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一時間後、ファミレスでアラカとコードレスは食事をしていた。
アラカはコードレスが選んだ服を着ていた。
「……」
「……とても似合っていますよ、アラカくん」
「…………ぁ、ありがとう、ござい、ましゅ……」
茶色の短パンと、黒いサイハイニーソ。上にはシャツに黒い大きめのパーカーだ。
頬などにガーゼが貼ってあり、頭に包帯を巻かれてる姿は庇護欲を掻き立てられる。
まるで暴力から逃げるように街を歩く荒んだ少女のように危険な魅力があり、
微塵も活力を感じれない虚無の瞳は壊れてしまった人形のような背徳感があった。
不良の様な魅力と、心の壊れてる人形の魅力が合わさりそこにいるだけで目を惹く存在になった。
「…………」
「…………」
アラカはドリンクバーでメロンソーダを飲み。
コードレスはコーヒーをテーブルに置き、座りながら本を開いてそれを自由気ままに読んでいた。
互いに無言ではあるものの、互いにどこか不思議な居心地の良さがあった。
「…………」
「…………」
「ありがとう、ございます……食事。
ご馳走、になりました……」
「美味しく楽しめたのならそれで満足です」
コードレスの微塵も変わらない態度に懐かしささえ覚えながら、そのまま過ごした。
「■、■■」
そこへ不意に声をかけられ、無言で二人はその声の主へと目を向ける。
「……」
「……」
アラカには何も見えないし、青年には誰かも分からない。
「私の連れに何か用でしょうか」
「■……
■■……■■■、■■■■……」
「ふむ……アラカくんの義妹さん、ですか」
コードレスの問いに黒い塊が何かを呟く。
「……」
アラカは反応しない。否、反応できない。
冷や汗で顔が溢れ、動悸が早まり、恐怖が心臓を占めていた。
「……声を掛けられたら、最低限の返答を。
とは、いかない理由があるようですね」
コードレスは上着を脱ぐとアラカの頭に被せてから抱き上げた。
「すみません、体調が悪いみたいだから失礼します」
「■、■■……■■■、■■■■■……」
「そういうわけにはいきません。
お金ぐらいはこちらで払います、では」
お金をコードレスが支払うと、そのまま、コアラを抱き上げる要領でアラカを持ち上げてそのまま去った。
「…………」
「あの、ここ」
アラカが連れて来られたのは以前、暮らしていたコードレスの家だった。
明かりをつけて室内の家具が照らされる。
「……?」
首輪と、手錠と、鎖が置いてあった————あと未開封のペット用のトイレが置いてある。
「え、あ、あっ」
それに気が付いたのかアラカは困惑しながら急いで首輪から顔を逸らした。
「何を想像しているかは知りませんが落ち着いてください。
君の家が分からないのでとりあえずここに連れてきたまでです」
そのためその首輪は完全な偶然である、とコードレスは告げる。
「そうですね」
しかしなにかを考えたのか、コードレスは首輪を拾った。
「…………アラカくん、君の意思を聞きましょう」
アラカへ向き直り、首輪をくるりくるりと回して……パシ、と掴む。
「アラカくん、君はこの現実から逃げ出したいですか?」
ガラス玉のような瞳がアラカを映す。
「君が望むのなら、君を遠い異空間に連れ出してそこで監禁することも出来ます。
そこで精神が治るまで、過去を忘れてしまうほどに長い時間を過ごさせることもできます」
ゆえに、それを拒むなら逃げ出せ。と視線で伝えて……首輪の金具を外した。
「…………」
首輪を開き、アラカへ向けてくるコードレス。
アラカはそれを前に、特に抵抗する様子もなく……後ろ髪を静かに上げた。
「……っ」
首輪が巻きやすいように、としか思えない配慮をする。
自分から犬になる、という意味不明な状況にコードレスは息を呑む。
「…………え、あ……と……」
かちゃ、かちゃ、と金具の小さな音が聞こえる。
静かなマンションの、明かりすら付いていない一室……窓から差し込む曇り空の灯りのみが照らすのみである。
「……」
首輪を付け終わり、手を離すコードレス。アラカは何処か放心状態でコードレスを見つめた。
一歩離れて、首輪を掛けられたアラカは呆然とコードレスを見る。
「……わ、わん……」
薄暗い部屋で、首輪を掛けられた銀髪の乙女。
そんな状況で犬の鳴き真似。
————不道徳な魅力がそこにはあった。
「っ!」
「…………」
コードレスはアラカの手を掴み、手錠をかける。
足枷や鎖を繋ぐ音が小さく響く。
「……あ、あ、あの…」
順調に整い始める監禁の準備。
首輪とペットシートとかあるのはまだ言い訳できるけれど手錠は明らかにおかしい。まあ気のせいだろうし寝◯られ地獄を前には些事である。
「……ごめんなさい、保留、させて、ください」
しかし、そこで初めてアラカは言葉らしい言葉を紡いだ。ワンと鳴いた上での発言とは思えねえ。
それが常人とは比較にならない重みを持つのは間違いなかった。
「……こ、こには…向き合う、ために、来ました……。
逃げる選、択肢はもう……捨てて、ます」
この子はまだ敗北の安寧に眠ることを望んでいない。
手錠と足枷をつけられてベッドに仰向けで寝かせられている状態での発言とは思えなかった。
「だから」
そう、ゆえにこそアラカはこの誘いを斬り捨て…
「終わったら…その時、続き、を……お願いします」
——ずに、メス落ちを予約し出した。
「分かりました、いつでも監禁されたい時は言ってください」