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咲乃ルイ
#バトル
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「妖怪がマトモに人間の言う事聞くと思ったの?」「え?でも確かに身体はあるし…あ。」
胸に手を当てると鼓動が聞こえなくなっていた。「もう分かった?白夜くんは私と同類だよ」
この妖怪によると、僕は魂が抜かれ一時的に死んだようだが、暗夢の力で妖怪として復活し、人間「のような」姿に変身しているらしい。
「命は見逃してって言ったよね僕は?」
「人間としての命はないけど、存在はあるでしょ。妖怪の胃袋や天国で永遠を送るよりは百倍マシじゃん。」
なんてコイツ冷淡なんだろう。人をこういとも簡単に殺めておいて。
「それに妖怪は単なる幽霊と違って成仏しないから不老不死だよ。白夜くんみたいな即席の妖怪でも。」
「待って暗夢って年いくつ?」
「女子にそんなの聞いちゃダメだよ。」
「あさひちゃんの写真あげないよ?」
「大体十四万歳くらい。」
ぶっちゃけ悪くない条件だなと思った。猗窩座の交渉を呑み込む煉獄さんみたいな状態になってはいるが、僕は不老不死になるのが夢だった。ていうかこの妖怪は現世で年齢を一万倍サバ読んでいた訳だし、男子のやつらもそれにデレデレしてたことになる。両方気持ち悪いね。
「ところで明日の丑三つ刻に、熊野神社に来れる?」
「如何にもな時間だね…まあ良いよ。僕も妖怪だし。」
丑三つ刻の熊野神社。普通この時間に中学生が歩いていたら補導対象だが、流石の公安もこんな田舎にはパトロールが行き届かない。
「はい暗夢、あさひちゃんの写真が入った生徒会USB。」
「白夜くんありがとう。」
「で、あんたは普段どんな仕事…というか、どんな能力あって普段何してんの?」
正直聞く意味がないが、これから「永遠」を生き続けるわけだ。暇過ぎるし、仕事が欲しかった。
「ここ一帯の人間に夢を流す仕事…というか趣味だよ。私の存在がここにあるだけで、人間は夜に夢を見る。」
だから僕が「悪夢さん」って言ってた時、あんな動揺してたのか。
「ここ一帯って?」
「北は八戸、南は宇都宮だね。」
「ん?てことは日本には他にも君のような存在がいるの?」
「十くらい。これでも随分減ったよ。数万年前は一つ山を越えたら別の妖怪がその集落の夢を統治してるような状態。」
一応色々察してはいるが、理由を聞く。
「白夜くんの想像通りだよ。妖怪の魂もそれなりに美味しいし、統治地域だって広げたいから、皆夢の中で戦争をしていたの。」
「ていうことは暗夢は比較的強い妖怪なの?」
「数万年前には日本統一の自信しかなかったよ。だけど妖怪たちが調子にのって生きた人間の魂を食べ始めたから人口は激減。」
「僕と同じ状態ようにやられたわけか。」
「神様に凄い怒られた。うん、野球部の先生くらい怖いよ。同時に戦争もやめろってさ。」
「え?てことは?」
「うん。脅しただけで白夜くんを食べるつもりはなかったよ。」
あさひちゃんの写真をあげるんじゃなかった…。まあ別に持ってたって生徒会通信ぐらいでしか使わないが、なんか騙された気分だ。
「あれ?じゃあ普段はあんた何食べてるの?」
「死んで昇天してる途中の魂を食べてる。あ、安心して、悪人のしか食べてないよ。それを三日に一個くらい食べたらちゃんと妖力が回復する。」
「悪人は地獄行きじゃないの?」
「魂の半分位は地下に潜るから面倒くさいだよね。だから閻魔大王は私が殺したよ。魂はここ最近で一番美味しかった。」
脳の処理が追いつかない。なんでラスボスをそう簡単に倒せるの?あと美味しいの?
