそ。今までありがとうございます」
「…?“今まで”、とは?」
僕の言い方にツノ太郎は疑問を覚えるが、僕は間違えました!ととぼける。
「ああ。もう夜が遅い。あまり帰るのが遅いとリリア達に怒られてしまう。これで僕は失礼するとしよう。」
「うん!また!ツノ太郎!」
「ああ。また今度。」
今度があれば良かったな。と、僕は悲しみを胸に抱いて、トボトボと暗闇の下を歩き、自分の部屋へ戻り、一人で泣いた。
いつまでも泣いた。泣き続けた。
それと同時に出てくる数々の皆との思い出が、僕を襲い、いつまでもいつまでも、僕の心を痛め続けた。
✧…✧…✧…✧
マレウスはその夜、鼻唄を歌いながら寮へ戻った。
ユウが元の世界へ帰る、なんて、その時は一ミリも考えもしなかった。
✧
「リリア、セベク、シルバー。ただいま戻ったぞ。」
「「若様!!!!!!!!/マレウス様!!!!」」
マレウスが帰った途端に談話室に響くセベクとシルバーの声。いつもマレウスが外出した後は必ず二人が名前を呼ぶが、どうやら二人の表情的に緊急らしい。
「ユ、ユウが………。ユウが………!!!」
涙を大量に流したセベクが叫んでいた。
「ユウに何があった?!」
咄嗟に問う。すると、後ろからリリアが暗い顔をしながらやってきた。
「マレウスよ。お主はその手紙を読んでいないな?」
「ああ。この手紙に何か隠されているのか?」
「……読んでみれば分かるのじゃ。一人、部屋で読むと良い。あやつがお主のために一生懸命書いた手紙じゃ。」
「……分かった。」
マレウスは少しの不安を抱きながら部屋へ帰った。
「ううっ……こんなこと……。だが、僕は…彼奴が元の世界へ帰れるようになったことを……。嬉しく…思う…。だが…!!…、だが…、!!」
「親父殿の時で、別れが……、こんなに…辛いものだとも…理解していたはずなのに……。こんなにも……。」
セベクもシルバーも、ユウと過ごしてきた思い出は沢山ある。たった一年間の間だけでも、十分、色々な思い出を作り上げられていた。
その思い出が大きければ大きいほど、辛さも倍になる。
泣き叫ぶ2人を、手紙を握りしめながら、涙目でリリアは見つめた。
誰もが、あのユウと別れることが辛く、苦しく、悲しいことだったのだ。
✧…✧…✧
「嘘だろ………ユウ………、そんな急に言われたって……。」
ハーツラビュルの談話室で涙をボロボロと流すデュースと、涙を堪えながらデュースを慰めるトレイとケイト。
リドルは部屋に籠りっきりだ。
そんな光景を、エースは只々見つめていた。
涙も流さずに、平然とした表情で。
「これで何通目だっけ」
エースはひとり言を呟いて軽く笑った。
早く終わりにしなくてはならない。
この物語を、最高の「ハッピーエンド」として終結させなければならない。
そこまでの道のりが
どれだけ遠かろうとも。
✧…✧…✧…✧…✧
「……もう時間がない…。一体どうすれば…。」
「もうこの世界線は無理なのかな…」
「いや…、諦めるにはまだ早い。チャンスはあと1回だ。だが、………あと1回で救えなければ…。」
「救えなければ……、俺達には…………ハッピーエンドは訪れない。」
✧…✧…✧…✧…✧
この声は夢なのだろうか。
前にも聞いたことある声だ。
僕と同い年くらいの女の子と男の子の声。
救えなければ、僕たちにハッピーエンドは訪れない…。それは一体、どういう意味なのだろうか。
ハッピーエンドとは、どういうことなのだろうか。
この声が言うチャンスとは何だろうか。チャンスはあと一回と言っていた。それが本当なら、内容は分からないが結構やばい状況なのではないか?
