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3話目やってきます!
『母上〜!!』
「あら、わたくしの愛しの子…今日も元気ね」
『はい!母上は元気ですか?』
「ええ、勿論…私も元気ですよ」
「ナミカ済まんな…途中でアルベルト達に会ってな」
「ふふ、いいですわ
サルヴァトーレ公爵様とラルクアン公爵様はどうされたのですか?」
「アイツらならすぐ来るさ」
「そうですか、サルヴァトーレ子息とラルクアン子息も一緒にお茶していきますか?」
「ご一緒してもよろしいですか」
「ええ、勿論です…そこの貴方」
「はっ、」
「カップを持ってきてくださらない?」
「かしこまりました」
『母上、聞いてください!』
「はいはい、なんですか?」
『この前ルース叔父さんと剣術勝負をしたんです!』
「まぁそうなんですね、ルースと…勝敗はどうだったんですか?」
『それが…しっかりと負けました……』
「ふふ、ルースも手を抜きませんからね」
『それで座学なんてつまらない授業を受けさせられました』
「ふふ…アルはじっとしているのが嫌なんですね」
『嫌です!母上たちとの話は好きですけど授業は嫌いです』
「けれど剣術と魔術の授業は好きですか?」
『はい、』
「魔術も実技だろ?」
『父上は黙っててください』
アルベルトはサタハに向かって冷たい言葉を向けるとサタハはガビーンと効果音と顎が外れそうになるくらい開いてショックを受けていた
「ナミカぁ〜…!息子が冷たいよォ…!!」
「ふふ、それは貴方が悪いですよ陛下」
「ナミカまでぇ〜…!」
「今のはアンタが悪ぃなサタハ陛下」
「お前らまでぇ…」
「サタハ陛下、この阿呆と一括りにしないでいただきたい」
「はぁ??んだとこの魔術バカ」
「なんだこの剣術馬鹿が」
「身体能力もないのに魔法とか放てますねぇ?大事な時に体力尽きないといいなぁ??」
「戯言を…我々には身体強化魔法と神聖魔法がある…その2つにいつも戦場で助けて貰ってるのはどこのどいつの部下ですか」
「その他の魔法使って体力切れになって騎士に助けられたのはどこのどいつの部下だぁ!?」
「すぐ威圧する…剣術馬鹿は口では勝てないからってすぐ威圧的になる…
それと助けられたと言いますが騎士がいなければ元々体力切れになることもないんです!どこぞの騎士の援護をしながら神聖魔力を使い、そして身体強化魔法も施している我々とその恩恵にあやかっている騎士にとやかく言われる筋合いはありません!」
「ほーう??次の戦場の時絶対に俺らはお前らを助けたりなんかしないからな!」
「ではこちらも部下に貴方たち第一部隊の隊員には魔法を施すなと指示をしておきますよ!」
「嗚呼いいさ!俺ら第一部隊はお前らの施しがないとしても余裕だ」
「ではルース総隊長にも伝えておきます」
「嗚呼、お前からじゃなく俺から!伝えておく」
「どうなっても知りませんからね」
「言ってろメガネ」
「誰がメガネだぁ??」
「メガネは事実だろ!そこで怒んなよ!」
「そこまでよ」
「「い”っ”だぁ”ぁぁあ”!!」」
いつ剣を抜き魔法をぶつけ合ってもおかしくは無い雰囲気の中、ナミカは静かに立ち上がり木刀で2人の男の頭を殴った
「恐ろし……」
「ナミカ!!殴らなくてもいいだろ!!」
「ナミカ…??」
「ァッ…な、ナミカ王妃…」
「よろしい…」
「ナミカ王妃、流石にはしたないかと…」
「…じゃあ何?一触即発の殿方同士に口を挟んだとして、聞いてくれるの?」
「ァッ……」
「………」
「子供たちに悪影響だから喧嘩ならルースのいる訓練場でおやりなさい…!よろしくて?」
