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黒星
21
#シリアス
「若い頃はそれこそ嫌ってほどヤりまくってたけどさ、今はもうAV見るだけで十分。デリヘルも風俗も、行く気すら起きねぇよ」
「やっぱりトラウマ?」
颯太の声音から、からかうような色が消え、少しだけ真面目なトーンが混じる。
俺は自分の腹部にそっと手を当てた。
衣服の上からでも、あの夜に刻まれたナイフの傷跡の感触が、記憶の底から蘇ってくるようだった。
「そりゃそうだ…ホスト時代のトラウマがえぐすぎて、マジでリアルの女怖ぇんだよ。笑顔の裏で何を考えてるか分かんねぇし、もう恋愛もセックスも、真っ平御免って感じ」
「うっわ、拗らせてんね~~~」
「しっ、仕方ねぇだろ……!」
「まあ、実際問題としてさ」
颯太が手元のタバコの箱から、今日2箱目となる新しい一本を抜き出しながら言った。
「オレたち長年ホストやってたんだから、人間の汚い部分も、狂気も、色々見すぎたし経験しすぎたよねぇ…」
「そうなんだよな……」
俺は深いため息をつき、ぬるくなったビールを喉に流し込む。
現役時代、何人もの女の人生を狂わせ
金を巻き上げ、甘い言葉で縛り付けてきた。
その報いが、あのナイフだった。
「今となってはさ、街でいい女見かけても『何か裏があるんじゃないか』とか無意識に疑っちまうんだよ……」
俺が情けなくこぼすと、颯太は紫煙の向こうで少し真剣な表情を浮かべた。
「でもさ、晃。このまま一生独身でいるつもりなの?」
「た、多分……。一時期は女のヒモになるのも考えたけど、万が一相手がメンヘラでキレて、昔みたいにまた刺されたら本気で死ぬし…」
「ぷはっ!!やばっ!それは嫌すぎる~!」
盛大に吹き出した颯太が大爆笑している傍らで、俺はむすっとした顔で話を逸らした。
「……そういう颯太こそ、今は確かキャバ嬢の女の家に転がり込んで、優雅に暮らしてんだろ?」
「あー、それね」
颯太はタバコを灰皿でもみ消すと、実にあっけらかんと言い放った。
「今日、追い出されたんよ」
「は?追い出された?? 初耳なんだが??」
「今言ったからね」
「なんで追い出されたんだよ。ついこの間まで『最高の爆美女のヒモになったわ』って自慢してたじゃんかよ」
「なんかさー、『タバコ臭いから家で吸うのやめて』『禁煙してくれないなら家追い出すから』ってずっと言われてて。で、その約束破ってベランダとかでコッソリ吸ってたら、愛想つかされた感じ?」
「…ま、お前レベルのヘビースモーカーが禁煙できるわけねぇもんな」
「でも聞いて!1日は禁煙できたんだよ!スゴくない?!」
「いや、24時間我慢しただけで、それ禁煙って言わねぇから」
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