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Chapter2 これは「彼ら」の物語だった。
式典場に響くグリムの声。
監督生のユウが帰った。
全員が泣き崩れた。
普段、泣いた姿を一切見せない者でさえ、ユウの元の世界への帰還には涙を流さない者はいなかった。
だが、一人。
ただ一人。涙を流さない者がいた。
それは、エース・トラッポラ。
彼は悲しい表情をすることも、絶望することもなかった。
何故なら、彼はあの「未来」を知っているから。
これから、この鏡の間が戦場へと変することを。
全て、最初から。
監督生がツイステッドワンダーランドという名の世界に来たときから。
「子分っ………オレ様、いやなんだゾ…子分なしじゃあ…オレ様は…大魔法師には…なれないんだゾ…」
クルーウェルの腕からゆっくりと降りて、ユウが吸い込まれた闇の鏡の前へ座り、泣き叫ぶ。
「子分…子分っ……」
ツイステッドワンダーランドにおいていかれた一匹の魔獣。
その姿が鏡の間に集まる彼らの心を更に痛めつける。
「子分…オレ様は…一人でどうすればいいんだ……?、、オレ様は、この学園にはもう入れなくなるのか?オレ様…また、あの寒い場所で、静かに眠らなきゃいけねーのか…?」
グリムの言葉に異変を感じた数人が顔を上げる。
「オレ様は…またあのこえーヤツに閉じ込められなきゃいけねーのか…?」
やはりなにかが少しおかしい。
全員が涙を拭い、闇の鏡の前に座り込むグリムの背中を不安そうに眺めた。
「オレ様…ひとりぼっちはもう嫌なんだゾ…、イヤだ、イヤだ…イヤダ…イヤダ…イヤダ…イヤダァァァァァァ!!!!!!!!!!!」
グリムが大声で叫んだ瞬間、ゴゴゴゴゴッッっと、凄まじい地響きが発生した。
それと共に、巨大な風圧が押し寄せてくる。
「っ!!!なんだ……?!!この凄まじい風圧はっ……!!!!」
リドルがなんとか氷の壁を作るが、一風圧によって一瞬で破壊されてしまった。
「物凄い魔力量だ……。これは……まさか、…!!!」
「ああ。マレウスよ。これは只事では済まされないぞ。これは神々の時代から存在する強力な古代魔法じゃ…!」
そのリリアの言葉に全員が絶句する。
「嘘…でしょ…?」
「ッチ…マジかよ…」
状況をなんとなく把握した寮長達がマジカルペンを構え、グリムを警戒する。
「グオァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」
いつものグリムの声ではない。
あの可愛らしい声ではなく、怪物のような、本物の大きな魔獣のような恐ろしい声に代わってしまった。
グリムの目からは黒い液体が流れ出ていた。
「これは………っ!!!まさか!!!!」
「総員!!!攻撃魔法の使用を許可!!!グリムくんを止めてください!!!」
学園長の真剣な声が鏡の間に響き渡る。
その瞬間、グリムの体は大きく変化した。
体は前の何十倍もの大きさになり、全長5メートル以上にもわたる。
耳の青い炎がグリムだと明確に表している。
目元には黒い網のような模様があり、首周りにはリドルの首輪のように、青い炎が覆っている。それだけではなく、まるでアズールのタコ足のようなゲソもついており、うねうねと不気味に動く。
グリムの体の周りにはタコ足と同じように動く蛇が。
手足は怪物のような鋭くなり、背中にはマレウスが前にドラゴン化したときに生えていた大きな羽がグリムにも同じように生えている。
ライオンのような格好でこちらを威嚇してくる。
「なんだ…、あれは本当にグリムなのか…?」
「あり得ない…どうして…彼がオーバーブロットを…??」
「まさかユウが元の世界に帰ったから……!!!?」
