別の医療機関にも行った。案内されたのは、無機質な白いベッドと、蛍光灯の下。
杏仁豆腐みたいに、においだけ甘くて、味は苦い場所。
身体を包まれながら、彼女は自分の喉の奥が焼けるのを感じていた。
誰も責めなかったし、誰も泣かなかった。
でも、その沈黙が、やけに騒がしかった。
言葉にならない悲しみが、皮膚の下で音を立てていた。
「産まない」ことを選ぶしかなかった。
その選択の重さは、体重計にも、人にも、測れなかった。
帰り道、空を見上げても、雲の形すらよく見えなかった。
視界だけがやけに白くて、なにも考えられなかった。
ただ、歩く足だけが、自分のものではないように感じた。