もしも、この声が夢じゃないとしたら、この声たちは、僕へ何を届けようとしているのだろうか。
違和感と矛盾と不明な事を沢山考えたせいで僕の頭はいっぱいになる。この声の謎と、僕の住んでいたはずの元の世界の居場所の謎の二つが僕の頭の中をぐるぐると回る。
明日僕は帰ることになる。
帰った時、僕は元の世界で暮らした記憶を思い出す事ができるのだろうか。戻った瞬間に記憶が鮮明に思い出せるとか、漫画とかではよくあることだ。きっと、思い出せるだろう。そう思い、自分を安心させて、明日の儀式に備えて眠りについた。
✧…✧…✧…✧…✧
そして、朝。
僕は早く起き、支度を済ませた。式典服に腕を通して、オンボロ寮を出る準備をした。
今日は普通なら学園が休みだ。だが僕の帰る儀式が夜から始まるため、学園に夜には必ず行かなければならない。
僕はグリ厶があの手紙を読む姿を見ていられないため、早くに式典服を来て、朝早くオンボロ寮を出ることにした。
胸が痛んだ。
皆でお泊り会もしたし、トランプゲームもした。作戦を練り合ったり、特訓をし合ったり、トレーニングをしたり、枕投げをしたり、馬鹿みたいに笑い合って楽しかった思い出も。
楽しい思い出も、辛い思いでも、悲しい思い出も、笑い合った思い出も。全てが詰まった僕の寮。
そんなオンボロ寮を離れるのは、胸が苦しかった。
時計は朝の5時をさしている。
深呼吸をして、僕はオンボロ寮から出た。
僕は、振り返ることなく、前へ進んだ。
✧…✧…✧…✧…✧
気付けば辺りは赤い夕焼けに包まれていた。
水色と赤オレンジ色が混じり合い、不思議で綺麗な色の空を生み出している。
もうすぐ学園に戻らなきゃな。
もう何時間歩いただろうか。
時を忘れていた。
僕は足をとめることなく歩き続けた。迷わずに、賢者の島中を。
たまに僕を探すデュースやジャック、セベクやエペル達の姿が見えた。僕はその姿をみても、気にせずに前へ前へ進んだ。逃げたり、走ったりすると、あり得ないほどの涙が出てくると分かっていたから。
不思議と足は疲れていなかった。バルガス先生に沢山鍛えられたんだもんな。と思いながら僕は小さく笑う。
僕は学園を目掛けて歩いた。
「ユウ!!!!!!!」
「!!」
その声に咄嗟に振り向いてしまった。
僕は驚いた。
式典服を着たツノ太郎が汗を垂らし、息を切らしながら立っていた。
「ツノ太郎…どうしてここに…?」
「ユウ………。学園中の人の子がお前を探していたぞ。」
「それは知ってるよ…。」
「知っているなら何故…お前はオンボロ寮から出ていったんだ。」
「それは…皆の姿を見たくなかったからだよ。僕は皆の姿を見ると…涙が出て…くる…か…らさ……。」
目から溢れ出てくる涙を僕は制御できなかった。
うわぁぁぁん!!!!と大きな声をあげて泣き叫んだ。
ツノ太郎はそんな僕を、優しく抱きしめてくれた。だが、ツノ太郎もツノ太郎で、僕の式典服を涙で濡らした。
✧…✧…✧…✧…✧
「全く…監くん。朝からどこへ行っていたのですか。」
学園に戻ると、学園長に朝からずっと帰ってこなかったことを叱られる。すいませんと謝ると、いいでしょう。と呟き、学園長はコツコツとヒールの音をならしながら向こうへと消えていった。
僕は式典が行われるまでの少しの時間、もうこの先二度とすることのないだろう式典のメイクをする。太いアイラインをひいて、黒いアイシャドウを塗れば完了だ。式典メイクは自分でも気に入っていて、自分でできるようにしたくて、メイクが苦手な僕でも練習してできるようになった。
最初はよくわからなくてヴィル先輩とかエースにやってもらってたっけな…。
懐かしさに浸りながら一人個室の椅子にもたれかかった。
「そういえば、学園に戻ってからグリ厶一度も見てないな。」
全員の姿は見えたのだが、グリムの姿だけがなかった。まあ、見たところで、辛くなるのは僕の方だから、顔は最後に合わせさえできればいいのだから。
僕は時間になったことに気付き、鏡の間に向かった。
✧…✧…✧…✧
鏡の間につくと、全員が暗い顔をしながら俯いていた。
中には泣いている人もいた。いや、殆んどの人が泣いていた。僕のことを嫌っていると思っていたクラスメイト達も、暗い顔をしたり、泣いていて、僕を一応はクラスメイトとして見てもらえていたんだな。と、謎に嬉しい気持ちが込み上げてくる。
「…全員揃いましたね」
学園長が杖と高いヒールの音を鳴らしながらやってくる。
そちらの方へ顔を向けた時、式典服を着たグリムが、クルーウェル先生の足元でうずくまっている姿を見つけた。
グリム________!!!