「じゃあ白夜くんは今日が初めてのご飯だね。ちょっと天国近くに行こう!」
そうすると暗夢は空を浮き始めた。まあそりゃ妖怪だし…っと深くは考えないで置く。すると僕も空中浮遊ができた。
「あそこに魂が昇ってるでしょ。色が黒い程悪人なんだよ。あれ食べよ。」
そうすると暗夢は捕まえた魂をちぎり始める。はっきり言ってグロいが、人間の時ほどそういうものに抵抗はない。何よりお腹空いた。
「いただきます」
魂を恐る恐るかじる。
「美味しいねコイツ。」
「白夜くんは何も知らないだけだよー。やっぱり人間を殺してすぐ食べるのが新鮮で美味しいよ。」
人間じゃなくなったので、ちょっと興味はあるがそれでも神様の説教が怖いのでやめておく。
「神社の地下に私の秘密基地があって、冷凍庫に冷凍した魂があるから、お腹が空いたら食べてね。あと、一つ部屋空いてるから、そこに住むか、いつもの家に溶け込むかにしてね。」
「冷凍まであるんだ…。」
「あと、USBの入れ方教えてくれない?タブレット使いこなせなくて。」
そういえば暗夢は、タブレットで間違えて必要なアプリを消すくらいに機械音痴だった。まあ万年生きてるとしたら頑張ってる方…なのか?
神社の地下の基地に入る。畳とか敷いているのかなと想像していたが、実際はインフルエンサーが好みそうなタワマンの一室みたいなモダンな雰囲気だった。整ったキッチンに大きなダイニング。奥にはたくさんの小部屋があり、暗夢も使い切れてないようだ。一番奥の部屋が暗夢の部屋だ。そこである程度タブレットの使い方を教えたのち暗夢は僕を追い出した。全くどんだけあさひちゃんが好きなんだよ…。コイツが男の人間じゃなくて本当に良かった。
僕も案内された隣の部屋に閉じ籠もる。このまま妖怪として過ごす恐怖、今日の反省等々…。夜に眠らなくていいのは特権だが、少し退屈である。
一つ気づいたことがあって暗夢の部屋に入る。暗夢はベッドでぐっすり寝…寝てる!?
え?妖怪って寝るの?しかもタブレット抱えながら?とりあえず起こさないと行けない用事があったので
「起きろー!」
と叫んで布団をぶん投げた。
「白夜くんどうしたの?」
「どうしたもこうしたもある?なんで夢与える側のあんたがグースカブースカ睡眠してんの!」
「違うよ実験。人間ってどんな夢が好きでどんな夢で恐がるのか試してたんだよ。ほら、学校で白夜くんを妖怪にしたときだって事実上寝てたわけだし。人間と違って一日八時間寝なくても身体に害はないだけで。」
暗夢によると、あくまで妖力で皆の夢を維持してるだけで、今日のように他人の夢をそのまま支配することはあまり無いそうだ。
「じゃあ何の夢…?」
「まだ死んですぐの妖怪には過激すぎるよ。」
「僕、あさひちゃんと宿泊研修の班一緒だったんだけどさ、詳細言ったら写真追加してあげてもいいかなあ。」
「すみません、あさひちゃんと旅行に行く夢を見てました。」
「旅行先は?」
「韓国で二泊三日。」
「何食べた?」
「ヤンニョムチキンとラーメンとキンパ。」
「宿泊先は?」
「パラダイスシティのスイートルーム。」
「もしかして妖怪として一緒に住むのは僕じゃなくてあさひちゃんの方が良かった?」
「…。」
「妖怪にすれば良いじゃん。」
「あのね、人間として生きているあさひちゃんが好きなの。」
もう目の前にいる妖怪が変態にしか見えなくなった。暗夢は照れておかしくなっている。
「ごめん話戻すわ。頼みがあってね。妖怪なりたてはまだ怖いから、しばらくはこの基地に泊まりたいんだけど、家留守だと親が心配するだろうからさ、夢でなんとかしてくんない?」
「うん、良いよ。」
親には夢の中で、中学校で宿泊サービスが導入され、家に帰らなくてもいいということになったことにしたらしい。夢の設定はこれくらい荒くても暗夢の妖力ならどうにかなるそうだ。