テラーノベル
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『シロさん! そのまま走り抜けて!』
「は、はいっ!」
新装備のチェック、という意味もあるのだが。
クロさんが居ない間に、私が馬鹿みたいにステータスのポイントを“極振り”した事をお話した結果。
少し試したい事がある、と言い出した彼。
その結果……私は新しい装備を追加した状態で、NPCの敵陣のド真ん中を駆け抜けていた。
とにかく足の速さだけに特化したステータス、これをどうやったら最大に生かせるのか。
お互いに特徴を生かす戦い方は出来ないかと、模索した結果。
「う、撃って来ました!」
『かなり良い感じ! シロさんはとにかく全速力で目的地までダッシュ!』
広い工場地帯を、あり得ない速度で駆け抜けていく。
すると、此方の行動に驚いた敵は私の事を追おうとするか、逃げ去る私を撃とうとしてちゃんとした射撃体勢を取る。
本来想定している射撃方向ではない、むしろ味方の陣営とも呼べる場所に銃を向けるのだ。
NPCだからこそ、誤射の無い様な位置取りに移動する。
もしもプレイヤーだったとしても、ここに仲間同士の誤射が発生するかどうかの違いくらいで、行動自体は大きく変わらないだろう。
何たって相手の防衛ラインを、此方が本来やる事をせずに駆け抜けていってしまったのだから。
だからこそ、誰も彼もが突き抜けた私を止めようと“姿を見せる”。
すると、どうなるか。
離れた位置でこちらを見ているのは、“スナイパー”なのだ。
『連続キル取れてるよ! これなら的当てと一緒だね。向こうも混乱してるから、こっちに全く気付いてない!』
「す、凄いです! でもあのっ! もうそろそろ第二ラインまで到着しちゃいそうです!」
NPCステージというのは、一定のラインにプレイヤーが踏み込む事で次のフェーズへと進む事が多い。
つまりこのまま私だけ突っ込んだら、もっともっと敵が出て来てしまう事になるのだ。
『一旦姿を隠して! 大丈夫!? 止まれそう!?』
「なんとか……しますっ!」
どうにか敵から撃たれないであろう方角へと進路変更してから、思い切り踵を地面に突き立てブレーキ。
この前までのブーツだったら、これだけでも靴底がゴリゴリ減って行ったのだが。
今履いてるコレ、凄い。
なんかもう物凄く制動力が効いているのが分かるし、グッと踏ん張った時に靴底のスパイクが飛び出してくる仕組みみたいだ。
つまり、普段より力が掛かっている時はスパイクシューズみたいになって、そうじゃ無い時は普通のブーツ。
コンクリートや、金属の床の上をコッソリ歩く時はいつも通り足音が抑えられるのに。
全力で走ったり、今みたいにブレーキを掛けたい時はトゲ付きになる。
まさに走る為に良い所だけを取った、みたいなクラフト品だったらしい。
これはもう本気で、octopus8さんにはお礼をしなければいけないだろう。
というか、こんなの作れるとか凄い。
絶対工作上手い人だ、そっち系のプロなんだ。
『後ろはあらかた片付けたけど、シロさんに近い奴らがまだ追って来てる! 対処出来そう!? こっちからだと距離があるのと、角度が悪い!』
「ど、どうにかっ!」
ギャリギャリギャリッと凄い音を立てながらも停止してから、すぐさま物陰に飛び込んでみると。
追って来たらしい人達が、私が隠れている所に向かって滅茶苦茶撃って来ます。
当たり前だよね、防衛している筈の場所を突き抜けちゃったんだから。
そりゃもう絶対コロスって勢いで撃って来るよね。
という事で、牽制程度に此方も射撃。
物陰から銃だけ出して、適当に撃ちまくっているだけ。
当然だけど、こんなんじゃ当たる訳が無い。
けど、どうにかクロさんが射撃ポイントを移すまでは……私だけで、対処しないと。
なんて、思っていたのだが。
「うひゃぁっ!?」
こっちが適当に撃ちまくっていただけだとバレたのか、壁伝いに接近しましたって感じの相手が、急に目の前に飛び出して来たではないか。
しかも、先程まで私は乱射していた為……タイミングの悪い事に、マシンガンは弾切れ。
そっちは手放してハンドガンを抜こうとしたけど、6keyとは違って全体の筋力が足りていない46leatherのアバター。
これの影響と、慌ててしまった結果。
ホルスターから引き抜く際に、ハンドガンがすっぽ抜けて地面に転がった。
馬っ鹿! 本当にお馬鹿!