「っそ。せーかーい」
「っ???!!!」
この状況で冷静で余裕を持つ声に驚き、声の方向へ振り向く。
「エース…?」
その場の全員が固まる。
「この世界はもう駄目。グリムがオーバーブロットしたらもう終了なわけ。この世界で俺等に勝ち目はない。」
「エース!!?いきなりどうしたんだ?!!!」
「この状況でなにふざけたこと言ってんだべか!!!」
エペルやデュースの声も無視してエースは続けて話す。
「グリムはユウがいたことで古代魔法を封印できてた。だけどそのユウが帰ったら、グリムは制御するためのものがなくなった。それだけ。」
「エース、本当にキミはどうしたんだい!!!!?」
「俺は何回も何っっ回も未来を見てきた。この世界は99回目の世界線。その前の98回は全部失敗に終わってる。学園長の魔法も…。………次で100回目。俺等に101回目以降の希望はない。俺等に残されたチャンスはあと1回だけ。」
「コイツ…本当に何言ってやがる…狂ったのか…??」
「狂ってなんかいませんよ」
「っ?!学園長!?」
エースと同じく、冷静な表情を保った学園長がこちらへ歩いてくる。
グリムはまだ重い風圧と魔力を放ち続けている。
「エース・トラッポラくんはただ“気付いた”だけなんです。」
その言葉に背中に嫌な汗が伝う。
グリムのオーバーブロットと、学園長とエースの発言に驚きと恐怖が隠せない。
「グワァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」
「!」
グリムの声が更に大きくなる。
「………もう時間がない。これが最後のチャンスです。」
「知ってるよ、学園長」
「では、始めましょうか。」
「………クロウリー…何をするつもりだ」
「…なんだかとても嫌な予感がするわ…」
「奇遇だなぁ…。俺もだ。」
鏡の間にいる全員がマジカルペンを強く構える。
「全てはここから始まった」
「全てを振り出しに戻し、未来を改変する」
学園の周りに大量の光が集まる。
「これは最後の希望。全てを貴方に託す」
〚ツイステッドワンダーランド〛
✧…✧
「、……、…て……、」
「…、、き……て、…!」
「起きて!!!!」
「はっ!!!!!!!」
その声に僕は飛び起きた。
……ここは…?
目を開けると、其処は暗闇だった。
僕の目には景色や物はなく、ただただ真っ暗な世界。
僕は怖くなる。
「あれ…僕なんで…ここに…?」
確か…元の世界に帰ったはずじゃぁ……。
「起きたか」
「!」
なんとなく聞き覚えのある声が聞こえ、人がいるのかと振り向く。
すると、そこには式典服を着た、僕より背の高い、センター分けをした男の人が立っていた。
「…っ!貴方は…?!」
「俺は佐々木田 悠輪だ。」
「ささきだ…ゆうわ、さん…?」
「そう。」
「は、はじめまして。僕は…」
「桜田 優。でしょ?」
僕が名前を語ろうとしたとき、また、なんとなく聞いたことのあるような女の人の声が割り込んできた。
聞いたことのある名前。ということよりも、何故僕の名前を知っているのかが不思議だった。
でも、悪い人な感じは2人ともしなかった。
にこっと彼女は優しく微笑む。
「私は桜 佑葉。6周目から10周目までを担当した、2人目の監督生だよ!」
「……え、?」
「それで、俺が1周目から5周目までの監督生。つまり一人目の監督生だ。」
僕は彼女達の言うことが少し理解できずに困惑する。
「どういうこと…、?」
「詳しいことは後で説明する。まず、単刀直入に言うと、このツイステッドワンダーランドはループを繰り返している。そして、お前は最後に残された希望だ。」
「希望…?」
