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サイド トキ
目が覚めると、廃工場らしきところに手足が拘束されていた。
ああ、またか、と僕は思う。
この世界は、この国の大人は、本当にどうしようもないほど腐っている。
「起きたのか、×××。今日は何をして遊びたい?」
醜悪な笑顔に背筋が凍る。次にくるであろう痛みに体を硬くする。
いっそ、痛みなんて感じられなくなればいいのに。
毎日思っていたことを考えながら、僕は目の前に迫ってくる拳をただ見つめていた。
サイド キリ
「……見つけた」
ずっとキーボードを叩いていたマオがそう言った。
「マジ?!早えな!!」
「さ〜すがマオだね。んで?」
ルネがマオのパソコンの画面を覗き見る。私も画面を見ると、そこにはぐったりとした青年が白いトラックに連れ込まれている様子が映し出されていた。
……待って、この画像どこから見つけたの?
「俺が調べられたのはここまでだ。タエ、あとは頼むぞ」
「わかってる」
タエはいつのまにか用意していた地図をテーブルの上に広げた。
地図には無数の×印がある。
「このトラックの最終目撃がここ。近くにある防犯カメラは5箇所。だから……」
タエはシャーペンで建物を3箇所塗り潰していく。
「たぶん、この中のどこかにトキはいると思うよ」
……早い。あっという間に場所を絞ってしまった。
けど…………。
「ちょ、ちょっと待って。防犯カメラとかって、そんな簡単に見せてもらえるものなの?」
「ああ、事前に一件一件から許可もらっておいたから大丈夫」
さらりととんでもないことをいうルネ。
地図上に有る×印が防犯カメラだとしたら、二、三百件以上の家から許可を得ていることになるんだけど?!
……この団に常識は通じないらしい。
まぁ、それは私もか。
「ちょっと待ってて」
私はため息を吐きながら外へ出た。
一度、心を落ち着かせるには外に出て深呼吸するのが一番いいから。
けど、それだけじゃない。
烏(カラス)を呼んで建物の中にトキがいるかどうかを確かめてもらうためでもあった。
十分後、烏が帰ってきた。
「いたよ。ここから一番近い廃工場。大人の男が五、六人中にいるみたい」
私がそういうと、4人が驚いた顔をした。
「わ〜お。早くない?どんな手を使ったの?」
ルネが興味深々といった様子で私に聞いてくる。
「私、動物になつかれやすいから、烏に頼んで中を見てきてもらったの」
少しでも役に立ちたかった。
私だって、モンダイジ団の一員だから。
パンッ、とキノに背中を叩かれた。
「ナイスだ!キリ!!」
「一刻を争うからな。助かった」
「キリちゃん頼もし〜」
「あ、ありがとう、キリちゃん…!」
口々に、お礼を言われて顔が赤くなるのがわかる。
すごく、嬉しい。
「っ……どういたしまして!!」
私は最上級の笑顔でそう言った。
「行こう!トキ救出作戦、開始だ!!」
「ああ!」「「うん!」」「はーい」
キノの団長らしい呼びかけに、私たちはそれぞれの返事を返す。
それぞれの色の帽子をかぶる。
トキを助けるために動くんだ!