テラーノベル
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誰にしようか。
そう悩む必要なんてなかった。
BLゲームなんてやったことがないもんで、攻略方法はさっぱりわからない。
だが、スキスキ同士になりたい人を選べば良い。
なら、可能なら。すでに好きな人を選ぶとしよう。
▶
軍幹部、参謀のエーミールは、ゾムに依存していた。
軍に来たのも、幹部になることを決心したのも、国家教師の免許を取ったのも、ゾムがきっかけだった。
叶うならばゾムと居たい。
離れたくない。
それはこの世界に来てもその想いは変わらなかった。
ただ、一方通行だった。
ゾムはもちろんエーミールに懐いていた。懐いているだけだった。
言ってしまえば鬱にだって、チーノにだって、トントンにだって懐いている。
ゾムさんには自分を頼ってほしい!
そう思っていても。
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em(依存させよう)
*いぞんのさせかた*
▶
zm「エミさーん!」
廊下で声がかかった。振り返るといつも通りのゾムがいた。
em「ゾムさん、おはようございます」
zm「んはよー。今日の昼飯どうするん」
em「購買です。一緒に行きます?」
zm「行く!エミさんお迎えにいくから待っててな!」
別に特別なことは何もしていない。ただ、いつもより少しだけ丁寧に返事をした。それだけだ。
ゾムはエーミールのリュックのチャックをいじりながら後ろについて歩く。
zm「エミさんの1限ってなんなん?」
em「数学で、確か微分数をやりますね」
zm「数学、一緒やん!どの先生なん?」
そんな会話をしながら廊下を進んでいると、教室についた。
zm「またな!」
em「ゾムさんも、頑張ってくださいね」
em(……この世界の学生は、同じ服を着ていますね)
em(それにしても何故『日本』が舞台なのでしょうか)
em(すまほ……るんば……どういうものなのか理解すれば戻った世界で再現できるのでは?)
em(いや、今回はゾムさんに専念するとしましょう)
▶
数週間が経った。
毎朝声をかける。昼は一緒に食べる。放課後は帰り道が同じ方向じゃなくても少し遠回りして送る。
ゾムさんが何か言うたびに、ちゃんと返す。笑ったら笑い返す。困っていたら手を貸す。
em(順調ですね)
ゾムさんがこちらを探す頻度が、少しずつ上がってきていた。
まずは、丁寧に、相手を満たしてあげた。
そして、次に相手を突き放すための準備だった。
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そして。
ある朝、エーミールはいつもの廊下を通らなかった。
別のルートで教室に向かった。
昼休み、購買には行かなかった。
放課後、図書室に向かった。
em(……さて)
スマホを見る。ゾムさんからのLINEが三件来ていた。
zm:エミさん今日どこおった?
zm:購買おらんかったけど大丈夫?
zm:帰り一緒に帰れんかったな、また明日ー
既読だけつけて、返信はしなかった。
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三日目。
zm「エミさん最近どうしたん?なんか忙しい?」
廊下で声をかけてきた。顔を見ると、いつもより少しだけ眉が下がっている。
em「ちょっと用事が重なっていて」
zm「そっかー。……まぁ、しゃあないな」
笑っているが、目が笑っていない。
▶
五日目。
zm「な、なぁエミさん、昼飯一緒に食べへん?」
珍しく、ゾムさんの方から誘ってきた。
少し怯えたような、表情だった。
em「今日はちょっと……」
zm「……そっか」
返事が短かった。いつものゾムさんなら、もう一押しくらいしてくる。それがなかった。
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シャオロンさんからLINEが来た。
Sha:ゾム寂しがってんで
Sha:元気ないから痴話喧嘩なら他所でやれや
相変わらず友達思いなこと。
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七日目の夜。
スマホが鳴った。
メッセージではなく、電話だった。
em「……はい」
zm「エミさん、なんかあった?」
声が少し掠れていた。
声が少し震えていた。
em「何もないですよ」
zm「……ほんまに?」
em「ええ」
沈黙が続く。
zm「……俺なんかした?」
em「していませんよ」
zm「じゃあなんで……」
また沈黙。
zm「……エミさんおらんと、なんか、変な感じするねん」
em(……ああ)
胸の奥で、何かがゆっくりと満ちていくような感覚があった。
em「ゾムさん」
zm「……なに」
em「明日、昼飯一緒に食べましょう」
zm「……え、ええの?」
em「もちろんですよ」
電話の向こうで、ふっと息が抜ける音がした。
▶
翌日から、また毎日一緒にいた。
ただ、以前よりさらに満たすようにした。
ちょっとした行動、言動。
小さな差だ。でも、積み重なる。
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em「ゾムさん、寒くないですか」
zm「……ちょっとだけ」
迷わず自分のマフラーを外して渡す。
zm「え、エミさんは?」
em「俺は大丈夫です」
zm「……ありがと」
マフラーを受け取って、ゾムさんが少し俯く。耳が赤い。
▶
いつの間にか、ゾムさんが腕に絡んでくるようになっていた。最初は偶然を装って袖を掴むくらいだったのが、今は当たり前のように腕を組んでくる。
信頼と怯えが行動に表れていた。
▶
夜、LINEが来た。
zm:エミさんおやすみ
em:おやすみなさい
zm:また明日
em:ええ、また明日
以前は、そんなことを言わなかった。おやすみだけ言って終わりだった。
「また明日」は、明日を楽しみにしている言葉だ。明日も会えることを、当たり前だと思い始めている言葉だ。
em(いいですね)
目を閉じる。
また、そんなことを数週間繰り返した。
▶
今度は、長めにした。
LINEの返信を遅くする。既読をつけるのを夜にまとめてやる。昼飯は「用事がある」と断る。帰り道は別のルートを通る。
以前と違うのは、たまに顔を出すことだ。
三日に一度くらい、ふっと現れて、いつも通りに接する。それからまた離れる。
em(不規則にする方が、効きますね)
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七日目。
廊下でゾムさんとすれ違った。
zm「エミさん……!」
顔を見て、少し驚いた。目の下に隈がある。
em「ゾムさん、お疲れですか」
zm「っ、エミさん最近どこおったん、」
em「ちょっと色々と。ごめんなさいね」
zm「……いや、ええけど、ぅ、」
ゾムさんが言葉を続けようとして、やめた。唇を少し噛んで、視線を逸らす。
zm「……」
em「すみません急いでるので」
それだけ言って、別れた。
後ろから視線を感じたが、振り返らなかった。
▶
十日目の夜。
LINEが来た。文字を打っては消した跡のような、短いメッセージだった。
zm:エミさんて、友達やと思ってる?