「そうだ。ツイステッドワンダーランドは何回も何回も崩壊を繰り返している。学園長のユニーク魔法、“ツイステッドワンダーランド”で未来を改変しようと繰り返し試みても、必ず未来はグリムのオーバーブロットで世界が終わる。」
「そ。それで、今回が100回目のループになるってわけなの。」
「つまり、、僕が今さっきまでいた世界は、98回も繰り返された後の世界だったってこと…?」
「御名答。」
「そんな………」
そんなあり得ない。と思っているはずなのに、何故か納得のいくような…。理解ができるような気がする。
この人達が嘘をついているとは思えない。
彼らの目は本気だ。
「取り敢えず、伝えておかなければいけないことが沢山あるんだ。そして、君に託したいことも。」
悠輪という名の一人目の監督生が僕の肩を強く握った。その手は少し震えていた。
「……分かった。僕も協力する。」
「!助かるよ…!!」
二人はぱあっと笑顔になる。
それから、僕たちは、何もない暗闇の中で話を続けた。
どのくらいの時間話したかは分からないが、時は十分に過ぎたと思う。
沢山のことをいっぺんに詰め込まれて頭が痛いが、ツイステッドワンダーランドと僕たちの未来のためだと思えば辛くない。
どうやら、彼らは僕の前の監督生らしく、一人目の監督生、悠輪は一周目〜五周目までを生きていたという。どうやら五周目でループの存在に気が付いたらしい。だが、そのループを繰り返すための条件があるらしく、そのループの存在に気付いてしまった場合、その気付いた時点の世界線でツイステッドワンダーランドの未来を救わなければ、その世界線にいる監督生は消滅してしまう。と。
二人目の監督生、佑葉は悠輪が消滅した後に来た監督生らしい。
どうやら二人とも途中でループの存在に気が付き、この世界を救おうと試みたが、グリムの古代魔法に圧倒され、救うことができずに消滅。
その繰り返すにあたっての条件、ルールは、他にもまだある。それはループの上限回数は100回ということだ。
どうやら100回を終えるとループは使用不可能になってしまうという。
だから二人はこんなに焦って僕に気づかせようとしてくれていたのだ。
今まで気付かなかった自分が恥ずかしくなってくる。
このループには、今わかっている限りは、学園長とエースが関わっているようだ。
何故エースが…?と不安になる。
そして、最後。
これは聞いたとき驚いた。
だが、やっと矛盾が埋まったというか、矛盾していたその理由が分かった気がして、少しスッキリした部分もある。
それは、僕がこの2人の監督生の性格や見た目、口調や趣味等を掛け合わせてできた存在だったということだ。
簡単に言うと、悠輪+佑葉=僕、優。ということになる。
そもそも、どうしてこの現象が起きたかは不明だ。
だが、きっとこれは神様がくれた二人への希望なんだと、彼らは言っていた。
何故彼らはこんなに情報を知っているかというと、彼らは世界には人間として存在することはできないが、誰にも見えない幽霊、いわゆるゴーストとして僕たちの行動を見ていたらしい。
頭の整理がつくと、二人の記憶も頭の中でうっすら見えるようになった。
たまに見ていた、勉強の分厚い本を押し付けてくる母親や、周りの人から笑われたりする幻覚のようなものは彼らの過去だったということだ。
そう思うと胸が痛む。
そんな過去があっても元の世界に戻りたいと思う彼らには、僕には分からないであろう、他には譲れない、大切な何かがあるはずだ。
僕は二人のその大切な何かのために、動かなければいけない。
「……以上だ。長かったと思うが、理解できたか…?」
「ざっくりは…」
「それなら良かった。」
僕が答えると、悠輪はほっ、と安堵した。
するとその時、
ピカッッッ!!
