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中村はベルトコンベアーの突き当りにある。みっつの台。そこに立って目視をするようだ。おそらく楽そうだと思っているのだろう。
けれども、
「自給は1時間で、1000円だから頑張って」
田戸葉さんの言葉に私だけは、首を傾げたかった。何故か違和感が拭えないのだ。
「何時頃から働けるの?」
「今日から大丈夫です」
中村・上村が元気よく言った。私だけ青い顔をして頷く。違和感が強くなる。
「では、これから作業の説明に入ります」
田戸葉は壁にあるホワイトボードのところに、私たちを連れて、
「ここに書いてある通り、ペットボトルの量が……厳しくやるので、頑張って働いて下さい」
……
「では、今から午後の五時までお願いします。あ、残業あるから」
私たちは一斉に台に立ち、作業着はエコールと同じく上着だけを着て、黙々と作業を始める。
「あの谷川さんは?」
私は隣の中村に小声で聞いた。
「さあ、誰だそれ?」
中村が首を傾げる。
「え、エコールの谷川さんですよ。5年間も一緒だったはず」
「エコール……知らないぞ。何かの映画の話か? ……ここは今日が初めてだろ?」
「え?」
中村と上村は不思議がる。
私は最後まで、不思議な体験をした時の頭にスポンジを入れられた様な感じの頭をしていた。
今日は残業があると言われたが無かったなと、仕事を終えた時の達成感を覚えながら家路に着いた。
自動販売機に130円を投入し、「御疲れ様。」のいつもの機械音声を聞く。
谷川さんは一体どこへ?五年間の時間も消えた。ここは現実なのか?あ、それと呉林に今日は会えないな。謝るのは明日にしよう。
自分のアパートに着くと丁度、安浦から家の黒電話ではなくて、携帯へ電話がかかってきた。
「ご主人様。夕食を作りますが?」
そういえば、私は5年間も続いているコンビ二弁当やカップラーメンなどは、さすがに飽きているので、出来ればお願いすることにした。そして、塩ラーメンよりも美味い。
「お任せ下さい。ご主人様」
アパートのスチール製の階段から、ドタドタと足音が聞こえてくる。見れば安浦が食材の入ったビニール袋を片手に、走ってきた。まるで、待ち伏せの様だ。
「ご主人様ー!」