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黒星
21
#シリアス
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お互いのくだらなさに、二人してしばらく馬鹿笑いした。
笑い声が収まると、急に部屋の中が静かになる。
開け放した窓の外からは、生ぬるい夏の夜風がカーテンを揺らし
遠くの街の喧騒がかすかに響いていた。
「ねえ、晃──」
「なんだよ」
「人生、どこで変わっちゃうのかねぇ」
いつも飄々としている颯太が、珍しくしみじみとした、哀愁を帯びた声で呟いた。
かつて夜の世界で数千万を売り上げていた男たちの、これが成れの果てだった。
「お前こそ、ヒモ生活が破綻したんだから、これからどうすんだよ。行くあてあんのか?」
「んー……」
颯太は部屋を見回し、ニヤリと笑った。
「俺、今日からここ住むわ」
「……は?? なんて?」
「だ~か~らぁ……今日からあきらの家に住むって言ってんの!」
「いやいや、急展開すぎるだろ!?なんで俺のアパートがお前の新しい喫煙所にならなきゃなんねぇんだよ、却下だ却下!」
「だって行くところないし! 他に頼れるまともな友達もいないし!」
「だからって───」
「それに!家賃半分払うし!カス同士、仲良くしよ?」
「喧嘩売ってんなら買うぞ?」
「だってあきら、完全に酒カスじゃん」
部屋の隅に積み上がった空き缶の山を見つめられ、俺は言葉に詰まる。
「…ぐ、ぐうの音も出ねぇ……」
「あと、追加の特典として料理作ってもいいよ?俺、ホスト時代は結構ちゃんと自炊してたし、味の保証はするし」
「マジで?」
「まじまじ!結構優良物件じゃない?独り身の男の家に、料理ができる友人が転がり込んでくれるんだよ?」
「まあ、確かに……」
正直に言うと、この何もないワンルームでの一人暮らしには飽き飽きしていたところだ。
引退してからというもの、社会との接点も薄く、話し相手もいない寂しい毎日。
そんな中で、コイツとこうしてバカ話をしながら飲む時間だけが、唯一の癒しになりつつあったのは事実だ。
「……わかった。そこまで言うなら、住ませてやるよ」
「やったぁ!ありがと~~!! あきらのお陰で住居確保できたわ」
バンザイする颯太を見て、俺は少し呆れたように笑う。
「ってか…やっぱりお前、禁煙はしないのかよ」
「いやぁ、むずくない?手持ち無沙汰だし、吸ってないと口寂しいし…あきらだって、酒辞めれないんでしょ?」
「まあ……人のこと言えねぇわな。アルコールがないと夜眠れねぇし」
「───じゃあさ」
颯太が新しいタバコを咥えようとした手を止め、まっすぐに俺の目を見た。
「一緒に脱酒カス・脱ヤニカスしない?」
「は?どゆこと?」
唐突すぎる提案に、俺は完全に首を傾げた。
「ほら、お互い酒と煙草をやめる絶好のチャンスじゃん?」