咄嗟に叫ぼうとしたが、彼の悲しむ姿をこれ以上見ては平常心を保てなくなると判断し、言葉をグッと飲み込んだ。
「それでは、これからユウくんが元の世界へ帰るための儀式をはじめます」
学園長が重い一言を、静かに言う。
それから、僕は大きな鏡の前に移動させられ、何年かけても僕には覚えきれないだろう長い長い呪文を数分間、学園長は僕へ向けて唱えた。
そして、呪文を最後まで言い終えた途端、僕の立つ真下に大きな魔法軸が現れる。
全身がゾワゾワし、恐ろしい感覚に襲われる。
すると、闇の鏡の顔が消え、誰かの手がこちらへ手を差し伸べてきた。
その手は人間とはかけ離れた白色をしていて、爪は長く鋭い。この手は不気味だ。
「さあ、この手を取るがよい」
闇の鏡が僕へ言う。
この手を取れと?と僕は少し引き気味になるが、元の世界に帰らなければ家族が心配してしまう。
僕は息を整えて、後ろを振り返る。
皆の僕への視線は、とても悲しそうな表情をしていた。
そんな彼らに、僕は大きく口を開いた。
「僕を、この学園に通わせてくれて、居場所をくれてありがとうございました!!!!!!」
勢いよくお辞儀をすると、涙があふれる。
僕は決心し、差し伸べられた不気味な手を取った。
その途端。
………あれ…?
…………僕に家族なんてもの、あったっけ。
急に心がギュッと締まった感覚がする。
脳が二つに割れそうな、気持ち悪い感覚。
もしかして、僕はこの世界に来て、元の世界の事を忘れているのかもしれない。
それで、今は思い出してるのかもしれない。
きっとそうだ。
そうだ。
そうじゃないと、僕はまるで………。
無から生まれた人間みたいになってしまう。
✧…✧…✧
僕はたまに考える。
僕には明確な過去の記憶がない。
思い出そうとしても思考の行き止まりに辿り着く。それ以上の記憶がない。僕は元の世界に帰りたいはずなのに、家に帰りたいはずなのに。
帰る場所が分からない。
よくよく考えれば僕はツイステッドワンダーランドで過ごした記憶しかない。
なのに、僕はそれに違和感なく今まで過ごしてきたんだ。
気持ち悪い。
それ以外の記憶がない。
気持ち悪い。気持ち悪い。怖い。怖い。
僕は本当に一体誰なんだ。
と。
元の世界に戻れば全て記憶が戻ってくるのかもしれない。
そう信じて、僕は不気味な手をさらに強く掴んだ。すると、僕はその手に強い力で引っ張られた。
「っ?!」
僕は段々と闇の鏡の中へ吸い込まれていく。
冷たく、ひんやりとした感覚。
段々と、眠く…なってくる。
「子分ーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」