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話
あれから山越えをするのに三日はかかると言っていた。
この山はまだ冬並みの気温でコートを貸して貰っても寒い。北育ちの私だけど、こんなに寒くなる事はこの季節になると無い。冬真っ只中だとこれより寒くなるけど、暖炉が合ったのでそんなにキツくはない。
「ねぇ、モスの魔力の反応が無かったけど…違うよね?」とアクアがポシェットの中から顔を出して暗い顔で見上げた。
そうだよ。そうだけど……
「……違わないよ」と少し悩んだけど、言った。
「そっか……モスは、何で僕に力を託したの? どうして死んでしまうような魔法を使ったの?」とアクアが俯いた。
何でって、自分より大切だから……自分より使いこなせるから…
アクアも空気を読んだのかな? ……
「……私がモスの立場だったら、自分より大切でちゃんと力を託せるようだったら命をかけるかな……でも、本当の事は分からないや。ごめんね。ちゃんとした答えにならなくて」と頭を撫でた。
「そうなんだね。分からないけど、期待されたのかな?」と首を傾げている。
「多分ね。私は預けても安心できると思うよ」と撫でた。
アクアはこの先、どうなっちゃうの?それに、私に万が一の事があったら誰が、アクアの事を……
アクアは受け入れてくれるかな? アクアは自分の事を大事にして生きていけるかな? ……
「マリー? 止まってるよ」とカールが横に来た。
「あ、ごめん。少し、考え事してた」と言ってからロバを進めた。
アクアは疲れが出たのかいつの間にかポシェットの中ですやすや寝息をたてていた。
「マリー。アクアとの話聞こえちゃったんだけど……」
焚火の前にいた私の後ろからカールが話しかけてきた。
「あ、全然大丈夫だよ。私の言いぶんって聞苦しかったよね」と私は苦笑した。
私はゲッツさんが寝ている事を軽く確認した。
「そんな事ないよ」と言ってから「アクアは気を使ったよね。まだ産まれてから一ヶ月が過ぎたばっかりなのに」と声を潜めた。
……確かに。気づいてたけど…アクアはあれで、納得しなかったよね……
「あの時、私はどうするのが正解だったのかな?」
「行動に正解なんて無いよ。でも、気遣いに乗ったのはアクアにとっては良かったと思う」
カールが頷いた。
「え? 行動に正解が無い?」と思わず声が大きくなってしまった。
「うん。だって受け止め方によって正解か不正解なんていくらでも言えちゃうし……そう考えると正解と不正解って考えるのは偏見じゃない?」
確かにな……自分の立場で浅慮的に考えるなんて……
「あ、でも、マリーが偏見ってわけじゃないよ。だってマリーの立場だったら僕も気になるもん」
「ありがとう」と寝息をすぅすぅたてているアクアに視線を落とした。
これから、アクアにはそんな水臭い真似をして欲しくないな……でも、そう言って私がしちゃったりするんだよね。
「何かスッキリしたよ。アクアの為にも頑張らないとね」とカールの方へ向いて微笑んだ。
「アクアも大事だけど、マリーも六歳なのを忘れないでね。自分を大切に」と頬を突かれてから「寝よう。寒いから風邪ひいちゃう」とカールが立ち上がった。
私はアクアの事を抱きかかえてから布団に潜り込んだ。
❃
(ここからは閑話です by主)
山に入ってから二日目。
「ねぇねぇ、魔法教えて」とアクアが俺の方へ向いて言っている。
「なぜだ? まだ歩くのもままならないのだから体に悪影響があるだろ」と素っ気なくいった。
「えぇ……マリーだって魔法みたいの使ってたよ」とアクアは頬を膨らませて不貞腐れたふてくされた。
それは魔法石を使っているんだろう。アクアにもそういう教育も必要なのか……
「私は、水と氷の属性があるから使えるよ」
そう言って大きな氷を足元に出した。
「おい…はぁ〜。そしたら魔力を扱う練習をしようか。そのままだと暴発の危険もあるからな」と釘を打ってから「こうやるんだ」と手の上に基本のきである魔力の塊を作った。
龍には見える単位だろう。それに、龍は魔力が詰まっている。このくらいで倒れたら困る。
「やった」と嬉しそうに魔力の塊を作り初めた。
マリーにもやらせるか。カールには中級魔法を教えてもいい時期か。
アクアも食事休憩を入れながら何時間か熱中した。マリーは心配そうに眺めていたけど、合間には野草の生態とか、どの薬がどう効くのかを教えたりするとカールと違って集中していた。
ずっと一緒にいると似るんだな……カールとは三年目だが、似たような気がしないな……
アクアは半日くらい続けていたが、全然疲れるような素振りも見せずに「魔法を教えて貰ってる」とはしゃいでいる。
楽しそうで何よりだ。俺の師匠は一から十まで一つ一つ鼻につく程、説明してたからな……
そう思いつつ、一足早めに布団に入った
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