em(……ああ)
返信を打つ手が止まる。
これは予定外だった。もっと感情的なメッセージが来ると思っていた。「なんで連絡くれないの」とか「寂しい」とか。
でもゾムさんは、そうじゃなかった。
em:思っていますよ。ごめんなさい、最近そっけなくて
em:明日、飯行きませんか
既読がついて、しばらく間があった。
zm:ええの?
それだけだった。
自分よりも、相手を気にするような。
▶
ut「……エミさん、ゾムから泣きながら相談されたんやけど……なんかしとる?」
ut「まぁわかるで。エミさんは元の世界でもゾムが大切やったもんな」
ut「ゾムの映ってる防犯カメラの映像抜いてるって聞いたときは……まじか、と思ったで」
ut「……ええの?」
ut「今のゾムはぐらぐら。誰かに優しくされたらすぐ依存するで」
ut「…………ようするに、ゾムを狙ってるんは、お前だけちゃうねんで。エーミール。」
em「……知ってますよ」
鬱先生が少し目を細めた。
em「ゾムさんが泣いていたんですか」
ut「…」
em「……そうですか」
胸の奥で何かが動いた。罪悪感ではない。もっと別の、粘度の高い何かだ。
思わず恍惚な笑みを浮かべる。
鬱先生が何か言いたそうな顔をしたが、結局何も言わずに去っていった。
▶
その夜、珍しくこちらから電話をかけた。
コール二回で出た。
zm「……エミさん?」
鼻声だった。
em「ゾムさん、今夜暇ですか」
zm「……え、うん、暇やけど」
em「部屋に行ってもいいですか」
zm「……ええの?」
em「はい」
▶
ドアを開けたゾムさんの顔を見て、思ったより酷い状態だとわかった。
zm「……エーミール」
em「入りますね」
返事を待たずに部屋に入る。ゾムさんがそのままドアを閉めた。
部屋の電気は薄暗かった。クリーパーのぬいぐるみがソファの上に転がっている。
em「座ります?」
ゾムさんが素直にソファに座る。隣に座ると、すぐに袖を掴んできた。子どもみたいな握り方だった。
しばらく、何も言わなかった。
zm「……エミさん、最近喋ってくれへん」
zm「会ってくれへん」
zm「……避けるん、なんで」
答えなかった。ゾムさんの手が、袖からシャツの裾に移る。
zm「俺、なんかしたん?」
em「してませんよ」
zm「じゃあなんで……なんで急にいなくなるん」
声が震え始めていた。
zm「俺、エミさんおらんと、なんか、おかしくなりそうで」
em「……」
zm「ご飯も、なんか美味しくないし、寝れんし、夢にでてくるし……っ、なんかもう、」
ゾムさんが両手で顔を覆う。肩が小さく揺れる。
zm「エミさんのことばっかり考えてしまうねん……!なんでやねん、おかしいやろ、わかってるねんけど、」
嗚咽が漏れた。しっかりと、泣いていた。
em「……ゾムさん」
zm「っ、ごめん、なんか、ごめんな、こんな、」
em「謝らなくていいですよ」
泣いているゾムさんの頭に、そっと手を乗せる。
小さい。こんなに小さかっただろうか。
em(……かわいいですね)
愛おしい、という感情がじわじわと胸に広がる。計算でも、戦略でもない。ただ純粋に、この人をずっとこうしておきたいと思った。
壊れそうなものを、壊れないように閉じ込めておきたいような。
em「離れないですよ」
zm「……え」
em「もう離れません。約束します」
ゾムさんが顔を上げる。目が潤んでいる。鼻が赤い。涙が一筋、頬を伝っている。
em(……ああ)
親指でそれを拭う。
em「だから、ゾムさんも」
em「離れないでくださいね」
zm「置いていかん?」
em「置いていきまへん。」
ゾムさんが額をこちらの肩に押し付けてくる。
em(……)
この人を、自分だけのものにしたい。
その感情だけは、最初から計算の外にあった。
▶エーミール√:共依存エンド
丁寧なエーミールよりも関西弁エーミールが好きです。
㎎
#Mrs. GREEN APPLE🍏
こんぶ@ミセス推し
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エキゾチックモンスター
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コメント
2件
私、四流の共依存が1番好きなんです!!! もう嬉しすぎてニヤニヤしながら見ちゃいました。 続きとても楽しみです((o(。>ω<。)o))
**第11話読了!** もうね、エーミールの計算高さと執着がダダ漏れで最高だったわ。 「依存させる方法」ってタイトルだけで震えた。 ゾムが泣きながら電話してくるシーン、胸が痛いのにエーミールの恍惚とした笑みで全部持ってかれた。 「かわいいですね」の一文に全持っていかれたわ。 共依存エンドって言い切る潔さも好き。 続きが気になりすぎる…!🔥