「「ハイ……モウシワケアリマセンデシタ…」」
「ハァ…」
「流石は私の惚れ込んだナミカだ」
「サタハもお止めなさい」
「ふふ、久々にナミカが動いてるところを見たくなってね、つい」
「そのつい、でわたくしの部屋が壊されたら溜まったもんじゃないわ」
「そりゃあスマン」
「いいですけどもね……我が弟ながら少し心配よ」
「何がですか」
「ラルクアン家のこれからよ
こんなに短気で大丈夫かしら…」
「いや、姉さん…その…」
「父上は大丈夫だと思います」
「あら、どうしてそう思うの?ラルクアン子息」
「父上は意外とちゃんと領地のこともしていますし、王国騎士団の仕事もしっかりしています
それに僕や、弟にも僅かな時間でも稽古や勉強に付き合ってくれます」
「…ふふ、そうね…貴方のお父さんはそういう人だったわね」
「わっ、…」
ナミカはマラの頭を優しく撫でた
「貴方のお父さんのこと悪く言ってごめんなさいね」
「いえ、…王妃殿下は父上の姉に当たるので心配されるのは当然かと…」
「ふふ、愚弟」
「は、はい」
「いい育て方をしているわね」
「…ありがとうごさいます…」
「苦労してることはない?」
「いえ、マラや末の子達もまぁ活発ですがあまり手がかからない、いい子たちです…それに第一皇太子殿下にお世話になっております…勉強ばかりではなく体を動かしていると思います」
『はい!今日もシエルとマラと鬼ごっこしてたんです!!その前の日も!』
「あら、そうなの?」
『はい!ちょっと前は少し走っただけで息切らしていたシエルが今はもう少し走れるようになりましたよ!』
「本当か、シエル」
「は、はい、父上…」
「それは、いいことだ…」
サルヴァトーレ公爵はシエルの頭を優しく撫でた
「ッ…あ、ありがとうございます…」
コンコンコンッとドアをノックする音が部屋に響いた
メイドがナミカに頼まれていたカップを持ってきたらしい
「入りなさい」
「失礼致します」
「ありがとう、これは僕が預かろう」
「はい、お願い致します…では何かありましたらお伺いいたします」
「ええ、それまでは下がってていいわ」
「かしこまりました…」
メイドはドアを閉め、下がっていた
「ではお茶会始めましょうか」
「そうだね、ほら、アルベルトおいで」
「もう1人で座れますよ」
「シエルが座りなさい」
「え、父上が座ってください」
「マラ、ここは父親である俺に譲ろうな」
「嫌です…!俺だってシエルとアルと陛下や王妃殿下と喋りたいんです」
「いつでも出来るだろう…」
「ラルクアン公爵、子供に譲ってあげなさい
大人気ないです」
「ふっ」
マラは勝ち誇ったかのような顔で父親を見た
「こっのガキ…」
「…そういうのはもう少しこの子が大人になったらやりなさい」
「ちぇ」
それから7人は身内だけのお茶会を楽しんだ
また…数年後……
アルベルトは15歳となった
15歳というと貴族は紳士淑女として一層見られるようになり、”デビィタント”つまり”社交界デビュー”することになる。
女性は14〜16歳の間に、男性も14〜16歳の間にし社交界にデビューしないもいけないのだ
そして今日はアルベルト、シエル、マラの社交界デビューの日だった
『チッ…首が苦しい…』
「今日くらい我慢しなさい」
「アル、いつも女性に対して王妃様に言われているように、丁寧に対応しろよ」
『お前は俺のお母さんか』
「王妃様からの伝言だ」
『チッ……』
あれからアルベルトは180cmと身長が伸び、筋肉も程よく着いていて引き締まっていていい男の子に成長を見せていた
『……ハァ…めんどくさ…社交界なんか出なくていいだろ』
