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警察に行った。足は震えていたのに、受付の床は無駄にツルツルしていて、居心地が悪かった。
名前を呼ばれたとき、声が誰かのものみたいに遠く感じた。
担当した警察官は、無表情なまま、必要な情報だけを淡々と聞いた。
彼女の声が震えても、目が潤んでいても、それは関係ないみたいだった。
「事実」と「証拠」だけが意味を持ち、感情は宙に浮いたままだった。
それが正義だと、彼女は思えなかった。
けれど、それしかなかった。
どこへ行っても、自分の傷を言葉にすることは、もう拷問のようだった。
でも、黙っていることの方が、もっと苦しかった。
話している間、彼女はずっと、冷たい椅子の上で爪を握りしめていた。
誰も抱きしめてくれない正義の部屋で、彼女は静かに立ち尽くしていた。