「?!何!?」
僕は反射的に声を上げる。
なんと何もなかった暗闇に、眩しすぎる白い光が差し込んできたのだ。
「…、もう時間がない。ここの空間にいられるのはもう最後だ。」
「っ!ってことは、君たちとはもう…?」
「…私たちはもうこの世には居ない存在。居てはいけない存在だからね。…でも、私達は貴方の中で存在できる。私達の存在を知った今なら、心の中でなら会話ができるわ。…それで、多分、これはループの光。貴方はこれからツイステッドワンダーランドに来た日へ戻るの。つまり、最初からやり直し。ということね。」
「正直に言うと、俺らは今からお前がいく世界で他の奴らがどうなるかは分からない。ループとはいっても、一人の行動で殆んどが変わるからだ。俺らはもできる限りサポートをする」
二人はそう言うと、僕の背中をトンッ、と力強く光の方へ押した。
「…っ、分かった…、なんとかやってみる…!!」
僕は意思を固めて、拳をギュッと強く握りながら光の方へ飛び込んでいった。
✧…✧…✧
Chapter2,5 物語の複製とズレ
ボワッッ
「あっつ!!!!!」
僕はあまりにもの暑さに寝ていた状態から起き上がった。
顔を覆う熱風、皮膚が痛くて痛くて仕方ない。
僕は目を擦り、辺りを見渡す。
「……ここは……」
そこには沢山の棺が宙にフワフワと浮いていた。
その瞬間、僕は全てを思い出した。
「フナ!!??コイツ、起きやがった!!!!」
この声は、と思い、振り返る。
そこには、最初と同じ。グリムの姿が。
紫色の魔法石も、黒と白のボーダー柄のリボンもつけてない、まだ野良の状態のグリム。
僕が元の世界に帰るためにした儀式の後だとさらにくる。涙腺がまた緩くなる。
最後のグリムの叫び。
僕の名前を呼んでくれていた。
もう二度と会えないと思っていたグリムが今会えた。それだけで幸せだった。
でも、二人の話によればグリムがオーバーブロットを引き起こす。
どうにか彼をオーバーブロット状態にさせないことが第一である。今は感動している場合ではない。
自分のやるべき事を果たすだけ。
僕は驚いた声を上げながら、初めて出会ったときと同じように、棺から飛び出し、グリム、青い炎を口から出す、一体の獣から逃げた。
エースや学園長はループのことに関して知っている。だから彼らには前の世界線の記憶もあるはずだ。異変があればすぐに気付くはず。
まずは経過観察から。
怪しまれないようにすることが大切だ。
僕はグリムに追いつかれないようにしながら、学園長と会話した図書館へ向かった。
ここからは前と同じだ。
グリムが捕獲され、学園長と会話し、この世界のことの説明をしてもらう。その後、共に、入学式が行われている鏡の間へ向かう。そこでグリムが暴れ出し、それをリドルがユニーク魔法で封じる。
グリムは学園外へ出され、僕はオンボロ寮へ入れられる。グリムとゴーストを倒し学園長に猛獣使いと認められる。
ここまでの流れは全て同じだ。
全てを知っている学園長と話すのは少し緊張した。心臓が口から飛び出るところだった。
色々大変だったな。特に掃除が。僕の中では2度目のオンボロ寮の掃除。腰がとても痛い。
それでも最新の綺麗になったオンボロ寮を知ってしまうと、最初はマシになった方と思っていたこの風景も、マシ以下に感じてしまう。
やっと一人になれたと、不安定なベッドに腰を下ろす。
ギシッと床が音を立てる。
不安だ。もうあのベッドに慣れているせいかこのベッドでは寝れる気がしない。
でも取り敢えず横になっておこうと僕は布団にはいる。
コンコン、コンコン
「ん……?」
暫く横になっていると、窓から何者かが窓を叩く音が聞こえた。
「誰だ…?」
ん?
と少し違和感を感じる。
普通の人間が2階の窓を叩けるか…?
僕は恐る恐る窓を覗く。
「っえ!???なんで…??」
僕は驚いた。
何故なら、そこにはツノ太郎がいたからだ。
ツノ太郎と僕が出会って初めて話したのはマジフト大会が終わってから。
つまり前の僕が知る世界線とは違うようになっているということだ。
「人の子よ…」
「ど、どうしたの……?」
「これは一体、どういうことなんだ…」
✧…✧…✧
「これは一体どういうことなんだ…。」
静かな夜に、ツノ太郎の声が響いた。
どういうことなんだなんてこっちが聞きたい。
なんでツノ太郎が…?
…、まさか…、!