「顔は売りましょうね」
『ハァ…』
「ほら、行きますよ」
『はいはい、…』
若い男が会場に響く声で3人の名前を読み上げると会場内は小さく歓喜する者やアルベルトへの非難の声をヒソヒソと話す者、様々な人間がおり、会場はザワザワとしていた
『………』
「おや、随分嫌われようですね皇太子殿下」
『そうか、…顔覚えておけよ』
「誰に言っていますか」
『そりゃあ悪うござんした。降りるぞ』
「「はっ、」」
アルベルトたちが降りると会場は先程までの騒がしさが嘘のように静まり返っていた
『…シエル、何か持ってきてくれ』
「かしこまりました」
「皇太子殿下、婚約者の元へ行ってきてもよろしいでしょうか」
『嗚呼、そういえばこの間結んだんだったな』
「はい、お陰様で…俺にはもったいない程のいいお嬢さんですよ」
『!あははははははは!!悪ガキの俺らのうちこうも丸くなるのが早いのがまさかマラとはな!』
「悪ガキと仰いますが3人の中で1番は皇太子殿下ですよ」
『そんなのはわかってるよ
俺以外だったら逆に怖い』
「そうか、」
『婚約者は結婚後北の領地に連れていくのか?』
「いや、南へ行こうかと思ってる」
『!…お前にしては大きく出たな!ラルクアン公爵は許したのか?』
「………」
『許してもらえてないのか』
「父上に剣術で1本でも取ったらいいと…」
『誰でもいいのか?』
「?」
『その約束詳しく教えろ』
「え、剣術勝負でサルヴァトーレ公爵現当主から1本取ってみろ…と言っていたが…」
『ふふ、少し手を貸してやるよマラ』
「お前…まさか…」
『嗚呼、そのまさかだ
友達の門出への第1歩だ…これまで俺に付き合ってもらったんだ
婚約者には北の地で苦労して欲しくないだろ?』
「嗚呼…成人を迎えるまでに勝てないようなら…アルベルト・グレーダス第一皇太子殿下にお願い申しあげたい…」
『その願い聞き入れよう』
「感謝いたします…では婚約者の元へ少し顔を出してきます」
『嗚呼、戻ってこなくていいぞ』
「流石にそれはまずいだろ」
そう言いながらマラの顔は少し緩んでいた
『…ありゃ、相当ゾッコンだな』
「何の話ですか殿下」
『嗚呼、シエルおかえり』
「ただいま戻りました」
『相変わらず、よく食べるなぁ?その薄い身体の何処にしまってんだよ』
「魔力を消費してしまいますから、自然とお腹が減るんですよ」
『そりゃあわかるが……』
「そういえばマラはどこに行ったんですか?」
『あっち』
アルベルトはマラのいるバルコニーを指さす
「嗚呼、婚約者ですか」
『嗚呼、少し顔を出してくると言っていたがしばらくは戻ってこないな』
「そうですね…」
「グレーダス第一皇太子殿下」
『…』
「…?グレーダス第一皇太子殿下、お初にお目にかかります
私は東の辺境の地での男爵であります…ベリアル」
『で?要件はなんだ』
「え、?」
『だから用件はなんだと聞いている
長々と自己紹介されても興味もない
端的に話してくれると助かる』
「私の娘を紹介しようかと…」
「御機嫌よう、殿下…私はベリアル男爵の娘の…」
『…却下だ』
「へ?」
「ハァ…」(やったなこいつ…)
『1つお伝え致します…僕はまだ婚約を結ぶ気も結婚する気もありません
この件に関しましては父に伝えても無駄なのでご了承くださいね』
「で、ですが…もう15歳なのですから…」
『で?僕の年齢が15歳なのがなんの関係がありますか』
「そ、それは…」
「父は殿下をご心配なされているんですわ」
『……』
「殿下は今のような品のないお言葉で女性を避けている様子ですのでその姿に父は心配を…」
『…では僕の好みをお伝え致します!