いつもだったら、この時点でパニックになっていた筈。
けど今は……新しく買ったでっかい防弾ジャケットを着ている為。
「ふっ!」
顔面と頭を守る様にして腕をクロスさせ、そのまま相手に向かって踏み込んだ。
こっちのキャラは、脚力にはガッツリ数字を振ったのだ。
だからこそ、踏み込みだったらメインキャラよりも速い。
そんな訳で、一瞬で相手の懐に飛び込んでから。
「てぃっ!」
敵のお腹に向かって、靴底を突き出した。
真正面からのキック。
いくら脚力を強化したところで、私の身長……というか足の長さと体重ではたかが知れているのだが。
向こうの腹部に靴がめり込むと同時に、グリッと普段はやらない捻じり方をしてみれば。
ズパンッ! と発砲音が響き、靴からはみ出た部分の靴底……に付いた、筒みたいな部分から薬莢が飛び出して来た。
結果。
「す、すご……」
飛び込んで来た相手は苦しみだし、その場に伏せてしまったではないか。
しかも、そのままキルしたという表記がログに残る。
これもブーツに備わっていた機能。
どうやらコチラ、一発限りのアンカーが飛び出る仕組みになっているらしく。
普通なら高所に登る際に使うロープの固定器具? みたいなのを撃ち込む簡易装備だそうで。
それをブーツに取り付けてあるんだから、本当に急ブレーキ用か……もしくは、急角度な場所でも立てる様にする為なのか。
よく分からないけど、こうして武器としても使えるみたいだ。
キ、キックで敵をやっつけちゃった……。
思わず唖然としている間に、再び数発の射撃音が聞こえて来て。
『シロさん大丈夫!? 正面のは全部終わったよ!』
無線から、クロさんの声が聞えて来たのであった。
「だ、大丈夫です! こっちも一人、やっつけました。凄いです、このブーツ。蹴りでキルしたの、初めてです……」
『お、おぉ……それはまた。アンカー使ったのかな? ちょっと見てみたい光景だったかも……』
そんな訳で私が囮、というか暴走特急する役回りで、続くステージも攻略していくのであった。
これはなかなか……面白いかもしれない。
というか、この足の速さは凄く良い。
制御は大変だけど、普段は全力で走らなければ良いだけって感じで慣らせるし。
6keyの方でも、逃亡用として速度のステータス上げようかな……。
◆
「ていう感じで、白川さんもガッツリ特徴伸ばし始めたよ」
『うはぁ~すげぇ。あのゲームで極振りして、よく操れるなぁ白川さん。前から思ってたけど、ゲーム慣れしてないって割に上手いよね。つか、あのステージ……スプリンターとスナイパーだけでクリア出来んのかよ。二人共やるねぇ』
『うおぉぉぉぉ! なんか俺もガンサバやりたくなって来たぁ!』
「『うるっさ』」
白川さんとゲームを終えてから、本日の事を友人二人に話してみれば。
グレーに関しては非常に感心した様子で、「こりゃ攻撃役が居れば相当安定するなぁ」みたいな事まで言っている。
どうやら他にやっていたゲームというのも落ち着いたらしく、近々こっちに戻って来るそうだ。
でもほんと、いつものメンバーでやったらどれ程楽しい事になるか。
白川さんが走り抜けて、敵に混乱を与えながら誘き出し。
グレーがその後に続いて、隙だらけの敵を重装備で制圧。
その間俺は先頭へ突き抜けた彼女の援護に回れるし、もしも手が足りない時は出っ歯にヘイトを買ってもらう役割を任せれば良い。
可能ならナナさんも誘って、彼女の機動力と射撃能力があれば……近距離からも、スプリンターの援護が出来ると言うもの。
今日以上に、安定した戦場が作り出せる事だろう。
最近は兄貴に訓練をお願いして、狙撃の練習に神経をすり減らしている事が多かったので。
なんだか、久しぶりのこういう空気は楽しい。
というのと、本日ばかりは白川さんも“思い切り楽しんでいる”って感じがして……凄く、良かった。
吹っ切れたというか、自分の戦闘スタイルをちゃんと見つけたって雰囲気で。
凄く、いっぱい笑ってくれた気がしたのだ。
こういうのもやってみよう、あっちも試してみようって向こうから言って来たくらいだし。
多分、相当スプリンターが気に入ったのだろう。
得意な事を見つけた子供みたいに、色々試したくて仕方ないって雰囲気。
なんともアレが……可愛かった。
「…………」
『どした、クロ。いきなり黙って』
『ふんっ! どうせシロさんと二人きりになれなくなるから、俺等は邪魔だとでも言いたいのだろう!? させぬ! 徹底的に邪魔しながら、全力で応援してやるからな!? 覚悟しておけ! ご祝儀はバイト代一ヶ月分包んでやるわ!』
約一名煩いのが居たけど、頭を振ってからいつも通りの会話を続けた。
俺には今目標がある、そしてソレを叶えるために本気で練習しているのも確か。
なのだが……本日の白川さんの様子を思い出すと、思わず頬が緩むのと同時に。
連鎖して記憶から出てくるのが……物凄く間近で見てしまった、ふともも。
アレは駄目だって、男子高校生が、あの距離で見て良いものじゃないって。
装備の項目に夢中になり、思いっきり眼前に迫っていた事に後から気がついたという。
今までは普通の戦闘服~って感じだったのに、あのブーツに合わせて短パンに履き替えていた影響で。
それはもうガッツリ見てしまいましたよ、と。
落ち着け、俺。
白川さんで不埒な事を考えるな、相手に失礼だろうが。
というか絶対引かれた……と思ったんだけど、その後は普通だったし。
セーフ? だと良いんだけど。
とにかく、彼女で不埒な事を考えるのは失礼だ。
思わず自分の頬に拳を叩き込んだが、どうやらその音が友人二人にも聞こえたらしく。
『おーい、クロー? 本当に大丈夫かー? ドゴッて、すげぇ音したぞ』
『ふんっ! どうせ急にエロい事でも考え始めたのだろう!? この童貞男子高校生め』
「だ、大丈夫。気にしないで。あと出っ歯、マジで煩い。それから、お前が言うな」
という事で、本日ばかりは……非常に楽しかった記憶と、ちょっとよろしくない記憶が頭の中でこんがらがってしまうのであった。
アレから白川さんも気にして無かったみたいだし、こっちも忘れろ。
すげぇ肌白かった、とか。
厳つい超ロングブーツのせいで、ちょっとムニッとしてたとか、そういうの思い出すな。
忘れろ、俺。
コメント
1件
いやあ、今回も熱かったわ!白川さんがガチでスプリンター極振りして、敵陣駆け抜けながらクロさんがスナイプする連携、めちゃくちゃ良かった。新ブーツのキックキルとか痺れるわ。しかもクロさんの「ふともも見てもうた…」って悶々してるところ、可愛すぎるだろ笑 戦闘と日常のバランスが絶妙だったわ!
柘榴とAI

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