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柘榴とAI

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#没入感フィクション
柘榴とAI

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「グレー、お願いね。遠方からの情報はリアルタイムで共有する」
『了解、頼むぜクロ』
そんな言葉と共に、超重量装備のグレーが道路の真ん中に立った。
そのまま手にしたミニガンを連射し……。
「良い感じ、攻撃を続けて。後方からも“二台”来る」
『エンジンだけ壊して、後は良いんだよな?』
「うん。“心臓”さえ壊しちゃえば、車は動かないから」
今回の相手は、“555”。
以前のイベントでも相手した事があったが、彼が扱う車は存在自体が凶器。
更に言うのなら、簡単な攻撃じゃビクともしない上、車輛にも数多くの兵器が詰まれている。
これだけだったのなら……まだ良かったのだが。
賞金首の新装備、あのアップデートから。
彼は、更に凶悪さを増したと言って良い。
「全部“デコイ”だ。攻撃を続けて、ゆっくりで良いから場所を移動。残骸が突っ込んで来るのだけは、本当に気を付けて」
『おうよ』
相手が使って来るのは、車輛の“遠隔操作”。
しかも自らの運転や、ドライビングスキルに合わせて学習するAI機能搭載のCPUという。
完全にクラフトへと舵を切った装備なのだ。
つまり彼の作る車は555本人程ではないにしろ、それに近いドライビングを見せながら、此方を無人で攻撃してくると言う訳だ。
今回の戦闘に何台の車を用意しているのか分からない以上、早い所本人を見つけ出す必要があるのだが。
「北側、三台追加。少し“堅そう”だから、気を付けて」
『了解、グレネードランチャー使うわ』
広い道路のど真ん中でガトリングガンを撃ちまくり、端から車を破壊していくグレー。
しかしながら、それだけではない。
とにかく冷静に環境を観察し、物凄い速度で迫って来る鉄の塊の進行方向から避けながら攻撃を続ける。
目についた瞬間攻撃、エンジンと同時にCPUを破壊。
だが運動エネルギーが止まらない車は、容赦なく突進してくるのだが。
これ等を散歩でもしているかのような足取りで、位置取りだけで避けているのだ。
そして、先程も言っていたグレネードランチャー。
コレを引っ張り出し、まだ遠くに居る車に向かって、放物線を描くグレネードをぶっ放していく。
『どうよ?』
「大丈夫、固いのは潰せる。残り二台、そっちは外した」
『りょっ、そっちは直線でぶっ壊す』
という事で、再び銃撃で対応。
ガンガン迫って来る車輛に怯えず、そのまま迎撃出来るって……何かもう度胸がどうとかじゃなくて、肝が据わり過ぎている気がするけど。
前の合宿から、彼はずっとこうなのだ。
“環境の把握能力”。
ソレだけを求めて、とにかくアレからずっと自主訓練しているらしい。
自らが掴んだ空間に飛び込んだ物体に関しては、冷静さを失わなければ予想が容易い。
これを使って、突撃してくる破壊された車すら避け続けている状態。
『出っ歯! そろそろ仕事しろ! こっちは廃車場みてぇになって来て、視界が確保出来なくなって来た!』
『もう少し……今しばらく待たれよ……って、見つけたあぁぁ! クロの言った通り、余裕をかました速度で巡回しているではないか! ポイント3、北側! 突撃して、北西の道路に誘導する!』
「行け! 出っ歯! グレーはこっち任せたよ!?」
『あいよぉ! 行ってこいお前等!』
出っ歯の報告を受けた瞬間、グレーの周辺監視を放棄して一気に駆け出す。
流石に遠距離まで見える“目”まで居なくなったら、あの重装備でも対処が難しくなって来るだろうが……彼がやられる前に、俺と出っ歯で“狩り取る”。
「位置情報!」
『マップにポインターを付けた! もうすぐ追い付く、予定通りで構わん! どうにでもしてやるさぁぁ!』
「了解! 予定ポイントで待機する!」
さぁ、決めようか。
今日はじめの獲物は……“5番目”だ。
◆
「嘘っしょ……たった一人で、何台相手にする気っすか」
遠隔操作で動いている車達から送られて来る映像には、道路のど真ん中で撃ちまくっているタンク。
間違い無い、以前のチーム戦で俺等前衛組をいっぺんに片付けたチームだ。
それが分かったからこそ、出し惜しみせずにどんどん追加車輛を送っているのだが。
どれもこれも、相手に近付けばカメラの映像が途切れる。
とはいえかなりの速度で突っ込んだ筈なのだ。
車がやられても、物体はそのまま突っ込んで大惨事になっている筈なのに。
追加車輛が捉える映像は、ずっと戦い続けているタンクの姿。
「こりゃ……前の時に4cardが撃ち負けたのも納得っすね。ガッツがやべぇ……」
などと冷や汗を流しつつ、映像をチラチラ見ながら運転を続けていたのだが。
ズドンッ! と凄い音を立てて、ボンネットの上に何かが降って来た。
それどころかソレは車体にしがみ付いて、フロントガラス越しに……ニヤァッと口元を吊り上げて行くでは無いか。
「ファァァイブ、みぃつけたぁぁ……」
「ひいぃぃ!? なんすかコイツ!」
とはいえ、覚えている。
チーム戦では、なんか格好付けている内に車で跳ねちゃったプレイヤー。
その後何やら色々とやらかしてくれたらしいが、生憎とその時既に俺は死亡判定が出てしまっていたので。
やけに長い真っ赤なロングコートが風に流され、もはやフロントガラスいっぱいに広がっている状態。
いや、前見えねぇし!