僕の好みは
まず僕の母より爵位が高い方か伯爵です
2つ目は黒髪で、綺麗な華奢な女の子
3つ目は剣術または魔術に精通している人
4つ目は体を動かすのができる方
5つ目は身長が僕の…肩くらいは欲しいですね
6つ目は褐色肌の女の子
7つ目は…』
アルベルトは会場の真ん中で約1分ほどタイプを語り話しかけていた男爵と令嬢はどこかに行ってしまっていた
『ハッ…』
「…」(アルベルトの好み、ほとんどでっち上げてるけどな…昔小さい時に聞いた時のがあれが1番の本音なんだろうな)
『?シエル?どうかしたか?』
「いや?相変わらず好みについて話すと長いなと思ってな」
『そりゃあなぁ?興味のねぇ女に話しかけられてもなんも面白くねぇ』
「それもそうか…」
「アル」
『あれ、意外と早かったなぁマラ』
「お前また何かやらかしたのか?」
『は?』
「婚約者を外まで送り届けてきて戻ろうとしたらなんかグチグチ言われてたぞ
あの人の好みはとんでもない
あれでは一生結婚できないって」
『ははは!!もう手のひら返してんのか!!おもろしろいなぁ!』
「ハァ…まだ結婚したくないからって無理難題な条件をむやみに出すもんじゃないぞ
もし本命の女ができた時に勘違いされるぞ」
『今ん所できてねぇんだからいいんだよ』
「ハァ知らねぇよ俺らは」
「同感です」
『へぇーへぇー…あ、そういえばもうすぐだよなぁ』
「何がだ」
「王国騎士団の試験とアカデミーの試験」
『そーそー』
「あーなるほどな」
『2人はどうするんだ』
「王国騎士団の試験は正直なところ大人になってからでもいいし
なんならアカデミー行ってた方が受かりやすい」
「そうでしょうね
アカデミーでも剣術と魔術の実技があり成績優秀者には王国騎士団の推薦書が貰えますからね」
『…2人はもう入るって決めてんの?』
「「はい」」
『…俺のため?』
「気持ちが悪い
アルのためじゃない、俺らは父上に憧れてるだけだ」
『嗚呼、サルヴァトーレ公爵とラルクアン公爵にね…まぁわかるけどな』
「アルは帝王学は全て終わったんですか?」
『無事ね、あとは父上のそばで仕事を手伝ったり見学させてもらったりとね』
「そうか、アカデミーは行くんだよな?」
『…魔術と剣術はまだ学び切れていないから学びたいから行くよ』
「そうか、なら3人とも受かるといいな」
『嗚呼、そうだな』
王国騎士団の入団試験は2年に1度に行われ毎度平均して約1000人規模の受験者が各地からくる
そのため倍率も高い
アカデミーも倍率がたかい
3人はアカデミーを高等部から途中編入するためより学力と実技を求められるためアカデミーを高等部から途中編入するのはあまり…というかここ10年いなかったらしい
「アルベルト、お前またやらかしたな?」
『あ、父上』
「あ、父上じゃない
また令嬢泣かせたのか?」
『今回は泣かせていない、なんから愚痴を言われた始末だ』
「…アルベルト、急かすつもりは無いが婚約者を作ってみてもいいんじゃないか?」
『…遠慮します……あんな心が荒んで醜い貴族たちの令嬢達となんか嫌です』
「…アル…」
『…父上、俺はこの国が好きです』
「嗚呼、知っているよ」
『この国の王になれというならなれます…ですが父上の元で仕事を見させていただきましたが…いつもあのような会話をしているのですか?』
「…貧民街の子達の話かい?」
『はい、何故貧民街の子に優しくできないのですか?
持っているものを与えてやればいいのに…!何故皆自分の私腹を肥やすばかりなんですか?
孤児院をもう少し増やすべきです!それに子供を育てるのに苦労している人たちへのそういった制度を作るべきです!』
「…アルベルトは優しいな…」
『優しい、優しくないの話ではないです!!常識的な話をしているんです!!
