コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
私の名前は……? 名前がない。記憶もない。ここはどこ? 私は誰? わからない。思い出したい。何もかも取り戻してやりたい! だから教えてほしい。あなたは何者なのか? この世界の真実は? 私が生きる意味は? あなたの知っていることを全て話してほしい。そしてどうか私を助けてください。
あの日見た夢が現実になる前に――。
「あぁもううるさい!」
そう言って彼は突然起き上がった。その勢いで椅子がガタッと揺れた。私は驚いて声を上げることもできなかった。
「なんだよ朝っぱらから。せっかく気持ちよく寝てるんだから静かにしてくれよ」
目の前には私の知らない男の子がいた。年齢は多分同じくらいだと思うけど、制服ではなくラフな格好をしているせいで大人っぽく見える。
「えっと、どちら様ですか?」
恐る恐る訊ねてみると彼は少しの間考え込んでしまった。私は彼の次の言葉を待ったけれど、なかなか言葉を発しない。やがて彼は何かを思い出したような顔をして言った。
「……ああ!あれか!」
彼は私の話を聞いていなかったようだ。
「そういえばあったなぁ~」
彼は懐かしそうな表情を浮かべていた。私は呆れて何も言えなかった。
「んー……」
彼は腕組みをして目を閉じてしまった。どうしよう。私が困っていると彼は突然目を開いた。
「ちょっと行ってみる?」
「え!?」
彼が立ち上がって歩き始めたので私も慌てて立ち上がった。彼は振り返ると悪戯っぽく笑ってこう付け加えた。
「一緒に行こうよ」
彼と私は二人で並んで歩いていた。しばらく歩いているうちに日が暮れてきて辺りが暗くなってきた。街灯のない道だったせいか足元がよく見えなかった。だからだろうか。私たちはお互いの足を踏んでしまった。その瞬間に彼の体がまるで人形のようにバラバラになって崩れ落ちた。私は驚いた。どうしてこんなことになったのか全くわからなかった。しかし私が慌てる一方で彼は冷静だった。彼は自分の体を元に戻そうと必死になっていた。だがなかなか上手くいかないようだった。そうしている間にも彼の体はどんどん小さくなっていく。ついには指先ほどの大きさになってしまった。それでも彼は諦めようとしなかった。やがて私の目の前には小さな石ころだけが残った。もう元に戻ることはないだろうと思った。この小さな石を元の体に戻す方法はないのだと悟った。私はただ黙ってそれを見つめていた。
「あのさあ……」
「え?」
「そろそろ降りてくれないか」
俺は今、背中に乗っている奴に声をかけた。
「いーじゃん!別に!」
「よくねえよ!!」
俺の名前は『山田』。どこにでもいる普通の高校2年生だ。
そして俺の上に乗っているこいつは、『高梨美鈴』。同じクラスの同級生である。
身長160cmくらいの小柄な体格をしており、顔立ちはかなり整っていて可愛い部類に入ると思う。髪は黒く、目はやや垂れ気味で優しい印象を受ける。
しかし今はその表情は暗く、陰鬱なものとなっており、全身からは暗いオーラを放っていた。
「……もう疲れたよ……」
そう呟くと少年はそのまま地面に倒れ込むようにして眠りについた。
翌日、目が覚めるとそこは見知らぬ場所だった。
(ここはどこだろうか?)
周囲を見渡すがそこには見たこともない景色が広がっていた。
木々が立ち並び、鳥が鳴く森の奥には湖があるらしい。噂によるとそこには妖精がいるそうだ。もし本当にいるのならば、是非とも会ってみたいものだ。どんなことを話してくれるのかとても気になる。僕は昔からそういう神秘的な話が大好きだった。この世の中にはまだまだ知らないことがたくさんあって面白い。だからこうして冒険をしているんだ。
「ねえお兄ちゃん。さっきからずっとニコニコして何を考えてたの?」
そう言って僕の隣に座っていた少女が首を傾げた。彼女の名前はレナと言う。僕の妹で今年で七歳になる。栗色の髪を肩まで伸ばしていて顔立ちはとても整っている。将来美人になること間違い無しだろう。