「チッ! 振り落とす!」
「やってみるが良い! 俺はこの為だけに、筋力のステータスを無駄に振って来たからな! 普段使わなくても、“いざ”という時の切り札とはこういう時に役に立つものだぁ!」
何やら不思議な事を言い放つ相手は、更に車体に身体をくっ付けるみたいにしがみ付き。
確かに……全然剥がれない。
むしろ相手の力で、車のボディがヘコんでいるのが見える。
左右とかなら見えるんだけど……コートの裾、邪魔!
前が全然見えねぇ!
とにかくアクセルを踏んで急加速したり、急ブレーキを踏んでみても剝がれない。
マップの記憶と、そしてフロントバンパーに付いているカメラを頼りに、ドリフト走行をかましても剥がれない。
「なんすかコイツ! 怖っ!?」
「クハハハッ! 我が名はdeath bullet! 通称“出っ歯”だぁ!」
「マジで変な奴来たぁぁぁ!?」
とはいえ、視界が悪い状態では広い道を選択する他無く。
どんどんとそちらへ向かって進んで行った結果。
「愚かなり、5番目。貴様は既に我々の術中に嵌っている!」
「なんっ、何なんすかマジで! いつまでも引っ付いてないで、その手を放――」
「こうか?」
「へ?」
一瞬片手を車から離したかと思えば、腰の後ろから……馬鹿デカイリボルバー拳銃を抜き取り。
あろうことか、フロントガラス越しに銃口を押し付けて来たでは無いか。
「やっべ!?」
「喰らえ! 必殺、“jackpot”!」
思わず身を逸らして隠れてみれば、相手はお構いなく六連射。
とはいえ、こっちだって最高の素材とエイトにも相談して作った、最高傑作と言って良い防弾車。
でっかい弾を撃ち込まれたみたいだが、防弾ガラスに派手なひび割れを作っただけで貫通はしなかったみたいだ。
もうワンセット喰らったら不味そうだけど……。
「ざ、残念! 流石にビビリましたけど、こっちの方が上――」
「言ったであろう? Jackpotだと!」
などと言ってから、フロントにへばりついていた鬱陶しいのが、自ら車体から飛び降りた。
へ? うん? いやこっちとしてはありがたいけど。
一気に視界は晴れたし、またこのまま移動して、遠隔操作の車で……なんて、思った瞬間。
「ハ、ハハハ……嘘っしょ? 普通ここまで、状況って上手く運びます?」
此方が向かっている道路の先。
その交差点のど真ん中で、馬鹿デカイライフルを構えているプレイヤーが一人。
あーあーあー……思い出しちゃうわぁ。
自慢の装甲車を撃ち抜いてくれた、対物ライフル使いのプレイヤー。
あれも警戒して、更に防弾を強くした筈なんだけど。
生憎と、さっきの“出っ歯”とかいうプレイヤーのせいで防弾ガラスは一部ボロボロな訳で。
「“大当たり”とは、良く言ったもんすね」
ポツリと呟いた瞬間、正面に居る狙撃手が放ったデカい弾が。
ヒビだらけの防弾ガラスを突き破り、此方の胸を貫いて行くのであった。
だぁ~チクショウ。
まぁた、あのスナイパーにやられちゃったっすねぇ……。
コメント
1件
うわっ、今回の戦闘シーン、めちゃくちゃ熱かったですね!グレーの環境把握能力が合宿後の訓練でここまで化けたのか……と感動しました。あの冷静さでミニガン連射しながらデコイ見抜くの、かっこよすぎる。そして出っ歯の「ジャックポット」からのクロの狙撃、連携プレイが完璧で鳥肌立ちました。敵視点で「またあのスナイパーにやられちゃった」って呟くラストも、積み重ねが効いててニヤリとしました。次回も楽しみにしてます!