今の王都には孤児院が少ないんです!それに東西南北の各地での孤児院の数も少ない!貧民街の子たちは孤児院という存在を知らない子達も多いはずだ!』
「…アルベルト、国の状況はどこまでわかっている」
『…国の経済は比較的安定しています…それに各地からの納税もしっかりと納められています…
ただ、北の地は寒さによって農業が上手くできていないため今の時期は北の地の人の状況は良くは無いはずです…』
「嗚呼、そんな中で北の地に孤児院を建てろと言っても無理な話だ」
『ですが…!』
「…だから、今私たちが考えてる…原因を考えて、どうにかできないかな
他の地も同じだ、だから焦るな
焦るといい結果にはならない」
『……』
「……今日はもう寝なさい
デビィタントで疲れたろ」
『……はい…』
「おやすみ私たちの愛しの子」
『おやすみなさい…』
『…マラ〜、シエル〜』
「…?なんですか?」
「……」
アルベルトが2人を呼ぶとマラは体ごとこちらを向きシエルは耳だけを傾けていた
『今からお忍びで視察行くぞ』
「はいはい………はぁ!!?」
「アルベルト、ちょっと待ってください
それは国王陛下と王妃殿下に許可取りましたか??」
『取ってない』
「じゃあ行きません」
『あっそ、マラはどうするんだ?』
「…俺もやめとくよ……国王陛下と伯母様に怒られたくねぇ」
『はは!!そっかそっか〜…なら一人で行ってくるよ』
「「絶対にやめてくれ/ください!!」」
『じゃあ着いてくるのか?』
「それは行きません」
「ちゃんと許可取ってからにしろって
許可が降りさえすれば俺らも行くって」
『無理だ
なんで視察行くだけで父上と母上の許可を取らないといけないんだよ』
「「一応貴方がこの国の第一皇太子殿下だからだ/です!」」
『ハァ…お忍びとはいっても王都内の街の祭りに行きたくなっただけだ』
「は?」
「なんでそんなの知ってんだ?」
『なんでって15年も生きてりゃどんぐらいになってるかなんか予想つくだろ』
「…じゃあいつなんですか?それまでに…」
『だからそれが今日あたりなんだって』
「……コイツ…!」
「今日は王妃殿下も国王陛下も謁見できない……おまえ狙ったな?」
『はは!なんの事だ??』
「…ッ…ハァ…少し父に掛け合ってみます」
『嗚呼、行ってこい』
「流石にサルヴァトーレ公爵だけでは行けないので俺も父にと掛け合ってみます…」
「…頼みますよ…」
「嗚呼…」
「じゃあ少し席を外します」
『はいはい〜仕事してまーす』
マラとシエルはアルベルトの執務室から出ていった
『……よっと…』
出ていった直後アルベルトは椅子から立ち上がりあるメモを残して執務室から出ていった
そしてその日マラは静かに頭を抱えシエルの怒鳴り声が城中に響き渡った
一方そんなことを知らないアルベルトはというと……
『おお、こんな祭りなのか…!建国祭とはまた違う活気の良さだな!』
アルベルトは少し汚れた焦げ茶やローブに貴族らしからない…王族らしからない少し汚れた服を着て街へ来ていた
『…はは!』
「そこの兄ちゃん!!1本どうだい!?」
アルベルトは屋台のおじさんに声をかけられた
『お、ここは何を売ってるんだ?』
「焼き鳥だよ!タレと絡めた鶏肉と塩があるぜ!どっちか食べてみな!」
『タレと塩か…ならタレを貰いたい』
「タレ1本かい?」
『?何本もいいのか?』
「嗚呼!いいぜ!とりあえず1本買ってくってみな!」
『嗚呼、お金はいくらだ?』
「銀貨1枚だよ」
『銀貨…』
「銅貨なら10枚だよ」
『済まない金貨しかないんだ』
「き、金貨!!?」
『済まない…申し訳ないとは思う…!』
「そ、そんな金貨出されてもお釣り返せねぇよ!」
『だ、だよなぁ…済まない、また出直すよ』
「すまねぇなあんちゃん…!」
「お兄さぁ〜ん、俺が両替してやろうか?」
突然アルベルトの背後から肩に腕がかけられて見てみるとそこにはアルベルトより身長の高いガタイのいい男がいた
