病院を退院した後は親戚中をたらい回しにされた。最初のお家では僕は邪魔者だった。
零(幼少期)「僕も遊園地行きたい…」
女性「なんであんたも行くのよ!娘との時間を取らないでちょうだい。家族でも無いんだから待ってなさい。」
零(幼少期)「…はい…」
ご飯も、服も、お風呂も与えてくれた。でも、何をするにも邪魔者でご飯も、お風呂も、寝る時もひとりぼっちだった。
次のお家ではまるで道具のように扱われた。
掃除、洗濯、ご飯、全てこなすように言われた。
零(幼少期)「次は洗濯して、その次はご飯を作らないと帰って来ちゃう。急がないと。」
男性「おーい!飯はまだかよ」
零(幼少期)「もう、少しで…」
男性「は?俺が帰って来るまでに作っとけって言ったろ!もう、いい。」
零(幼少期)「ごめんなさい…」
僕の居場所はここにも無かった。
次の家では酒癖が悪くて、暴言や暴力が日常茶飯事だった。
女性「おいっ!早く酒持って来い!!」
零(幼少期)「どこにあるかわかんないよ…」
女性「は?そんなの自分で考えろ!!この!」
零(幼少期)「痛いよ…」
女性「うるさいな!早く消えろ!」
大人なんてみんな汚いんだ。
そして今の家では僕は空気だ。ご飯も作ってくれない、話しかけてもくれない、何を言っても無視された。話してくれるのはお金の事だけ。
女性「あんたの貯金は養育費として貰っておくから。」
零(幼少期)「えっ…でも…」
女性「なに、育てて貰ってるんだから当たり前でしょう。文句言わないで。」
零(幼少期)「…わかりました。」
そんなにお金が大事なんだ。
そんな状態で小学校に入学し、瞬と出会った。
瞬の両親には沢山お世話になっている。
毎日学校が終わったら、瞬の家に行ってご飯を食べて、お風呂に入って、こっそり家に帰るのが中学までのルーティーンだった。
これ以上、瞬にも、瞬の両親にも迷惑はかけられない。高校からは1人で暮らそうと思ったが、15歳のガキがそう簡単に出来るわけもない。
瞬の両親がお金を出してくれて、感謝している。だから、早くプロになって恩返しする。
そう心に決めている。
俺は過去のこと、今の気持ちを全て嘘偽り無く
瞬に話した。
零「俺はあの放火事件の犯人を見つけたい。
どうしてあんな事した理由が知りたい。
それに知りたい事は沢山あるし。」
瞬「なんで今まで話さなかった。」
零「それは…べつに話すことでも無いと思ったから…」
瞬「おれはっ!!ずっと知りたかったよ。零の過去のことも気持ちも。でも、零が話したくないなら無理に聞き出す必要は無いと思ってた。」
瞬「でも今、零が話すことじゃないって言ったとき、俺は悲しかったよ。小学校の頃からずっと一緒に居て、毎日一緒に下校して、一緒にご飯食べて。喧嘩することもあったけど、俺はお前の事少なくとも家族だと思ってたよ!!」
瞬「でも、零は違ったみたいだね。そんなに頼りなかったか?自分のこと話したら俺が憐れむとでも思った?俺達の関係ってそんな薄っぺらいものだったんだな。」
そう言うと瞬は病室を出て行った。
ずっと瞬は1番信用できる存在だと思っていた。でも、俺が瞬のことを信用していなかった。
零「情けないな…俺、何してんだろ…」
その時声が聞こえた。
謎の少女「わかったかい?これが現実だよ。」
零「きつね様…これからどうすればいいんだよ」
きつね様が俺のベッドに座った。
謎の少女「君が今まで怖がって逃げ続けた結果だよ。逃げずに向き合えってこと。」
零「怖がってなんか…」
謎の少女「じゃあなぜ話さなかったの?」
零「…」
謎の少女「ほらね。君は怖かったんだよ。もし、自分の過去を、気持ちを話してしまったら、瞬くんとは今まで通りの友達じゃ無くなってしまうんじゃないかってね。」
零「普通はそうだろ…こいつ可哀想と思ったら、態度変わるだろ。」
零「小学校の時も、中学校の時も俺をバカにしてた奴らは俺には両親がいなくて可哀想な奴ってわかった瞬間、わかりやすく優しくなるんだ。」
零「瞬には友達で居てほしい。」
謎の少女「友達ねぇ…瞬くんは君のこと〝家族〟だと言ってたけどね。」
零「っ…!」
謎の少女「友達なら別に言わなくても良いとは思うよ。でも、家族ならどんな事言おうと、しっかり受け止めてくれるさ。その上で一緒に考えてくれるはずだよ。」
零「瞬はかぞく…」
謎の少女「君にとっての家族はお父さんとお母さんだけなの?ちゃんと君自身で答えを出すことだね。」
謎の少女「まあ、これからは夏休みなんだから、沢山時間はある。その時間をどう使うかだね。それじゃあ、そろそろ行くね。」
そう言ってきつね様は姿を消した。
俺にとって家族は父さんと母さん。でも、そうじゃないのかもしれない。
零「夏休みか…瞬とも向き合わないとな。」
つづく
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