僕はツノ太郎に尋ねてみた。
「まさか、覚えてるの…?」
「っ……やはり…この世界は…」
ツノ太郎は拳を強く握った。
「い、1回中に入って、談話室で話そう、」
僕は雨にうちつけられたままのツノ太郎を中へ招いた。
「人の子よ。僕の存在を知っているか」
「うん…勿論。ツノ太郎、だよね」
僕はツノ太郎が前の世界線の記憶があると判断し、いつもの名で呼ぶ。
「ああ。その呼び名は…。やはり、この世界はそうなのか。」
「そう、って?」
「……どうやらこの世界はループしているらしい。トラッポラとクロウリーが言っていた。」
「え、学園長とエースが…?」
それは初耳だ。どうやら僕が元の世界へ帰るために鏡を通った後に起きたことのようだ。
「それ、少し詳しく聞かせてくれる…?」
「ああ。では、何故お前だけその記憶があるのかを教えてくれないか」
✧___✧
「なるほど……ね…。」
「ああ。そちらもそういうことだったのか。」
僕とツノ太郎はお互いに情報交換をした。
ツノ太郎に話しても、そんなに害はないと思うし、グリムをオーバーブロットさせないためにもなにか役立つかもしれない。
「うん。色々ありがとう、」
「こちらこそ。夜分に失礼した。僕はこれで御暇する。これ以上寮から離れてはセベクやシルバーが心配するからな」
そう言うと、ツノ太郎は蛍の光を残して消えた。
僕はツノ太郎がいなくなり、静かになった談話室の明かりを消して、部屋へ向かう。
グリムはすぅ…すぅ…と気持ちよさそうに丸くなって寝ている。
僕はその愛らしい姿のグリムの頭を優しく撫で、ベッドへ横へなる。
でも、何故ツノ太郎は前の世界線の記憶があったんだろう。
いや、今考えても仕方がない。
明日はエースと出会って、ハートの女王の石像が燃えて窓拭き100枚。そしてシャンデリアを壊して魔法石を取りにドワーフ鉱山へと行くことになる。
そのための体力を残して置かなければ。
僕は布団に包まり、眠りについた。
✧__✧
「……ゆ、、う…、」
「ん〜……」
「ゆう」
誰かに呼ばれた感覚がして、僕は起き上がる。
目をこすると、またあの暗闇。
前を見ると、僕の前の監督生の二人が。
「やっほ〜」
佑葉はこちらへ向かって愛想よく手を振る。
「あれ、なんで…?」
「どうやら、君が眠ってる間だけ俺らは会話ができるようだ」
「そうなの、?それなら、なんか少し安心かも…」
「そう思ってくれたなら良かった」
二人は微笑んだ。
「でも、なんでツノ太郎は前の世界線の記憶があったの?」
僕の質問に、少し間を空けて二人は考えた。
「……もしかしたら何回も何回もループを繰り返すことによって、能力が少なくなっているのかもしれない。」
「ああ、たしかにね、こんなに使ってるんだから、使う度に力が落ちても仕方ないことだよね」
「そういうことか、」
二人の言う事に納得がいく。
「ということは、もしかしたらツノ太郎以外にも、覚えてる人がいるかもってこと、?」
「可能性としてはあり得なくもないな」
「もしかしたら、前の世界線でも、記憶がうっすら残っている人はいたかもしれないよ。ツノ太郎の夢の中でも同じだったでしょ?強く刺激されると思い出すやつ。」
「ああ、あれか、!」
例えが上手い。一瞬で伝わる。確かにツノ太郎の夢の中ではそんな感じで皆を起こしたったよな…。今となっては懐かしい一つの思い出だ。
「でも、ツノ太郎の時みたいに、強く記憶を刺激してくれる人がいなかったから、ってことじゃないかな、」
「成る程、それなら説明がつくかも」
そして、今日あった事や作戦を語り終えた後、僕はここから自分の意思で出ることができないため、その時間が来るまで三人で共に雑談をした。
それぞれが体験した冒険や、その時にどういった行動をとったのかや、NRC生たちとの思い出。それから、僕が今までの世界線でどんな生活を送ってたか等。
二人と話すのはとても楽しかった。似ているところがあり、感覚も価値観もあったため、会話が弾んだ。