『……何者だ』
「通りすがりの優しいおっさんだよ〜?」
『”おっさん”…ねぇ…』
「お、グレンの兄貴じゃねぇか!帰ってきたのかい?」
「そーそー!久々に帰ってきたんだよ」
『知り合いか?』
「嗚呼!なんでも屋をやってんだよ!」
『なんでも屋?』
「まぁよく冒険者ギルドとかあるだろ?それのようなもんさ」
『…そうか、なんでも屋ってのは人の財布をスったりもするようだな?』
その言葉を放った瞬間アルベルトはグレンと呼ばれる男の手を抓りあげた
「いててててて!!!」
『悪いな、所持金は少量でも多額でな…盗まれる訳には行かないんでね』
「くっそ〜…金貨が出てくる財布なんか盗んだら働かずに済むと思ったのによぉ〜」
『悪いな、”そういう”人間は環境問題のせいで気づけるんでね…で?両替はしてくれるのか?』
「スるのバレたし俺の奢りでいーよ…おっちゃん、タレ2本な」
「銀貨2枚な」
「頼む帰ってきたばっかで金まだ入ってねぇんだよ…!マけてくんねぇいかい?」
「たく仕方ねぇなぁ…今回だけだぞ」
「お!太っ腹だ!!ほら!」
『あ、嗚呼…』
「手汚れるから気ぃつけろよ」
『わかった、奢ってくれて感謝する』
「いーよ〜俺も食べたかったしな…えっと…」
『あぁ済まない名乗るのを忘れていたな
俺の名前ベルだ』
「ベル?なんだかな、女みてぇな名前だな?」
『嗚呼、父と母が女の子みてぇっていうからそうつけたんだと……美味いなこれ…』
「だろ!?あのおっちゃんがつくるモンはうめぇんだよ!」
『!ぷはは!!』
「?なんだ?」
『おまえ口汚れてるぞ』
「口なんか気にするなよ!」
『清潔感がある方が女にモテるぞ、お兄さん』
「…おっさん…な?もうそこまで若くねぇよ」
『誤魔化しても無駄さ、言っただろ?そういう人間は気づくと
微量だが魔力が顔に集まっている
魔法で少し顔の印象操作をしているんだろうな』
「…お前さんすげえな、これ気づいたやつアンタで2人目だよ!」
『ふふ、眼がいいんでね』
「何者だい?」
『だだの旅人さ』
「ふーん…そういうことにしとくぜ」
『ありがたい、グレン…と言ったな』
「嗚呼、グレン
グレン・ナーサリーだ」
『…ナーサリー…確か昔没落したはずだろ』
「若いのによく知ってんな
ナーサリー家は没落貴族、貴族らしい生活なんかこれっぽちもしてない
だからなんでも屋として色々仕事して稼いでる
働かずにいれるならその方がいいけどな」
『そうなんだな』
「ベル」
『なんだ、グレン』
「お前さんどっから来たんだ?俺ぁこの辺にずっといる訳でもねぇからあれだけどよぉ…この辺なのか?」
『秘密にしておこう』
「んだよ!ケチくせぇ」
『悪いな、多くは語りたくないんでな』
「たく…じゃあ何歳だ?」
『18だ』(少しサバを読んだ方が良さそうだな)
「へぇー18かい、少し幼く見えて15くらいだと思ったよ」
『はは!よく間違えられるよ』(コイツ勘が異様に鋭いな)
「仕事は何してんだ?」
『まだ決めていないさ』
「じゃあ俺と一緒に働かねぇか!?」
『は?』
「お前とならどんな仕事でも受けられそうな気がすんだよ!」
『あのなぁ…おっと…グレン!こっちに来い!』
「わっちょ!!ベル!!?」
アルベルトはグレンの腕を掴み引き、路地に入っていく
「ちょっと待てよ!ベル!」
『悪い、少し一緒に逃げてくれ』
「なんだ?お前罪人か何かか?」
『罪人ではないが…まぁ追われてるのは確かだな』
城の方からフードをしていたがあれは明らかにシエルとマラだった
「じゃあ俺の家来るか?」
『………行こう』
「じゃあこっちだ!着いてこいよ!」
『わっ!』
グレンはアルベルトとの了承を得るとアルベルトを俵抱きし、路地の奥へと歩いていった
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