安浦は元気いっぱいの顔で、私の家に入ってきた。私は部屋にいる時はドアを開け放しにしまう癖がある。
何とも凄い人に好かれてしまったものである。けれど悪い気はしなかった。今更ながら奇妙な絆のある味方を持ててよかったと思う。
「待ってて下さいね! すぐに出来ますから!」
私は角材でできたテーブルに着いた。そして、おもむろに立ち上がり、奥の間からスチール製のイスを持って来て、テーブルの私の位置から反対側に置いた。また、安浦がテーブルに座ってしまうと思ったからだ。
「ふんふんふーん」
何も隔てがないキッチンから、安浦の鼻歌と料理特有の音が聞こえたかと思うと……料理が運ばれる。
私は角材のテーブルに、所狭しと並んだ料理を目の当たりにして、息を飲んだ。人間伎じゃないのだ。
ガーリックソースのステーキ、トリュフを刻んだ肉汁のスープ、小魚のホイル焼き(味噌風味)、一口サイズの幾つものフランスパン。
それらが二人分用意されている。
「本当にありがとう。安浦。今度は俺が何かしてあげないと」
「そんな。これくらいのこと当たり前ですよ。ご主人様。特別でもありますが」
安浦はにこにこして言っているが、私はドギマギし、これからは夢の世界でまた安浦を守ってやろうかと、この時強く思った。思えば、呉林にもとても助けられたし、これからは生来の小心者の私も、どんな時も仲間のために戦っていこうと決めるのだった。
「今度はどんな世界の夢になるのだろうか」
「あたし。今度は楽しい世界にご主人様と一緒に行きたいな」
素晴らしい食事を楽しんだ後のこと、
「俺もそう思うんだが……。あ、いや、安浦と二人でって訳ではなくて……」
私は自分でも驚くほど、ぎこちなくなっているのに気づく。けれど、もともと、そういうのには疎いので、極力、夢のことを考える。それに私の心には強い呉林がいた。
「俺の考えだと、あの一連の夢は人が生きていけないように、邪悪に造られてるとしか思えないんだが、だから一度くらいは気楽な夢があればと思って」
「ふーん」
安浦は私の顔に何か意味ありげ視線を向ける。
「気楽でもいいから、あたしはご主人様と二人っきりの夢に行きたいな」
「ああ。そん時は二人で楽しく夢の世界を満喫しよう。そして、飽きたら戻ってくればいいのさ」