ただぼーっとして過ごしていたら長いと感じたこの空間での時間は、僕にとってはとても短く感じた。
「あ、もう時間みたいだ」
ミッキーの時のように段々と2人の姿が見えづらくなってくる。もう朝なのだろう。
ここにいると、疲れるとは逆に、何故か体も心も回復してくる。不思議な感覚だ。僕は2人に手を振ると、眩しい光に覆われた。
ぱちっ
目を開けると、今にも木の板が落っこちてきそうなボロい天井が目に入った。
この天井も懐かしいなと思う。
グリムを起こして、制服を着……。
あ、そうだ、この時点では僕はまだ学園には通えないんだ。学園に通うためにはエースと問題を起こさなきゃいけないんだ。
取り敢えず僕は昨日学園長に渡された服に着替えて、グリムを起こし、無理矢理メインストリートの掃除へ向かわせる。
「ハァ〜、だるいんだゾ〜」
魔法石をつけていないグリムは少し違和感がある。
なにか物足りなくてむずむずしてしまう。
…もうそろそろエースがやってくる頃だ。
「昨日はよく見てなかったけど、この石像は誰だ?」
グリムがそう言うと、石像に近づいていった。
「7つあるけど、みんななんか怖い顔」
ドクドクと心臓が動く。
「このおばちゃんなんか、特に偉そうなんだゾ!」
確かここでエースが入ってくるばず…、…。
…………あれ、、?
ここで入ってくるはずのエースの言葉がない。
昨日の雑談で、二人は、毎週エースはグリムのこの言葉の後に現れて説明をして問題を起こしていた、と言っていた。なのに、来ない。
周りを見渡しても、オレンジ髪に、ハートのスートをつけている生徒は何処にも見当たらなかった。
とういうこと…?
「そ、そうだ、ね」
僕はグリムに返す。
心臓の音の大きさが増す。どうして、?何でこないの、、?
何で来ないのか、僕は怖くなった。グリムがいるから放おって一人で何処かへ行くこともできない。
なにがおきているんだろうか。
まさか、今回は最後だから、エースと学園長は作戦を変更して僕を学園に最初から入学させないようにしようとしたのか、?
エースは前までの世界線の記憶をもっている。あり得ない話ではない。確かに、僕がもしも学園に入学しなければ、グリムがオーバーブロットすることはないのかもしれない。
今日の夜あの二人と話し合おう。
そう、思っていると、、、
グイッッ!
「!!??」
いきなり勢い良く腕を引っ張られた。
なんだと思い、後ろを見た。
「っ、デュース、」
「ユウ、、監督生…!!」
驚いたあまりに咄嗟に言ってしまったデュースの名前。しまった、この時はまだお互い存在を知らないんだ。と思った途端、デュースの口からは、僕の名前が出た。
「え、なんでそれを、、」
僕は目を開いてデュースを見た。
するとデュースは真っ直ぐこちらを見つめ、少し焦ったような表情を見せながら言った。
「やっぱユウもなのか…、ユウ、驚かないで聞いてくれ」
✧___✧___✧
「…………ということなんだ…。」
話によると、デュースもツノ太郎と同じ状況で、前の世界線の記憶があるようだ。どうやら今朝、すべての記憶が蘇ったらしい。それはデュースだけではなく、リドル先輩やトレイ先輩、ケイト先輩もらしい。だがそれ以外の生徒やルームメイトは何も覚えていないという。
「あと、ユウ、それだけじゃないんだ」
「え、?」
「ユウ、心して聞いてほしいんだ」
デュースの瞳から深刻さが伝わる。
ゴクリと息を呑む。
「この世界に、エースがいないんだ」
「………………え……?」
コメント
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亜久亜さん、読ませていただきました。 最初のグリムの叫びからもう胸が締め付けられました…「子分」の呼びかけが心に刺さります。そしてループ構造で前の監督生たちと出会う展開、夢の中で語り合う静かな時間の温かさが好きです。エースのいない世界というラストの衝撃、これは続きが本当に気になりますね…!大切に紡がれている物語だなと感じました。
#ツイステッドワンダーランド