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「そうです。佐藤家の家政婦をしている遠藤美咲です」
そして次第に眠気が覚めてくるのと同時に、自分の置かれている状況を把握し始めた。
僕は慌てて隣の席を見た。
しかし、葵さんの姿はなかった。
「葵ちゃんですか?」
「えぇ…」
「紺野くんより少し前に目覚めて、トイレに行ったわよ」
遠藤さんは、僕が葵さんを探しているのに気付くと、そう教えてくれた。
「そうですか…。それより遠藤さん、どうしてここに?」
「葵ちゃんからメールがきて、迎えに来たんだけど…。お邪魔だったかしら?」
「そんな事はないですけど…。葵さん、遠藤さんには絶対連絡しないって言ってたんで…」
「そうなんだ…。でも、これを見れば本当の事だってわかるよ」
すると遠藤さんは僕の横に座り、葵さんからのメールを見せてくれた。
確かに、メールは葵さんから遠藤さんに送られていた。
それにしても、あれだけ遠藤さんには連絡しないと言っていたのに、急に気が変わるなんて何かあったんだろうか?
考え事をしながら、隣にいる遠藤さんに顔を向けると…
僕の目の前には、あと数センチで触れてしまいそうな距離に遠藤さんの顔があった…。
良い香りがした。
横顔がとてもステキで大人の色気を感じた。
「あおっ‥」
「んんっ…‥」
えっ!?
「・・・・・」
「・・・・・」
「ごっ‥ごめん…‥」
「えっ…あっ…はい…‥」
振り向きざまの遠藤さんの唇と僕の唇が…‥
事故だった…‥
不可抗力だ…‥
そう言えば、前にもこんな事があったような…‥
その相手が誰だったのかは思い出せない…‥
でも、確かにこんな事があった。
「美咲ちゃん…私、さっきも言ったけどメールなんて送ってないし、迎えに来て欲しくなんてなかった!」
葵さんは、部屋に入ってくるなり顔を赤くして怒っていた。
それは先程の僕と遠藤さんのやりとりを見てしまったからかもしれない。
「葵ちゃん…ゴメンね。わざとじゃないから…‥」
「わかってる…。わかってるけど、自分の感情を上手くコントロール出来ないの」
「そりゃそうだよね。葵ちゃん、紺野くんの事…小学生の頃からずっとすっ‥」
「んっ…んんっ」
これ以上2人の会話を聞かない方がいいと思い、咳払いをして制止した。
「紺野さん…お恥ずかしい所を、お見せしてしまってスイマセン…」