「熱い…熱いよ…助けて…」
「大丈夫…絶対助かるよ…ごめんね…」
ーーーー目覚ましが鳴るーーーーーー
ジリリリ ジリリリ …
「ん、…もうこんな時間か。起きないと…
それにしても久しぶりにあの時の夢見たな。
あれからもう、10年か。」
俺は如月 零(きさらぎ れい)。どこにでもいる男子高校生だ。春から花の高校生になった。周りのみんなはドキドキワクワクしていて、キラキラ輝いて見えた。そんな入学式から早3ヶ月。
夏休みも近づいていた。
ーーーー7月11日月曜日ーーーー
いつものように学校が始まる。
俺はスマホのアラームを止めてベットら出た。
「ふぁ〜(あくび)顔洗お、、、」
眠たい目擦りながら洗面台に向かい顔を洗う。
その後はテレビを付けて、朝の準備をする。
ニュースを見ると東日本大震災のことが報じられていた。
アナウンサー「忘れてはいけない。あの日。
私たちの日常が全て奪われた。2011年3月11日
地震が起きたのはーーーーー」
その後も東日本大震災のニュースは続いた。
テレビ「あれから、30年経ちますからこの出来事がどんどん風化してきています。ですから、私達よりも若い高校生や中学生、未来を担う若者たちに自然の恐ろしさを伝えていかなければなりません。もう、二度とこんな悲劇が起きないように、、、」
「もう二度とね、、、」
東日本大震災はだれもが知る悲劇。高校生の俺でも、いや日本の高校生は全員知ってるだろう。
なぜなら、小学校、中学校と絶対に学ぶからだ。
だから、忘れられることはない。
だが、10年前の9月27日の放火事件なんて今は誰も知らない。ニュースにもなったが、1週間もすれば人々の記憶から無くなる。
俺はこの日を絶対に忘れない。いや、忘れちゃいけない。6歳の誕生日。俺が両親と最後に過ごした日。
ーーーー番組が変わるーーーー
テレビ「7:50になりました。今日の占いターイム!今日の一位は天秤座のあなた!今日は何をしてもうまくいく!ラッキーアイテムはメロンパンです!」
「やばっ!もうこんな時間!」
急いで歯磨きを済ませて、制服に着替え家を出る
「よしっ、いってきまー…あっそうだ。
父さん母さん行ってきます。」
玄関に飾ってある写真に毎日行ってきますとただいまを伝えている。決して、いってらっしゃいともおかえりとも返ってこない。
だが、いつか言ってくれるのじゃないかとバカなことを思っている。
玄関の扉を開けて、足早に出ていく。
「また、あいつに怒られそうだな、、、」
いつも通り信号機のところにあいつがいる。
瞬「おいっ!零!遅いぞ!いつも5分前に来いって言ってるだろう!いつも遅刻ギリギリは良くないだろ!5分前行動!基本だぞ!」
この口うるさい母さんみたいな奴。
こいつは早川 瞬(はやかわ しゅん)。小学校からの幼馴染だ。瞬はほんと色々うるさい奴だ。
零「まったくうるさいな、瞬は。ギリギリでも間に合えばセーフなんだよ。」
瞬「それが良くないんだよ!まったく、、、」
瞬はこんな奴だけど、1番信用している。
信号機が赤になり立ち止まった。
瞬が突然尋ねてきた。
瞬「出会った時から付けてるから、気にしてなか
ったけど、そのネックレスと腕時計いつも
付けてるよな。
ネックレスは明らかに女性物だし、
腕時計もかなり古い。やっぱり、、、」
そう、形見だ。父さんと母さんの物。
サファイアで作られた青い雫型のネックレス。
母さんが俺を産んだ時、父から貰った物だと言われた。俺の知る限り外したところは見たことが無い。茶色革ベルトの腕時計。この時計もあの時のままだ。17:07。決して進むことも、戻ることもない。
零「形見だよ。母さんと父さんの。」
瞬は少し考え込んだ後、口を開いた。
瞬「……やっぱり会いたい?」
零「会いたいよ。もし、今10年前のあの日に
戻ることが出来たら誰も死なせない。
まぁ、そんなこと出来る訳ないけど、」
そんな話をしていると信号が変わった。
ーーー信号機が青になるーーー
瞬と俺は歩き始めた。
瞬は気まずそうに話題を変えた。
瞬「そーいえば、また来たぞあの人。」
あの人というのは俺の親族のことだ。
俺はあいつがこの世で1番嫌いだ。
なぜなら、お金しか興味が無いからだ。
零「またか。いつも迷惑かけてごめん。
お金は渡すから。」
瞬「そんなに謝るな。親も俺も迷惑なんて思って
ないからな。気にすんな!」
零「いや、俺が今一人暮らしできてるのも、
瞬の両親が学費や家賃を払ってくれてるからだ
一生頭上がんないよ。将来、いい大学行って、
プロになって必ず返すから。
一生かけても絶対恩返しする。」
そう、高校生だけど珍しく1人暮らしをしている。もちろん未成年者だから保証人が必要だ。
一人暮らしをする為にあいつに頭を下げた。
すると、毎月7万渡すなら良いと言われ、
心底クズ野郎だなと思ったが、保証人になって
くれるのなら何でもいい。
俺はその条件を飲んだ。
その話を知った瞬の両親が学費や家賃のお金を
払うと言ってくれた。2人は俺の事情を良く知っていて、親切に接してくれる。
だから、バイトをして毎月7万渡している。
そして、瞬の両親にも少額ではあるが返している。本当は母さんと父さんが将来の為に貯めて
いたお金があったが、全部使われてしまった。
小学校から始めたサッカーでは、中3の夏の大会で声をかけられて、今は下部組織のクラブチームに所属している。時々、プロの試合に出させてもらえる機会があると、テレビに出演して、お金をいただくことがある。
瞬「零の保護者だから、一緒に住むんだって、
言ってたよ。明らかにお金目当てだろうな。」
零「あんなのが保護者なんてごめんだね。
大人なんてみんな汚い。
人なんてみんな信用するものじゃないんだ。」
その言葉を聞いた瞬は少し悲しそうに言った。
瞬「世の中そんな悪い人ばかりじゃないさ。」
一言だけ言い、いつもの会話に戻った。
瞬「ほら、早く行かないと遅刻するぞ!
先行くぞ!」
そう言うと瞬は走り出した。
瞬は何を言ってるんだ。大人なんてみんな自分の
ことしか考えられない。自己中な生き物なんだ。
俺も瞬の後に続いた。
零「待てって!」
父さん、母さん俺はこんな世の中嫌いだ。
つづく
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