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鬼殺隊の射手

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鬼殺隊の射手

3 - 第3話 入隊試験

2025年08月23日

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入隊試験


伊黒さんと出会って連れて来られた“蝶屋敷”。

屋敷の主である胡蝶さんと、その仲間である甘露寺さん、そして私を助けてくれた伊黒さんから、皆さんの所属する組織…鬼殺隊のことを詳しく聞いた。

しかもここは大正時代だって。

私タイムスリップしたの?

それとも雷に打たれて死んだのかな??

わけが分からないけど、とにかくこの世界で生き延びなくちゃ。

帰れるのなら、元いた世界に帰りたいけど……。



2日後。

私はしのぶさんに連れられて鬼殺隊の本部へと向かった。


「あっ!しのぶちゃん!つばさちゃーん!」


鈴を転がすような可愛い声が聞こえると同時に、甘露寺さんが駆け寄ってきた。


「わあ!つばさちゃんその弓道着姿すごく素敵!」

『あ…ありがとうございます!』


蝶屋敷のお嬢さんたちが洗濯しておいてくれたの。

泥汚れとか落とすの大変だっただろうなあ。


「そいつかィ?伊黒の報告に上がってたガキは」

「うお!まだほんの子どもじゃねえか!時透と変わらんぐらいか?」


全身傷だらけの人と、大きくて派手な人が近付いてきた。


「2人とも、そんなにじろじろ見ては失礼ですよ」

「つばさちゃんって言うんですよ。お名前も可愛いですよね!」


しのぶさんと甘露寺さん。


「この小さな少女が伊黒を手助けしたというのか……。なんと勇敢な……」


泣きながら手を合わせる、派手な人よりももっと大きな男の人。

お坊さんかな?数珠を持ってる。


『夏目椿彩です。よろしくお願いします』

「おぉ〜、地味だけど礼儀正しいな!」


派手な人に地味って言われた。


「お館様のおなりです」


小さな女の子の声に、全員が1列に並んで跪き、頭を下げる。

いつの間にか伊黒さんと、他にも今話していた以外にも3人その場に揃っていた。

私も周りに合わせて同じ体勢をとる。


「よく来たね。私の可愛い剣士(こども)たち」


心地いい声が聞こえた。

そっと見上げると、そこには2人の女の子に手を取られてやって来た、若い男の人。

病気かな?顔の上半分が青紫色に変色している。


「小芭内から聞いているよ。夏目椿彩と言ったね。君が矢を放って危ないところを助けてくれたんだってね。ありがとう」

『!いえ、とんでもないです!私のほうが伊黒さんに助けてもらいました。伊黒さんが来てくれていなかったらあの3匹の鬼に食べられてたと思います!』

「…そうか。君はとても謙虚な子だね。でもね、鬼に襲われながらも恐怖に打ち勝ち敵に矢を射る…これはなかなかできないことなんだよ」


すごい褒めてくれるから照れくさくなって俯いてしまう。


「…お館様。この娘を我ら鬼殺隊に入隊させることをお許しいただけますでしょうか?」


えっ!伊黒さん?


「聞けばこの娘、弓道の試合の最中、気付くとあの場所にいたと申すのです。その話が真実であれば、ここ以外に行くあてがないかもしれないのです。剣の才があるかは不明ですが、あの状況で、鬼の目玉に矢を命中させる程の集中力を持っています。鍛えればこの娘の力が鬼の討伐の一助になるかと……」

「そうだね。椿彩、他の人に話したことと重複するだろうけど、改めてここにいる私たちに、小芭内と出会うまでの経緯を説明してくれるかい?」

『あっ、はい!』


しのぶさんにそっと背中を押されて“お館様”の近くへ行く。

そして皆さんの顔を見ながら口を開く。


『夏目椿彩と申します。17歳の高校2年生です』


私は自己紹介から始め、一昨日伊黒さんしのぶさん甘露寺さんに説明したことと同じ話をする。

みんな驚いた顔をしてた。

そりゃそうだよね。


『弓道部なので矢なら射てます。刀は握ったことがありませんが、覚える努力もします。私にできることは何でもします』

「…そうか。みんなはどう思う?」


皆さんのほうを見る。


「俺は良いと思います!伊黒を…大切な仲間を救ってくれたのはとても大きな出来事です!」

炎のように鮮やかな髪の男の人が声を発する。


「…僕はどちらでも。すぐに忘れるので……」

と、私より少し年下くらいの男の子。


「俺も賛成です。剣の初心者でも鍛え上げれば派手に才能を開花させるかもしれません!」

派手な人が言う。


「お館様。伊黒を救ったというその弓の実力、俺たちもこの目で確かめたく存じます」

「…ああ、それはいい考えだね、実弥。椿彩、君の弓の技術を皆に見せてくれるかな?」


傷だらけの人の提案にお館様も頷く。


『はっ、はい!』


背中に「隠」と書かれた服装の人たちが手際よく弓と矢を用意してくれる。

その間に私は胸当てを装着し、かけを右手にはめる。


派手な人がやって来て声を掛けてきた。


「おい、準備できたみてぇだぞ」

『はい!』


お庭に設置された的。弓道の試合と同じくらいか、それより少し離れた距離。


「矢は2本だ。両方的に当てろ。いいな? 」

『…!はい』


2本の矢なら普段の試合と同じ。

大丈夫。いつも通り、落ち着いてやればいい。


私はゆっくりと矢を掛け、キリキリと弓を引く。


集中して!私ならやれる!


ビュンッ!

タァン!!


当たった。呼吸を整えて、2本目。


ビュンッ!

タァン!!


「当たった!2本ともだ!」

「すごいわ!」


鮮やかな髪の人と甘露寺さんが声を上げる。


「…次だ」


お坊さんの言葉に、みんな驚く。


「鬼は矢を射る間じっとしていてはくれない。動く対象に正確に当てなければならない」


確かにそうだよね……。


お坊さんの合図で、木の板を持った“隠”の人たちが3人出てくる。


「彼らを鬼と思って矢を放ちなさい。…大丈夫、外さなければ怪我はしない」

『そんな!』

「悲鳴嶼さん、そりゃいくらなんでも難易度が高すぎやしませんか?」

「刀を扱えない者が鬼殺隊に入るならば、代わりにできることを伸ばさなばならない。……さあ、よく狙って射ちなさい。矢は3本用意した。3人のうち、いずれか1人でも板に当てることができたなら合格だ」


…そうだよ。ここは令和の時代じゃない。

鬼に食べられるか、勝って少しでも穏やかな日常を守ることに貢献するか、どちらかだ。


『…先に謝ります!外したらごめんなさい!』


隠の人たちが縦横無尽に動き回る。

1本でも板に当たれば合格。外せば痛い思いをさせる。

失敗できない。

失敗したら、それは実戦では鬼に殺されるということ。


鼓動が速くなる。

試合では感じたことのない焦り。


でもやらなきゃ。

私はやればできる子!


みんなが固唾をのんで私を見守っている。


1本目…外した。

砂利の地面に突き刺さる。


2本目…板に当たったものの、刺さらず跳ね返って落ちた。


これが最後のチャンス。

3本目の矢を掛け弓を引いて構える。


ビュンッ!

ドンッ!!


当たった!


「うおお〜!!」

「きゃーっ!やった〜!」

「当てた!すげえ!」


みんながすごく喜んでくれた。


「では、椿彩の鬼殺隊入隊を許可するとしよう。いいね?」

「「「「「「「「「御意」」」」」」」」」

『ありがとうございます!よろしくお願いします!』


こうして私は、晴れて鬼殺隊に入ることになった。





つづく






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